【原ゆみこのマドリッド】上司が変われば気分も変わる…2016.01.09 08:00 Sat

twitterfacebookhatenalinegplus
▽「いい時期ではあるわよね」そんな風に私が納得していたのは金曜日、いよいよジダン新監督の初戦が翌日に迫っているのに気づいた時のことでした。いやあ、今週は月曜にレアル・マドリーの指揮官交代があったため、こちらも何やらバタバタして過ごすことになったんですが、幸いだったのは彼らにはミッドウィークにコパ・デル・レイの試合がなかったこと。それも12月にカディス(2部B)との32強対決1stレグでチェリシェフのalineracion indebida(アリネラシオン・インデビダ/出場資格のない選手の起用)が発覚し、大会敗退となったせいですが、うっかり16強対決が予定されてでもいたら、新監督も落ち着いて準備を進める時間がなかったのでは?

▽おかげで日曜にバレンシア戦で引き分けた翌日夕方遅く、ベニテス監督の解任がクラブの理事会で決定。同時に後任監督としてジダンの名前が、ほんの3週間程前には「ベニテス監督はチームの問題の解決策。Zidane no sustituirá a Benítez/ジアン・ノー・ススティトゥイラ・ア・ベニテス(ジダンがベニテス監督を引く継ぐことはない)」と断言していたペレス会長により、サンティアゴ・ベルナベウで発表され、その時は当人も「タイトルと獲るために全力を尽くす」といったシンプルなコメントだけで、あとは奥さんとマドリーのカンテラ(下部組織)でプレーする4人の息子さんたちと一緒に檀上でポーズするぐらいで良かったんですけどね。

▽翌火曜にはちょうど、レジェス・マゴス(東方の三賢人の祝日、スペインでは伝統的に子供たちがプレゼントをもらえる日となっている)を控え、ファンサービスとして1年に1回の恒例となっている公開練習に挑み、駆けつけたサポーター約7000人から拍手を浴びた後、RMカスティージャ(マドリーのBチーム)監督となって1年目だった昨季は忌避しながらも、今季から行うようになった監督記者会見に初めてトップチームの指揮官として登場することに。ええ、今度はサンティアゴ・ベルナベウのプレス・コンファレンスルームで行われたこちらでは、今後のチーム運営について事細かに質問に答えていましたっけ。

▽曰く、「マドリーで大切なのは美しいサッカー。自分もそれを目指す。Fútbol ofensivo y equilibrado/フトボル・オフェンシボ・イ・エキリブラード(攻撃的でバランスの取れたサッカーをね)」から始まって、「Quiero darle mi toque personal, un toque ofensivo/キエロ・ダールレ・ミ・トケ・ペルソナル、ウン・トケ・オフェンシーボ(自分の個人的なタッチも加えたい。攻撃的なニュアンスをね)」とか、BBC(ベイル、ベンゼマ、クリスチアーノ・ロナウドの頭文字)については「la idea es clara, jugar con los tres/ラ・イデア・エス・クラーラ、フガール・コン・ロス・トレス(3人を使ってプレーするというアイデアははっきりしている)」、更には「Ganarlo todo/ガナールロ・トードー(全てを勝ち獲ること)。ウチには獲得できるタイトルが2つあるから、それにトライする」と、今季の目標なども話していましたが、何にしてもチームには才能ある選手が揃っていますからね。

▽あまり、やろうとしていることはペレス会長任期中の12年間で10番目の監督となった彼も変わらないような気はしますが、そこは実働グループのやる気次第。今季、大勢が慕っていたアンチェロッティ監督がいなくなり、実務肌のベニテス監督とはフィーリングが合わなかった彼らのハートを掴むことができれば、まだシーズンは半分残っていますし、どんなことでも可能かと。ええ、もちろん失格となったコパ・デル・レイだけは別ですけどね。

