【原ゆみこのマドリッド】上司が変われば気分も変わる…2016.01.09 08:00 Sat

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▽「いい時期ではあるわよね」そんな風に私が納得していたのは金曜日、いよいよジダン新監督の初戦が翌日に迫っているのに気づいた時のことでした。いやあ、今週は月曜にレアル・マドリーの指揮官交代があったため、こちらも何やらバタバタして過ごすことになったんですが、幸いだったのは彼らにはミッドウィークにコパ・デル・レイの試合がなかったこと。それも12月にカディス(2部B)との32強対決1stレグでチェリシェフのalineracion indebida(アリネラシオン・インデビダ/出場資格のない選手の起用)が発覚し、大会敗退となったせいですが、うっかり16強対決が予定されてでもいたら、新監督も落ち着いて準備を進める時間がなかったのでは?

▽おかげで日曜にバレンシア戦で引き分けた翌日夕方遅く、ベニテス監督の解任がクラブの理事会で決定。同時に後任監督としてジダンの名前が、ほんの3週間程前には「ベニテス監督はチームの問題の解決策。Zidane no sustituirá a Benítez/ジアン・ノー・ススティトゥイラ・ア・ベニテス(ジダンがベニテス監督を引く継ぐことはない)」と断言していたペレス会長により、サンティアゴ・ベルナベウで発表され、その時は当人も「タイトルと獲るために全力を尽くす」といったシンプルなコメントだけで、あとは奥さんとマドリーのカンテラ(下部組織)でプレーする4人の息子さんたちと一緒に檀上でポーズするぐらいで良かったんですけどね。

▽翌火曜にはちょうど、レジェス・マゴス(東方の三賢人の祝日、スペインでは伝統的に子供たちがプレゼントをもらえる日となっている)を控え、ファンサービスとして1年に1回の恒例となっている公開練習に挑み、駆けつけたサポーター約7000人から拍手を浴びた後、RMカスティージャ(マドリーのBチーム)監督となって1年目だった昨季は忌避しながらも、今季から行うようになった監督記者会見に初めてトップチームの指揮官として登場することに。ええ、今度はサンティアゴ・ベルナベウのプレス・コンファレンスルームで行われたこちらでは、今後のチーム運営について事細かに質問に答えていましたっけ。

▽曰く、「マドリーで大切なのは美しいサッカー。自分もそれを目指す。Fútbol ofensivo y equilibrado/フトボル・オフェンシボ・イ・エキリブラード(攻撃的でバランスの取れたサッカーをね)」から始まって、「Quiero darle mi toque personal, un toque ofensivo/キエロ・ダールレ・ミ・トケ・ペルソナル、ウン・トケ・オフェンシーボ(自分の個人的なタッチも加えたい。攻撃的なニュアンスをね)」とか、BBC(ベイル、ベンゼマ、クリスチアーノ・ロナウドの頭文字)については「la idea es clara, jugar con los tres/ラ・イデア・エス・クラーラ、フガール・コン・ロス・トレス(3人を使ってプレーするというアイデアははっきりしている)」、更には「Ganarlo todo/ガナールロ・トードー(全てを勝ち獲ること)。ウチには獲得できるタイトルが2つあるから、それにトライする」と、今季の目標なども話していましたが、何にしてもチームには才能ある選手が揃っていますからね。

▽あまり、やろうとしていることはペレス会長任期中の12年間で10番目の監督となった彼も変わらないような気はしますが、そこは実働グループのやる気次第。今季、大勢が慕っていたアンチェロッティ監督がいなくなり、実務肌のベニテス監督とはフィーリングが合わなかった彼らのハートを掴むことができれば、まだシーズンは半分残っていますし、どんなことでも可能かと。ええ、もちろん失格となったコパ・デル・レイだけは別ですけどね。

▽え、そんなお隣さんを尻目に今季も手近なタイトルとしてまず、コパ優勝を目指しているアトレティコは試合があったんだろうって? その通り、今週は月曜にクラネビテル(リーベル・プレートから移籍)、火曜にアウグスト(セルタから移籍)の入団プレゼンをひっそりビセンテ・カルデロンで行った後、水曜に彼らはコパ・ダービーとなった16強対決1stレグでまたしてもエスタディオ・デ・ラス・バジェカスに乗り込んだんですが、いえ、もちろん昨今の試合展開から楽勝なんてまったく予想はしていなかったんですけどね。昨年末最後のリーガでの対戦を思い出しても苦戦することは目に見えていたんですが、そこへ加えて、シメオネ監督が最初のレウス(2部B)戦同様、オブラク、ゴディン、ファンフラン、フィリペ・ルイス、コケ、グリースマンらにお休みを与え、コパ用イレブンを投入したから、もう大変だったの何のって。

▽実際、その日のバジェカスはスタンドも半分ぐらいしか埋まらず、ラージョの方もリーガとは違うスタメンだったんですが、アトレティコではここ2試合、大活躍をして株が上がり、クラネビテルとアウグストをダブルボランチで早速デビューさせたため、トップ下の大役を仰せつかったトマスがちょっと上づってしまったんですかね。どちらもなかなか点の取れない展開でしたが34分、自陣エリア前からクリアしたボールをナチョの正面に送ってしまい、そのミドルシュートで先制されてしまったから、まったくツイてない。ええ、これにはシメオネ監督も「es un chico joven y hay que llevarlo sin la ansiedad de estos últimos días en el entorno de él/エス・ウン・チコ・ホベン・イ・アイ・ケ・ジェバールロ・シン・ラ・アンシエダッド・デ・エストス・ウルティモス・ディアス・エン・エル・エントルノ・デ・エル(彼は若いんだから、ここ数日のように周囲が焦らせることなく、育てていかないといけない)」とフォローするしかありません。

▽それでもまあ、0-1なら来週、ホームでの2ndレグもありますし、真っ青になる程のこともなかったんですが、このところ早めの交代で味をしめたシメオネ監督は後半10分には近頃、あまりいいところを見せてくれないオリベルとアウグストを引っ込め、サウルとビエットを入れる攻撃的メンバーチェンジを実施。するとこれが見事に当たり、21分には右サイドからキニを振り切ってビエットが入れたラストパスにサウルが反応、エリア内からシュートを決めて同点にしてくれたから、何とも有難いっちゃありません。いえ、2年前、レンタルでラージョに修行に来ていた当人は遠慮して、大袈裟にゴールを祝うことはしませんでしたけどね。

