【日本サッカー見聞録】波乱含みのJFA新人事
2016.03.10 18:00 Thu
▽リオ五輪アジア最終予選の最終日、なでしこジャパンは北朝鮮を1-0で下して3位に浮上し、全日程を終えた。1位はオーストラリア、2位が中国でこの2カ国が五輪の出場権を獲得、以下3位に日本、4位が韓国、そして5位北朝鮮、6位ベトナムという順位だ。
▽今大会の試合内容を見る限り、順当な結果だったと思う。残念だったのは、試合の順番だ。日本は初戦でベトナム、次いで北朝鮮と格下相手に試合をすることで“試合勘”を取り戻すようにして、最終戦のオーストラリアを前に五輪切符を決めて消化試合にすることが理想的な展開だったのではないだろうか。それだけの“政治力”を発揮できないところに、女子の強化委員会の力不足を感じずにはいられない。
▽佐々木監督の後任には、現U-20 日本代表の高倉監督の名前が早くからスポーツ紙に登場した。いわゆる“新聞辞令”というやつである。高倉監督はU-17日本代表でW杯優勝を果たすなど、それなりの実績がある。野田技術委員長も「日本の切り札」と期待していた。
▽ただ、いきなり日本代表の監督を務めるのに荷が重くはないだろうか。まして4年後は自国開催の五輪である。せめて2年間くらいは外国人監督の下で経験を積んだ方がいいと思う。理想を言えば、なでしこジャパンのウィークポイントもストロングポイントも熟知している元アメリカのスンドハーゲ監督なのだが、現在は母国スウェーデンの監督を務めているのが惜しまれる。
▽現段階で高倉監督が誕生するかどうかは不明で、その前に男女の技術委員長の去就が注目される。それというのも1月の会長選で田嶋JFA(日本サッカー協会)副会長の昇格が決まったからだ。新会長予定者がどんな人事を行うかに注目が集まるが、選挙戦を争った原専務理事が早くもJFAを去ることになった。
▽原氏は専務理事から平理事への降格を田嶋会長予定者から打診されたものの、これを断りJFAを離職。村井チェアマンの誘いに応じ、新たにJリーグの副チェアマンに就任した。原氏は会長選で34票を集めただけに、専務理事にとどまるか、副会長に就任するかと思われていただけに、降格人事は多くの関係者に衝撃を与えた。
▽その余波ではないが、各種委員会の委員長も刷新される可能性は否定できない。原氏が技術委員長の時代から二人三脚で強化を担当してきた霜田技術委員長が現職を離れることもありうる。そうなればハリルホジッチ監督の去就にも影響を及ぼすだろう。
▽田嶋会長予定者が“自分の色”を出すことは悪いことではないものの、ドラスティックな改革はかえって混乱を招くのではないかと危惧せざるを得ない。噂では、新ポストの事務総長には現事務局長の福井氏と、原専務理事を実務面でフォローしてきた鈴木副専務理事が意欲を示しているとも言われる。
▽人事の腹案は今月のJFA常務理事会で披露される予定だが、どのような名前が噂にのぼって来るか。田嶋会長予定者にとっては“諸刃の剣”となるような人事案は避けて欲しいものだ。
【六川亨】1957年9月25日生まれ。当時、月刊だった「サッカーダイジェスト」の編集者としてこの世界に入り、隔週、週刊サッカーダイジェストの編集長や、「CALCIO2002」、「プレミアシップマガジン」、「サッカーズ」の編集長を歴任。現在はフリーランスとして、Jリーグや日本代表をはじめ、W杯やユーロ、コパ・アメリカなど精力的に取材活動を行っている。日本サッカー暗黒の時代からJリーグ誕生、日本代表のW杯初出場などを見続けた、博識ジャーナリストである。
▽今大会の試合内容を見る限り、順当な結果だったと思う。残念だったのは、試合の順番だ。日本は初戦でベトナム、次いで北朝鮮と格下相手に試合をすることで“試合勘”を取り戻すようにして、最終戦のオーストラリアを前に五輪切符を決めて消化試合にすることが理想的な展開だったのではないだろうか。それだけの“政治力”を発揮できないところに、女子の強化委員会の力不足を感じずにはいられない。
▽佐々木監督の後任には、現U-20 日本代表の高倉監督の名前が早くからスポーツ紙に登場した。いわゆる“新聞辞令”というやつである。高倉監督はU-17日本代表でW杯優勝を果たすなど、それなりの実績がある。野田技術委員長も「日本の切り札」と期待していた。
▽現段階で高倉監督が誕生するかどうかは不明で、その前に男女の技術委員長の去就が注目される。それというのも1月の会長選で田嶋JFA(日本サッカー協会)副会長の昇格が決まったからだ。新会長予定者がどんな人事を行うかに注目が集まるが、選挙戦を争った原専務理事が早くもJFAを去ることになった。
▽原氏は専務理事から平理事への降格を田嶋会長予定者から打診されたものの、これを断りJFAを離職。村井チェアマンの誘いに応じ、新たにJリーグの副チェアマンに就任した。原氏は会長選で34票を集めただけに、専務理事にとどまるか、副会長に就任するかと思われていただけに、降格人事は多くの関係者に衝撃を与えた。
▽これまで強化と同時に代表と国内リーグ、ACLのカレンダー整備など改革に意欲的に取り組んできただけに、原氏に代わる専務理事は誰が務めるのか。そして岡田氏が非常勤の副会長に就任することが濃厚なものの、常勤の副会長に誰を抜擢するのか。そして新ポストとなる事務総長には誰が就任するのかなどなど、人事を巡って水面下で話し合いが進められている。
▽その余波ではないが、各種委員会の委員長も刷新される可能性は否定できない。原氏が技術委員長の時代から二人三脚で強化を担当してきた霜田技術委員長が現職を離れることもありうる。そうなればハリルホジッチ監督の去就にも影響を及ぼすだろう。
▽田嶋会長予定者が“自分の色”を出すことは悪いことではないものの、ドラスティックな改革はかえって混乱を招くのではないかと危惧せざるを得ない。噂では、新ポストの事務総長には現事務局長の福井氏と、原専務理事を実務面でフォローしてきた鈴木副専務理事が意欲を示しているとも言われる。
▽人事の腹案は今月のJFA常務理事会で披露される予定だが、どのような名前が噂にのぼって来るか。田嶋会長予定者にとっては“諸刃の剣”となるような人事案は避けて欲しいものだ。
【六川亨】1957年9月25日生まれ。当時、月刊だった「サッカーダイジェスト」の編集者としてこの世界に入り、隔週、週刊サッカーダイジェストの編集長や、「CALCIO2002」、「プレミアシップマガジン」、「サッカーズ」の編集長を歴任。現在はフリーランスとして、Jリーグや日本代表をはじめ、W杯やユーロ、コパ・アメリカなど精力的に取材活動を行っている。日本サッカー暗黒の時代からJリーグ誕生、日本代表のW杯初出場などを見続けた、博識ジャーナリストである。
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