【日本サッカー見聞録】アジア2次予選総括
2016.03.31 13:58 Thu
▽日本はロシアW杯アジア2次予選の最終戦でシリアを5-0で下し、最終予選進出に華を添えた。初戦でシンガポールを相手に拙攻から無得点に終わり、続く東アジア杯でも結果を残せず不安視されたハリル・ジャパンだが、終わってみれば6試合を無失点での完勝劇。チームの若返りという課題は残ったままだが、これはハリルホジッチ監督に限らず、誰が監督を務めても変わらぬ課題のため、指揮官の手腕は讃えるべきだろう。
▽ハリルホジッチ監督を招聘した一番の理由は、W杯でジャイアント・キリングを実践するためだ。そのため、アジアの戦いでは自陣に引きこもって守りを固める相手からゴールを奪うことは副次的な課題でもある。ジャイアント・キリングのためには、まずは失点しないこと。でなければゲームプランそのものが崩れてしまう。ただ2次予選の相手はいずれも格下だったため、守備のトライアルとなる試合は結果的にホームのシリア戦しかなかった。
▽3月29日の試合、開始から30分間の日本は完璧な試合運びだった。唯一の欠点は決定機を決められなかったことだが、サイド攻撃から相手ゴールを脅かし、ボールをロストしても素早い攻守の切り替えと高い位置からのプレスで奪い返しては波状攻撃を仕掛けた。これを90分間続けることは不可能だと試合後のハリルホジッチ監督は正直に告白したものの、相手に与えるダメージは効果的。たぶん本音を言えば、その間にあった決定機を決めていれば、試合の趨勢も決まっていたということだろう。ここらあたりが日本の課題でもある。
▽それよりもシリア戦で顕著だったのは、守備意識の高さである。GK西川が2度のファインセーブで決定機を阻止しただけでなく、29分と83分にはカウンターのピンチに森重や長谷部が身体を張った守備でシリアの決定機を阻止した。相手が格下のシリア、それもW杯2次予選の消化試合にも関わらず、ゴールを死守した彼らのプレーには、ブラジルW杯のアルジェリアの奮闘を思い出さずにはいられなかった。
▽守備の意識と前線からのオーガニゼーションは確実に進歩している。となると、ジャイアント・キリングのためには少ない決定機を確実にモノにする必要があるが、これは前述したようにまだまだ改善の余地がある。本田や香川には奮起を期待しつつ、楽しみなのがハリルホジッチ監督の選手起用だ。今回はアフガニスタン戦で久しぶりの招集となったハーフナーと小林を投入した。これまでも岡田監督やザッケローニ監督はニューフェイスを招集しながら、実戦で起用することはほとんどなかった。
【六川亨】1957年9月25日生まれ。当時、月刊だった「サッカーダイジェスト」の編集者としてこの世界に入り、隔週、週刊サッカーダイジェストの編集長や、「CALCIO2002」、「プレミアシップマガジン」、「サッカーズ」の編集長を歴任。現在はフリーランスとして、Jリーグや日本代表をはじめ、W杯やユーロ、コパ・アメリカなど精力的に取材活動を行っている。日本サッカー暗黒の時代からJリーグ誕生、日本代表のW杯初出場などを見続けた、博識ジャーナリストである。
▽ハリルホジッチ監督を招聘した一番の理由は、W杯でジャイアント・キリングを実践するためだ。そのため、アジアの戦いでは自陣に引きこもって守りを固める相手からゴールを奪うことは副次的な課題でもある。ジャイアント・キリングのためには、まずは失点しないこと。でなければゲームプランそのものが崩れてしまう。ただ2次予選の相手はいずれも格下だったため、守備のトライアルとなる試合は結果的にホームのシリア戦しかなかった。
▽それよりもシリア戦で顕著だったのは、守備意識の高さである。GK西川が2度のファインセーブで決定機を阻止しただけでなく、29分と83分にはカウンターのピンチに森重や長谷部が身体を張った守備でシリアの決定機を阻止した。相手が格下のシリア、それもW杯2次予選の消化試合にも関わらず、ゴールを死守した彼らのプレーには、ブラジルW杯のアルジェリアの奮闘を思い出さずにはいられなかった。
▽守備の意識と前線からのオーガニゼーションは確実に進歩している。となると、ジャイアント・キリングのためには少ない決定機を確実にモノにする必要があるが、これは前述したようにまだまだ改善の余地がある。本田や香川には奮起を期待しつつ、楽しみなのがハリルホジッチ監督の選手起用だ。今回はアフガニスタン戦で久しぶりの招集となったハーフナーと小林を投入した。これまでも岡田監督やザッケローニ監督はニューフェイスを招集しながら、実戦で起用することはほとんどなかった。
▽彼らがピッチに立つ実力があるのかどうか、練習も非公開のため判断のしようがなかった。しかしハリルホジッチ監督が分かりやすいのは、呼んだ選手は使うという点にある。小林は“持ってない”のか負傷してメンバー外になってしまったものの、ハーフナーはアシストという結果の残したため、シリア戦前日のミックスゾーンでも饒舌だった。競争意識を煽る意味でも、こうした選手起用の妙も見逃せない。
【六川亨】1957年9月25日生まれ。当時、月刊だった「サッカーダイジェスト」の編集者としてこの世界に入り、隔週、週刊サッカーダイジェストの編集長や、「CALCIO2002」、「プレミアシップマガジン」、「サッカーズ」の編集長を歴任。現在はフリーランスとして、Jリーグや日本代表をはじめ、W杯やユーロ、コパ・アメリカなど精力的に取材活動を行っている。日本サッカー暗黒の時代からJリーグ誕生、日本代表のW杯初出場などを見続けた、博識ジャーナリストである。
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