▽「El chico que vieron crecer en Vallecas sigue creciendo/エル・チコ・ケ・ビエロン・クレセル・エン・バジェカス・シケ・クレシエンドー(バジェカスで成長するところを見せた選手は成長し続けている)」(サウル)と後で言っていたように、こういうのこそが最高の恩返しなんでしょうが、ラージョのパコ・ヘメス監督にとってはまさに痛し痒しだったかも。それでも幸い、34分にはCKからビエットが放った至近距離のシュートはGKファン・カルロスのparadon(パラドン/スーパーセーブ)とゴールポストに阻まれて決まらず。

▽おかげでラージョは1-1のままで2ndレグを迎えられることになり、その日は2-2で引き分けたリーガ前節のレアル・ソシエダ戦の後、「ウチは1部のチームじゃない」というコメントから、「No son de Primera, sino de 'Champions'/ノー・ソン・デ・プリメーラ、シノ・デ・チャンピオンズ(1部ではなく、CLにいるチーム)」と、ヘメス監督も自軍を大幅に格上げしていたものの、点を取ることは苦手でも、基本的に守りは超一流のアトレティコが2ndレグでは0-0でもいいとなると、見通しはあまり芳しくないでしょうね。

▽ただラージョにとって、もっと重要なのは週末のリーガ戦、土曜にレバンテのホームを訪れる試合で勝つことで、何せこのところ、降格圏の19位が定位置になってしまっていますからね。相手は最下位ですが、コパにはすでに敗退していて今週ヒマだった上、前節では兄貴分のアトレティコが終盤にトマスのゴールが決まるまで勝負を決められなかったという例もあるため、心してかかる必要があるかと。実際、残留ゾーンまではたった勝ち点2差しかないので、シーズンの前半終了戦でもある、この19節では不名誉な順位から脱出できたらいいのですが。

▽そしてアトレティコは日曜午後8時半(日本時間翌午前4時半)から、やはりアウェイでセルタ戦なんですが、こちらの目標は現在、2位バルサと勝ち点差2、3位マドリーと同4ある首位の維持と極めて贅沢なもの。もちろん試合消化数が1つ少ないバルサがクラブ・ワールドカップのせいで延期したスポルティング戦を2月に済ませた後どころか、1月30日の直接対決でカンプ・ノウに乗り込めば、簡単に転落してしまうのかもしれませんが、まあ、それまではねえ。金曜からは大雨が続き、バライドス(セルタのホーム)周辺が浸水しているなんて心配な情報もあるものの、アウグストもマハダオンダ(マドリッド近郊)でのセッションでは先発組に抜擢され、忘れ物も取りに行ける早々の古巣訪問を心待ちにしているはずですし、いつものように少ない得点をガッチリ守って勝ち点3に変えられればと思います。

▽一方、そんなセルタも今週木曜はコパでカディスと当たり、リーガ5位の実力相応で0-3と快勝。マドリーが失格になった恩恵を受けているんですが、そのマドリーがこの土曜の午後8時半(日本時間翌午前4時半)に対戦するデポルティボは水曜にミランデス(2部)とのコパで1-1の引き分け。あまりないことですが、相手の方が休息期間が短いのはジダン新監督にとって、有利に働くかもしれません。加えてサンティアゴ・ベルナベウでの試合とあって、ファンに絶大な人気を誇る彼がベンチで指揮を執れば、これまでのようにpito(ピト/ブーイング)が聞こえることもなく、スタンドと一体になって勝利を目指すことができる?

▽それには現役時代はマドリーで長くプレーしたビクトル監督も、「el principal cambio será en el plus de ilusión que tiene la gente/エル・プリンシパル・カンビオ・セラ・エン・エル・プルス・デ・イルシオン・ケ・ティエネ・ラ・ヘンテ(最大の変化は人々により大きな夢を抱かせること)」と用心していましたが、新監督の幸運は他にもあって、とうとうカルバハルも回復し、この試合前にチームの負傷休場者がゼロに。いえ、バレンシア戦でレッドカードをもらって退場したコバチッチだけは処分で出られませんけどね。

▽金曜の前日練習からは、BBCにイスコ、そしてモドリッチ、クロースという、アンチェロッティ前監督が好んだ布陣、ついでに言うなら、昨年のクラシコ(伝統の一戦、マドリーvsバルサ戦のこと)で0-4と惨敗した時のスタメンからハメス・ロドリゲスを除いただけ、とはいえ、十二分に攻撃的なものが予想されていますが、当時はベンゼマとベイルが負傷明けだったのに比べ、今は2人とも好調を維持しているのは好材料になるかと。何せ、昨年12月にはカンプ・ノウでバルサから引き分けをもぎ取ったデポルティボですが、ここ2試合はリーガで白星がなく、順位も7位と少々、調子を落としていますしね。順当に行けば、マドリーが勝つんじゃないかと思いますが、注目はプレーでファンをさせることができるかどうかになりそうです。

▽そしてもう1つの弟分、コパはラージョに及ばず敗退となり、肩の荷が下りているヘタフェは日曜にセビージャとのコパ・ダービーに0-2で負けているベティスと対戦するんですが、実は彼らは月曜の前節スポルティング戦に2-1と逆転勝利を収め、現在は13位と比較的落ち着いた順位に。相手も同じ勝ち点で14位ですから、実力の拮抗した、いい試合になりそうな気配はあります。そうそう、折しも木曜には今季シーズン後半のアボノ(年間指定席)を80ユーロ(約1万円)という爆安値段で売り出したヘタフェですが、そのホーム11試合にはこのベティス戦も含まれているとか。マドリーやアトレティコ戦もこれからあることですし、ようやく今年になってブカネーロ(ラージョの過激なサポーター集団)がストを止め、応援を再開したバジェカス同様、いつもガラガラなコリセウム・アルフォンソ・ペレスもその恩恵でもう少し、賑やかになってくれるといいですよね。

【マドリッド通信員】
原ゆみこ
南米旅行に行きたくてスペイン語を始めたが、語学留学以来スペインにはまって渡西を繰り返す。遊学4回目ながらサッカーに目覚めたのは2002年のW杯からという新米ファン。ワイン、生ハム、チーズが大好きで近所のタパス・バルの常連。今はスペイン人親父とバルでレアル・マドリーを応援している

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【原ゆみこのマドリッド】祝うものがあって羨ましい…

▽「他人事だと思って勝手なこと言ってる」そんな風に私が呟いていたのは月曜日。ユーロ大会用合宿メンバー第1陣8人の1人として、ラス・ロサス(マドリッド郊外)のスペイン・サッカー協会施設に着いたセスク(チェルシー)が今週土曜のCL決勝の予想を訊かれ、「Veo una final de Champions con prórroga y penaltis/ベオ・ウナ・フィナル・デ・チャンピオンズ・コン・プロロガ・イ・ペナツティス(延長戦、そしてPK戦になるCL決勝だと思う)」と意見していたのを聞いた時のことでした。いやあ、自分のチームはベスト16でPSGに負け、古巣のアーセナルをベスト16で破った古巣のバルサも準決勝でアトレティコに負けたため、当人は、今季の決勝はまったく関係ない話と割り切っているからかもしれませんけどね。 ▽実際、アトレティコも2013年のコパ・デル・レイ決勝では延長戦でお隣さんを下しているため、とりわけ今シーズンのように試合までの準備期間が2週間とたっぷりあるのであれば、何はなくとも体力自慢のチームにだけに延長戦上等、といったところなのかもしれませんが…。ただでさえ、見る方も緊張する決勝。バルサとの最終節の死闘を経て、1週間後に臨んだ2年前のリスボンでは悲劇が試合終了直前の同点ゴールから始まり、延長30分間にボロボロにされた悪夢だって、まだ忘れられないのですから、やっぱりそういう展開はファンとしても避けてもらいたいかと。とはいえ、先日のアトレティコの練習を見る限り、0-0、延長戦はありうるかなと、私もこっそり思ってしまったんですが…。 ▽そう、それは土曜日のことで、アトレティコがCL決勝前の恒例、オープン・メディア・ディをやるというので、週末ダイヤで1時間に1本しかバスがないため、行くのが大変困難になるマハダオンダ(マドリッド近郊)の練習場に午前9時半という、私にとっては非常に辛い時間に駆けつけることに。セッション前に記者会見に出て来たシメオネ監督が、「マンチェスター・シティ戦のようなマドリーを想像している。Esperando y jugando de contragolpe, como hace en Champions/エスペランドー・イ・フガンドー・デ・コントラゴルペ、コモ・アセン・エン・チャンピオンズ(今季のCLでやっているように、敵を待ってカウンターで攻撃する)」と言っていたのには、日々のニュースで鬼のように彼らがゴールネットを揺らしているのを見ているのもあって、少々、首を傾げさせられたのは別にいいんですけどね。 ▽滅多にないことに、それから始まったグラウンドでのトレーニングをその日は全部見学できたんですが、問題は最後にあったpartidillo(パルティディージョ/ミニゲーム)。前後半20分ずつという短いものでしたが、世間一般で決勝の仮想先発組と言われているグループとカンテラーノ(アトレティコBの選手)混成のグループの対戦では何故か、1本もゴールが入らなかったから、不安になったの何って。いえ、これもシメオネ監督の指示なんでしょうか、速攻カウンターをかけた控え組のFWが一対一で放ったシュートをGKオブラクがparadon(パラドン/スーパーセーブ)で弾いてくれたのは心強かったですよ。その一方で、もうすぐクラブと2年間の契約を結ぶというフェルナンド・トーレスの一撃は惜しくもポストの横へ。グリースマンなどに至っては、自分で勝ち取ったPKを思いっきり外しているとなれば、PK戦の部分まで怪しくなってこない? ▽ただ当人はまったく気にしていないようで、いえ、セッション後に始まった選手たちの記者会見でコケの番の時、こっそり裏から回って、いつの間にやら、記者席に出現。ちゃっかり手を挙げてマイクを握ると、「アトレティコのアントワーヌ・グリースマンだけど、サッカーから離れて質問していい? Quien tiene mas clase vistiendo en el vestuario y quien menos?/キエン・ティエネ・マス・クラセ・ベスティエンドー・エン・エル・ベストゥアリオ・イ・キエン・メノス(チームで一番、イケてる服装をしているのは誰? 最悪なのは?)」って、もしや練習が終わるやいなや、シメオネ監督がタクシーでバラハス空港へ直行、ミラノへの視察旅行へ出発したのを知っていて、誰にも怒られないとわかっていた? ▽まあ、そんな乱入行為にもコケは「El que mas tu, y el que menos, no puedo decirlo que me mata/エル・ケ・マス・トゥ、イ・エル・ケ・メノス、ノー・プエド・デシールロ・ケ・メ・マタ(一番イケているのは君だよ。最悪なのは、後でボクがやられちゃうから言えない)」と、いつものおふざけの延長なのか、ニコニコして応えていましたけどね。それでも決勝については、「Nunca sabes cuando vas a volver a jugar/ヌンカ・サベス・クアンドー・バス・ア・ボルベル・ア・フガール(もう1度プレーすることがあるか、誰にもわからない)。だから、人生最後のつもりで頑張らないと」(コケ)という決意を露わにしてくれたため、まあいいことにしましょうか。 ▽え、日曜日には「次にいつ、ウチがコパ・デル・レイ決勝を戦える?」(エメリ監督)と、似たような決意で挑みながら、負けてしまったチームもなかったかって? いやあ、その通りで、その日の昼間には私の家の近所(別にビセンテ・カルデロンが近い訳ではない)にもcamiseta(カミセタ/ユニフォーム)やbufannda(ブファンダ/マフラー)をまとったセビジスタ(セビージャファン)が闊歩していたため、いっそ2冠を獲るなら、珍しいチームの方がいいかもなんて考えていたんですけどね。どうにもその結末は、別にそのホームが会場となったからではないでしょうが、2010年のアトレティコの姿を彷彿させることに。 ▽そう、当時のアトレティコもヨーロッパリーグ優勝を決めた後、セビージャとカンプ・ノウでコパ・デル・レイ決勝を戦ったんですが、フルアムとセビージャでは雲泥の差だったように、リバプールとバルサも雲泥の差? もしくは「Tras la Europa League, el equipo ha estado de pie/トラス・ラ・エウロッパ・リーグ、エル・エキポ・ア・エスタードー・デ・ピエ(ヨーロッパリーグの後、チームは立ったままだった)」と、後でエメリ監督が言っていたように、お祭りムードが選手たちから抜けていなかった? それより何より、信じられないのは36分、マスチェラーノが一発レッドで退場し、バルサに対して人数的優位という、アトレティコが何度、逆のケースだったらと夢見たシチュエーションになりながら、それを利用できないのでは困ってしまうじゃないですか。 ▽おまけにその後もセビージャの幸運は続き、56分にはルイス・スアレスが負傷でラフィーニャに交代せざるを得なくなってもいたのに、彼らは一向にゴールを決められず。ええ、それどころか、0-0で延長に入る直前には司令塔のバネガがレッドカードを受けるファールを犯したため、その時点から人数的には両者イーブンに。となると、やはり才能がモノを言いますよね。 ▽ええ、その試合のMVPとなったイニエスタがずっと達人としか言えない動きを見せていたのに加え、延長戦前半6分にはメッシが中盤から放ったボールにジョルディ・アルバが追いつき、GKセルヒオ・リコを破ってしまったから、ビックリしたの何のって。うーん、水曜日にバーゼルで戦ったメンバーが「Faltó frescura/ファルト・フレスクラ(フレッシュさに欠けていた)」(エメリ監督)と知りながら、リードされてから、ようやくFWジョレンテを投入。他は後半に右SBのマリアーノをコノプリャンカに代えただけというのは、セビージャも実は使える選手がいなかったのかもしれませんけどね。延長戦後半のアディショナルタイムにも再び、メッシのアシストでネイマールが2点目を決めて、最後は2-0でバルサの勝利が決まってしまいましたっけ。 ▽ただ、それでも立派だったのはセビージャのファンたちで、いえ、キックオフ前、カタルーニャ(バルサのある地方、スペインから独立したがっている人も多い)から来たバルサのサポーターがスペイン国歌吹奏時にお決まりのpito(ピト/ブーイング)を飛ばすのに対抗するのには、歌詞のない国歌のため、やはりハミングでは無理がありましたけどね。試合後は有利な条件を生かせず、負けてしまった選手たちをhimno de centenrio(イムノ・デ・センテナリオ/クラブ創設百周年記念歌)やカンティコ(節のついたシュプレヒコール)で力づけることをずっと止めず。 ▽何か、そんなシーンを見ると、かつてアトレティコファンも負けたチームをカンプ・ノウで同じように励ましていたのを思い出して、私もホロリとしてしまったんですが、大丈夫。コパ・デル・レイのトロフィーは持ち帰れずとも、2冠達成をスタジアムで盛大に祝ったバルサ同様、セビージャも月曜日にはEL優勝祝賀行事を決行。大勢のファンが喝采する中、オープンデッキバスで市内を練り歩き、夜半過ぎにはサンチェス・ピスファンでのイベントで仕上げをした上、相手はリーガ勢というのはネックながら、8月9日のトロンハイム(ノルウェー)でのUEFAスーパーカップ応援旅行計画を練られますしね。バルサがリーガ優勝しているため、その翌週にはスペイン・スーパーカップも控えているとなれば、この夏もまったく退屈している暇はない? ▽そして、最後にそのUEFAスーパーカップの対戦相手となるかもしれないマドリーについてもお伝えしておかないといけないんですが、いやあ、何せ土曜日にはカンテラ(下部組織)との練習試合をやった後、選手たちの家族も参加してのバーベーキューパーティをバルデベバス(バラハス空港の近く)の施設で開いたそうなんですけどね。クラブの方針で、その日は構内の映像や写真がまったく外へ流れず。おかげでヴァランがその練習試合で負傷、左太ももに肉離れを起こし、今週土曜日のCL決勝どころか、ユーロ大会参加まで危うくなってしまったことも、日曜にオフィシャルウェブにparte medico(パルテ・メディコ/ケガ人情報)が出るまで、世間はまったく知らないことに。 ▽その他、先週の練習ではハメス・ロドリゲスが筋肉痛で、アルベロアがヒザを捻ってリハビリ、クリスチアーノ・ロナウドはシーズン終盤にトラブルがあった太もも裏の痛みを再発させないため、個別メニューを折り混ぜながら調整しているといった報はあったんですけどね。やはり敵によっては芝の状態を悪くするのもいとわないアトレティコが、一度、UEFAにダメ出しされたからって、サン・シーロのピッチを視察しても意味があまりないとシメオネ監督も思っていたんでしょうかね。同行したオルテガ・フィジカルコーチだけ先に帰し、日曜日午後には最近、妊娠が判明したという彼女、カリヤ・ペレイラさんとミランの休日を満喫してきてから、練習を再開した月曜日もマドリーは連休だったんですよ。 ▽おかげでハンモックに揺られて日光浴を楽しむロナウドとか、自宅にケイロル・ナバス、モドリッチ、ルーカス・バスケスらを招いてプール三昧のセルヒオ・ラモスといった、どちらかというと、バケーションシーズンにふさわしい海パン写真ばかり見せられることになったんですが、まあそれはそれ。きっと残り4日間のセッション、マドリーもアトレティコに負けないぐらい一生懸命練習して、Undecima(ウンデシマ/11回目のCL優勝のこと)をゲットできる体勢を整えてくると思います。<hr>【マドリッド通信員】 原ゆみこ 南米旅行に行きたくてスペイン語を始めたが、語学留学以来スペインにはまって渡西を繰り返す。遊学4回目ながらサッカーに目覚めたのは2002年のW杯からという新米ファン。ワイン、生ハム、チーズが大好きで近所のタパス・バルの常連。今はスペイン人親父とバルでレアル・マドリーを応援している。 2016.05.24 12:55 Tue
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【原ゆみこのマドリッド】決勝が続いている…

▽「向こうはバーベキューで、こっちは社会科見学?」そんな風に私が驚いていたのは金曜日。お昼のニュースで先週末にリーガが終わってから、28日のCL決勝に向け、ずっと練習を続けてきたマドリッドの両雄の近況を知った時のことでした。いやあ、レアル・マドリーはモウリーニョ監督時代もアンチェロッティ監督時代にも、バルデベバス(バラハス空港の近く)の練習場施設のテラスでバーベキューをやっていましたし、週が変わってからは天気も好転。春をすっ飛ばしてもう初夏と言っていい感じになってきたため、ジダン監督が土曜日に予定されているカンテラ(下部組織)との練習試合の後、選手たちの家族も招待して、決戦に挑むチームを慰労しようと思ったのは別に不思議ではないんですけどね。 ▽そのミラノでの対戦相手となるアトレティコの方は、うーん、これは気質の違いですかね。選手たちがトレーニングだけの毎日に飽きるのを心配して、水曜日、木曜日はマハダオンダ(マドリッド近郊)の練習場ではなく、そこから車で20分ぐらい離れたラス・ロサスのスペイン・サッカー協会の施設でセッションを実施。おかげでスペイン代表の仕事で訪れたデル・ボスケ監督と、シーズン後半の好調ぶりで期待されていながらも代表復帰が叶わなかったフェルナンド・トーレスのニアミスがあったなんていうのはともかく。金曜日には練習後、選手全員がバスに乗ってペイネタを訪問し、まだ改装真っ最中の2017-18シーズンからのホームスタジアムをヘルメット着用して見学って、今の時期に必要なことだった? ▽いえ、キャプテンのガビも「La cicatriz de Lisboa es algo que no se olvida en la vida/ラ・シカトリス・デ・リスボア・エス・アルゴ・ケ・ノー・セ・オルビダ・エン・ラ・ビダ(リスボンでの傷跡は一生忘れられない)と認める2年前のCL決勝では、後半アディショナルタイム3分にセルヒオ・ラモスが起死回生の同点ゴール。「追いつかれた時、ボクらには勝負がかなり厳しくなったとわかっていた。体力的な問題もあって、苦しい思いをするとね」(ガビ)と、そのたった1週間前にバルサとの死闘を制してリーガ優勝を決めたばかりだったアトレティコがフィジカル面でハンデがあったことを反省の糧として、3週間も準備期間がある今回は、彼らも体力強化に余念がないんですけどね。 ▽中には、そのラモスのゴールシーンを「No lo he visto, nada. No me gusta verlo, y entonces no lo veo/ノー・オ・エ・ビストー・ナーダ。ノー・メ・グスタ・ベルロ、イ・エントンセス・ノー・ロ・ベオ(全然見てない。見るのがイヤだから、見ないんだ)」と、これって一種の現実逃避でしょうかね。敗戦後、ビデオで守備の問題確認もしていないコケのような選手もいるため、全員が全員、しっかりしている訳ではないんですが…。今週は決勝前に士気を上げようというのか、公式戦終了後は一刻も早く休暇に入りたいとでもいうのでしょうか。 ▽水曜日にはサウールが2021年まで契約を延長。違約金に8000万ユーロ(約99億円)という高値をつけて、変な虫がつくのを防いでいましたし、翌日には6カ間の負傷からリーガ最終戦で復活を遂げたチアゴとも来季の契約を結び、更にはガビ、グリーズマン、そしてトーレスと、皆がペイネタに行けるようにしようと、このところ、クラブのフロントは大忙しだとか。 ▽おまけにその間を縫って、土曜日のCL決勝前恒例のオープン・メディア・ディ(公開練習、監督や選手の会見、インタビューがある)が終わった後、シメオネ監督はリスボンで良くない経験でもしたんでしょうかね。1泊2日でミラノへ飛び、チームが宿泊するホテル、金曜日に練習する施設、そして会場のサン・シーロを視察してくるって、もしかして一番、今週退屈していたのはシメオネ監督だった? ▽ただ、2月末に負けたリーガダービーの教訓から、今度は「No nos ganarán en intensidad/ノー・ノス・ガナラン・エン・インテンシダッド(プレーの激しさでウチに勝つことはないだろう)」と、ジダン監督が今週ずっと、フィジカル重視で鍛えていたマドリーでもヒマを持て余していた選手はいたようで…。火曜日にはイスコがスポンサーイベントに出演した後、深夜のバラエティ番組を梯子。目隠しサッカーみたいなゲームをしたりして楽しんでいたんですが、訊かれた決勝の結果予想に「La vamos a ganar 2-0 al Atlético/ラ・バモス・ア・ガナール・ドス・セロ(アトレティコに2-0で勝つ)」と答えるとは、先発入りがほとんどありえない身としてはかなり大胆だったかも。 ▽うーん、何となく両チームとも体力強化に力を入れている今週の風景を見ると、昨今のダービーはゴールも少ないため、0-0で延長戦、更にPK戦なんて可能性もあるかもしれないと、私なんかは思ってしまうんですけどね。GKオブラクなど、「en los últimos dos años me han tocado tres y creo que ya es bastante/エン・ロス・ウルティモス・ドス・アーニョス・メ・アン・トカードー・トレス・イ・クレオ・ケ・ジャー・エス・バスタンテ(ここ2年で3回もあって、もう十分だと思う)」とPK戦は歓迎してないよう。となると、コケ曰く「引いてカウンターを狙ってくる」はずのマドリーから、トーレスなりグリーズマンなりがゴールを決められるといいのですが。 ▽え、CL決勝よりもっと先ではあるものの、今週はユーロ行きのスペイン代表招集リストも発表されたんだろうって? そうなんですよ。最初にちょっと触れたんですが、火曜日にデル・ボスケ監督が選んだ暫定メンバー25人にはトーレス、元アトレティコのジエゴ・コスタ(チェルシー)も入らず。しかも予選で常連だったパコ・アルカサル(バレンシア)まで落選して、CFがアドゥリス(アスレティック)とモラタ(ユベントス)しかいないという、非常に珍しいものに。その他、代表歴の長いマタ(チェルシー)やカソルラ(アーセナル)らの名前が見当たらなかったんですが、今月末の最終リストに残るかどうかはわからないものの、マドリーのルーカス・バスケスとアトレティコのサウールが嬉しいサプライズ招集されています。 ▽ただねえ、CLもそうですがELも決勝が今週水曜日でしたし、この週末には各国カップ戦の決勝もあるため、招集された25人が代表合宿初日の来週月曜日に集まれる訳ではなく、木曜日からのオーストリアのシュルンスでのキャンプにもこのリストからはたったの8人しか参加できず。そのため、11人の選手たちがヘルプメンバーとして呼ばれているんですが、最初2つの強化試合(29日ボスニア・ヘルツェゴビナ戦、6月1日韓国戦)では、本大会に行かない選手が中心になってプレーしないといけないとはこれまた如何に。いくら決勝に残るようなクラブに所属する選手ばかりの代表とはいえ、ライバルたちに準備状況で後れを取ってしまうのは3連覇を目指すスペインには不利な要因ですね。 ▽そして今週はその決勝ラッシュの最初の1つがあったんですが、いやあ、またセビージャがやってくれました。そう、水曜日のバーゼルでは39分、スタリッジに先制点を奪われ、崩壊寸前までリバプールに追い詰められていたにも関わらず、ハーフタイムにエメリ監督の「Pensad que estais jugando en el Sanchez Pizjuan/ペンサッド・ケ・エスタイス・フガンドー・エン・エル・サンチェス・ピスファン(サンチェス・ピスファンでプレーしていると思え)」というアドバイスが見事に的中。今季、リーガでもELでもアウェイで1勝も挙げてないコンプレックスを忘れた選手たちが発奮すると、後半開始から1分もしないうちにマリアーノのラストパスを受けたガメイロが同点弾を決めてしまったから、オープン放送がなく、近所のバル(スペインの喫茶店兼バー)で見ていた私もビックリしたの何のって。 ▽それどころか、63分にはビトロと連携した右SBのコケが、その日はMFとして起用されたのを利用。弾丸シュートで見事な勝ち越し点を挙げているんですから、やっぱりこれはヨーロッパリーグではなくてセビージャ・リーグ? 更にコケが69分にも敵DFに当たって自分の前に来たボールでGKミニョレを破り、3点目をゲットすると、オリジ、ベンテケを投入して最後はFW4人で反撃したクロップ監督のチームでしたが、好きこそ物の上手なれとはまさにこのことでしょうか。「ELはセビジスタ(セビージャ関係者やファンのこと)にとって、2人目の妻、2番目の彼女のようなもの」とエメリ監督が断言する程、傾倒している大会で彼らが詰めを誤ることはなく、結局、1-3で前人未到の3連覇を果たすことになりました。 ▽おかげでリーガでの順位は7位に終わったものの、ELチャンピオン特権でセビージャは来季も引き続きCLグループリーグからの出場が決定。いえ、彼らだって、今季もできれば、CLで決勝トーナメントに行きたかったんでしょうけどね。これでUEFAカップ/EL通算最多の5回目の戴冠ということで、あの大きくてズッシリ重いトロフィーも手元に置けることになりましたし、やっぱり優勝となるとファンの盛り上がり方も半端じゃなし。 ▽逆に決勝に進出するには、アトレティコのコケも「nosotros nos hemos enfrentado a equipos que han sido campeones en sus ligas/ノソトロス・ノス・エモス・エンフレンタードー・ア・エキポス・ケ・アン・シードー・カンペオネス・エン・スス・リーガス(ウチは各国のリーグ優勝チームと対戦した)」と言っていたように、PSV(オランダ)、バルサ(スペイン)、バイエルン(ドイツ)のようなヨーロッパの強豪をCLでは退けないといけないことを考えると、報奨金的にもシーズン前半はCL、後半はELというのはおいしいルートかもしれません。 ▽え、そのセビージャは今週日曜日にももう1つ、決勝が控えていないかって? その通りで、バルサとコパ・デル・レイ決勝で戦うんですけどね。ただ、気をつけてほしいのは2010年のアトレティコの轍を踏まないことで、その年、フォルランやアグエロに率いられ、ハンブルクで延長戦の末、フルアムを倒して、EL初優勝した彼らはその後にあったコパ・デル・レイ決勝で、それこそセビージャに敗戦。夢のdoblete(ドブレテ/2冠)を逃すことに。 ▽とはいえ、今回も両チームの休養期間の差が激しいですからね。リーガ優勝のパレードは月曜日に済ませ、そのリバプールとの決勝の日には練習場で決起ランチを和気藹々と開いていたバルサとは違い、たった2回しかセッションを持てないセビージャとなれば、スタメンの選手たちが体力回復するのもやっとかと。 ▽それでも元キャプテンのラキティッチが言うように、「Ya ganaron un gran título el miércoles, pero ya está bien/ジャー・ガナロン・ウン・グラン・ティトゥロ・エル・ミエルコレス、ペロ・ジャー・エスタ・ビエン(水曜日に偉大なタイトルを獲得したんだから、もういいよ)」なんてことはないと思うので、日曜午後9時半(日本時間翌午前4時半)からのビセンテ・カルデロンでは熱戦を期待。バルサはMSN(メッシ、ルイス・スアレス、ネイマールの頭文字)を始め、全員が出場可能、セビージャではリーガ最終戦で退場して、4試合の出場停止処分を受けたコロジエチャクが出られず、EL決勝で途中交代したラミも微妙な状態のようです。<hr>【マドリッド通信員】 原ゆみこ 南米旅行に行きたくてスペイン語を始めたが、語学留学以来スペインにはまって渡西を繰り返す。遊学4回目ながらサッカーに目覚めたのは2002年のW杯からという新米ファン。ワイン、生ハム、チーズが大好きで近所のタパス・バルの常連。今はスペイン人親父とバルでレアル・マドリーを応援している。 2016.05.21 17:48 Sat
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【東本貢司のFCUK!】モイーズとモウリーニョ

▽今シーズンも残すところ、イングランドおよびUK絡みではFAカップ・ファイナルと各昇格プレーオフのみとなった。個人的に故あってこの10日間前後、フットボール関連の動向・情報に断片的にしか触れられずに来てしまったものの、もちろんその間、重要な案件がいくつか発生し、あるいは“収拾の行方”を待つ状況にある。その一つがエヴァートンの新監督人事だが、ついこの数時間前、ブレンダン・ロジャーズのスコットランド・セルティック監督就任が発表されて、“予感”の範囲が絞られた感がある。つまり、セルティック新監督候補の一人に挙げられていたデイヴィッド・モイーズの「復帰の目」。もっとも現地メディアはまだその噂話すら話題にしていない。新オーナーに中国人実業家を迎えて2部から再出発するアストン・ヴィラが、モイーズの有力な再就職先として取りざたされているからだが、“おいしい話”をロジャーズにもっていかれたことがモイーズの負けん気に火をつけ、ならば「プレミアで(の復帰)」となる可能性は決して小さくないはず。 ▽確かにモイーズの指導手腕はわずか10か月で追われたマン・ユナイテッドでの苦い記憶でケチがついた。が、少なくとも通のファンや専門ジャーナリズムの間で彼の評価が落ちているようには見えない。スペインでの“失敗”も、あくまで他流試合の有意義な体験として受け止められているようだ(ちなみに、このことは元々監督経験ゼロのギャリー・ネヴィルについてもそう変わらない)。つまり、成果や結果はどうあれ、他国リーグ経由(という経験)はめったに得られない有利性、エキゾティックなオーラとなる。穿った見方をすれば、外国人監督の招聘に通じるリフレッシュ効果が期待できるのかもしれない。あくまでも現在のエヴァートンとモイーズ双方の意向次第ではあるが、マルティネスが解任された今こそ“ぴったりのタイミング”なのではあるまいか。それに、もしもヴィラを率いて即プレミア復帰を果たせない場合、そこでこそモイーズの評価に傷がつく。あえて(ロジャーズと同じ)1年契約で古巣に喝入れを、というストーリーはけっこうイケるはずだ。 ▽監督には「ハク」が要る。いや、できればそれが「ついてくる方がいい」と言い直そう。何よりも補強の際にその“違い”は想定以上にデカい。特に、異邦の助っ人獲得に当たって別格の効力を発揮する。だから、マン・シティーはグアルディオラを、チェルシーはコンテを招いた。シティーやチェルシーほど多国籍軍団化していないエヴァートンなら、モイーズの素性・経歴・足跡はおあつらえ向きではないか。いや、もしここでエヴァートンが異邦のそこそこ有名な監督を連れてきた日には、今やほぼドメスティックカラーの最後の砦の一角というべき「マージーサイドのブルーサイド」までもが、シティー/チェルシー/アーセナル化していきかねない。FCUKの管理人としてそれは何としても避けてもらいたい。思い出してほしい、マルティネスはただのスペイン人ではない。プレーヤー時代(ウィガンなど)からUKに根を下ろした“準・英国人”なのだ。誇るべき伝統は守られねばならない。どこもかしこも外国人オーナーの外国人監督では“母国”の名がすたる! ▽未定の、予断を許さない、それも重大な“場所”がもう一つある。マンチェスターの「レッドサイド」。一説には、というよりもほぼ共有認識として、たとえユナイテッドがFAカップを獲ったとしても(その可能性はかなりデカい)、ルイス・ファン・ハールの続投が安堵されることはない、というのが現在の空気。サー・アレックス勇退後初のタイトルは無論、プライドを取り戻すための収穫には違いないが、チャンピオンズ参戦が潰えてはファン・ハール失敗の烙印は免れないという。それについて現地メディアはこんな物言いをしている。「ファン・ハール続投を信じているのはこの世にただ一人、ファン・ハール自身だけだ」。それもやむなしと感慨にふける筆者は、ならばこの際、監督人事にもトラディショナル志向を願う、いや、夢見てしまう・・・・すると、どう考えてもギグスしかいないのでは? 折しもラシュフォードという生え抜きの新星が登場し、一抹の疑問符はついても同じくアカデミー出身のヤヌザイも戻った。今がその“チャンス”だと思うのだが? ▽大方の思惑、予感、期待は、それでも「ジョゼ某」だろう。しかし、モウリーニョがこれまでの自己流を貫くのであれば、それはどう転んでもユナイテッド流にそぐうとは思えない。そう、ネオ・チェルシーが生まれるだけだ。ただ、かすかな、針を通すような希望はなくはない。ヒントは目の前にある。レスターだ、ラニエリ。ラニエリは以前のラニエリではなくなった結果、望外の成果をもたらした。ならばモウリーニョも「心を入れ替えて」くれたら面白いストーリーが描けるのではないか。まったく異なる世界が拓けるのではあるまいか。あくまでも極端な例えだが、モウリーニョ率いる「純国産(ホームグロウン制度に則った意味での)中心のユナイテッド」なんてのはどうだ? なんと魅力的なチームに変身、もとい、復活する気がしないか? それなら、ごく当たり前にギグスが引き継ぐよりも、いやいつか来るその日を見据えたお膳立てとして、願ってもない再出発が期待できるのでは・・・・などと思ってみたりもする。さてさて、時代はどう動いていくだろうか。<hr>【東本 貢司(ひがしもと こうじ)】 1953年大阪府生まれ 青春期をイングランド、バースのパブリックスクールで送る。作家、翻訳家、コメンテイター。勝ち負け度外視、ひたすらフットボール(と音楽とミステリー)への熱いハートにこだわる。 2016.05.21 17:22 Sat
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【倉井史也のJリーグ】フレッシュマンは今こそ不思議ちゃんになろう?!の巻

▽サッカー界にも不思議ちゃんっているんですよ。質問とは全然関係のないこと、返事してくる選手。すっごいドキドキするんですよね、もしかして変な質問したんじゃないかって。で、よーく考えたら、変な質問でした! ごめん!! ▽それから通訳さんが入ると、ときどき変な答えになってしまうことがあるんです。伝言ゲーム的な。間に挟まってる通訳さんがすっごい困っちゃう的な。「今日の試合どうでしたか?」なんて質問された時にゃ、「どう」って何よ? みたいなこと絶対思ってると思うんですよ。 ▽でも、それを言うと角が立つから「今日の試合の攻守のポイントは何?」みたいに訳して伝えると、監督は試合後の勝敗に集中しちゃってて、「あのときのCBが1メートルずれていたけれど、それが結果的に誘い込む形になったけど、勝ち点3だった」みたいな。それをまた通訳さんが苦労しながら「CBが勝ち点3を呼び込んだ」的な。 ▽で、メディアが「CBが勝利をもたらした」って書いたのを監督が読んで、「オレはこんなこと言ってないぞ!」と怒ったりして。ええ、全部フィクションですけどね。 ▽ま、今日はそんな不思議ちゃんな選手や監督の話じゃないんですよ。チームとしての不思議ちゃん。たとえば磐田。 ▽得失点差、マイナス5もあるんですよね。でも9位。だって、他に得失点差がマイナス5っていうのは鳥栖で、ここは16位。両者は勝ち点7も違うんです。要するに、勝ち点を稼ぐのがうまい! 守って勝ってるわけじゃないんです。得点15は9位タイなんですから。となると問題は守りってコトで、しっかり補強も進んでます。この要領の良さって、名波浩監督っぽいなぁ。 ▽その磐田が今週末に対戦するのは、こちらも要領のいい甲府。こちらも15得点挙げているのですが得失点差はマイナス4。だけど13位の自分の下には自分よりも得失点差の悪いチームしかいないということで、「キチンとした順位」って感じですな。 ▽じゃあなんで甲府が不思議ちゃんなのかというと、まだ2勝しかしてないから。だけど、3勝している14位仙台よりも上なのです。 ▽この要領のよさこそ、新入社員、新入生がそろそろ身につけるべきモノじゃないでしょうか。そうでないと、そろそろ5月病に押しつぶされてしまうぞ! ということで、新入社員、新入生はこのカードに注目! ▽ところで、5月病ってぽかぽかして眠たくなる病気でしたっけ? だったらオレも5月病…かも……。 <hr>【倉井史也】 試合当日は、はやる気持ちを抑えられずスタジアムに受け付け開始と同時に駆けつけ、選手のバスが両方行ってしまうまで名残を惜しむ。自慢は対戦カードの因縁をよく覚えていること。特にサポーター寄りのネタが得意。パッと見は若いが実は年齢不詳のライター。 2016.05.19 21:30 Thu
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【日本サッカー見聞録】奈良と久保が離脱。OA枠も考えざるをえないか?

▽先週のコラムでは、11日のガーナ戦を振り返りながら、ケガ人が続出しても動じない手倉森監督の懐の広さについて触れた。チームは現在、21日から始まるトゥーロン国際大会に備えているが、メンバー発表後のDF奈良(川崎F)がタックルに行った“自爆”から左脛骨の骨折でリオ五輪出場は絶望的となった。さらにFW久保(ヤングボーイズ)も下半身の違和感のためトゥーロン国際大会を辞退と、相変わらずケガ人に見舞われている。 ▽正直、奈良の離脱は痛手だ。CBには屈強なフィジカルの植田(鹿島)と岩波(神戸)がいるものの、彼らのビルドアップ能力は消して高くない。その点、奈良は、かつては無謀なアタックから反則を犯していたが、川崎Fに加入後は悪癖も減り、なりよりもビルドアップ能力でU-23日本代表では攻撃の起点になっていた。ガーナ戦だけでなく清水とのテストマッチでも、日本の攻撃は左サイドが起点になることが多かった。 ▽奈良はガーナ戦でハーフタイムに岩波と交代し、その後は植田が積極的にロングフィードを試みたものの、精度はいま一つ。リオ五輪ではカウンターが日本の武器となるだけに、奈良の負傷離脱は攻守に渡って大きな痛手だろう。代わりに招集された三浦(清水)がどこまで代役を務められるかも未知数のため不安は尽きない。 ▽こうなると浮上するのがOA枠でのCB候補だ。植田とコンビを組む昌子(鹿島)という選択もあるが、右SB伊東(鹿島)はガーナ戦で好クロスを配球してアピールしただけに、DF3人の招集は鹿島の石井監督にとっても簡単には認められないだろう。日本代表クラスのCBとなると、フィードの正確な森重や、奈良と同じレフティーの丸山が候補となるが、いずれもFC東京のレギュラーCBだ。FC東京には彼ら以外にも橋本や小川、さらに負傷中ではあるが中島、室屋といった最終予選に出場したメンバーもいる。1チーム3人という制限がある中で、6人の中から誰を選択するか。そして、それを城福監督が認めるのかどうかという問題もある。 ▽久保の代わりにはオナイウ阿道(千葉)が追加招集された。これまでも常連だけに、チームに溶け込むのは難しくない。問題は久保のコンディションである。ヤングボーイズはCL予備選の3回戦から出場するため、その試合を終えてからチームに合流する予定となっているが、日程は決まっていない。問題となるのは、夏とはいえ過ごしやすい気候のスイスから熱帯地域のマナウスに移動することで、暑熱対策が間に合うかどうかという点である。日本にいれば梅雨の蒸し暑さを経験し、暑くなる夏を迎えてのマナウス入りだけに暑熱対策は大きな問題にはならないだろう。 ▽今から2カ月以上も後のことを心配しても仕方ないが、とりあえず、もうこれ以上ケガ人が増えないことを願わずにはいられない。 <hr>【六川亨】1957年9月25日生まれ。当時、月刊だった「サッカーダイジェスト」の編集者としてこの世界に入り、隔週、週刊サッカーダイジェストの編集長や、「CALCIO2002」、「プレミアシップマガジン」、「サッカーズ」の編集長を歴任。現在はフリーランスとして、Jリーグや日本代表をはじめ、W杯やユーロ、コパ・アメリカなど精力的に取材活動を行っている。日本サッカー暗黒の時代からJリーグ誕生、日本代表のW杯初出場などを見続けた、博識ジャーナリストである。 2016.05.19 13:30 Thu
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