▽え、そんなお隣さんを尻目に今季も手近なタイトルとしてまず、コパ優勝を目指しているアトレティコは試合があったんだろうって? その通り、今週は月曜にクラネビテル(リーベル・プレートから移籍)、火曜にアウグスト(セルタから移籍)の入団プレゼンをひっそりビセンテ・カルデロンで行った後、水曜に彼らはコパ・ダービーとなった16強対決1stレグでまたしてもエスタディオ・デ・ラス・バジェカスに乗り込んだんですが、いえ、もちろん昨今の試合展開から楽勝なんてまったく予想はしていなかったんですけどね。昨年末最後のリーガでの対戦を思い出しても苦戦することは目に見えていたんですが、そこへ加えて、シメオネ監督が最初のレウス(2部B)戦同様、オブラク、ゴディン、ファンフラン、フィリペ・ルイス、コケ、グリースマンらにお休みを与え、コパ用イレブンを投入したから、もう大変だったの何のって。

▽実際、その日のバジェカスはスタンドも半分ぐらいしか埋まらず、ラージョの方もリーガとは違うスタメンだったんですが、アトレティコではここ2試合、大活躍をして株が上がり、クラネビテルとアウグストをダブルボランチで早速デビューさせたため、トップ下の大役を仰せつかったトマスがちょっと上づってしまったんですかね。どちらもなかなか点の取れない展開でしたが34分、自陣エリア前からクリアしたボールをナチョの正面に送ってしまい、そのミドルシュートで先制されてしまったから、まったくツイてない。ええ、これにはシメオネ監督も「es un chico joven y hay que llevarlo sin la ansiedad de estos últimos días en el entorno de él/エス・ウン・チコ・ホベン・イ・アイ・ケ・ジェバールロ・シン・ラ・アンシエダッド・デ・エストス・ウルティモス・ディアス・エン・エル・エントルノ・デ・エル(彼は若いんだから、ここ数日のように周囲が焦らせることなく、育てていかないといけない)」とフォローするしかありません。

▽それでもまあ、0-1なら来週、ホームでの2ndレグもありますし、真っ青になる程のこともなかったんですが、このところ早めの交代で味をしめたシメオネ監督は後半10分には近頃、あまりいいところを見せてくれないオリベルとアウグストを引っ込め、サウルとビエットを入れる攻撃的メンバーチェンジを実施。するとこれが見事に当たり、21分には右サイドからキニを振り切ってビエットが入れたラストパスにサウルが反応、エリア内からシュートを決めて同点にしてくれたから、何とも有難いっちゃありません。いえ、2年前、レンタルでラージョに修行に来ていた当人は遠慮して、大袈裟にゴールを祝うことはしませんでしたけどね。

▽「El chico que vieron crecer en Vallecas sigue creciendo/エル・チコ・ケ・ビエロン・クレセル・エン・バジェカス・シケ・クレシエンドー(バジェカスで成長するところを見せた選手は成長し続けている)」(サウル)と後で言っていたように、こういうのこそが最高の恩返しなんでしょうが、ラージョのパコ・ヘメス監督にとってはまさに痛し痒しだったかも。それでも幸い、34分にはCKからビエットが放った至近距離のシュートはGKファン・カルロスのparadon(パラドン/スーパーセーブ)とゴールポストに阻まれて決まらず。

▽おかげでラージョは1-1のままで2ndレグを迎えられることになり、その日は2-2で引き分けたリーガ前節のレアル・ソシエダ戦の後、「ウチは1部のチームじゃない」というコメントから、「No son de Primera, sino de 'Champions'/ノー・ソン・デ・プリメーラ、シノ・デ・チャンピオンズ(1部ではなく、CLにいるチーム)」と、ヘメス監督も自軍を大幅に格上げしていたものの、点を取ることは苦手でも、基本的に守りは超一流のアトレティコが2ndレグでは0-0でもいいとなると、見通しはあまり芳しくないでしょうね。

▽ただラージョにとって、もっと重要なのは週末のリーガ戦、土曜にレバンテのホームを訪れる試合で勝つことで、何せこのところ、降格圏の19位が定位置になってしまっていますからね。相手は最下位ですが、コパにはすでに敗退していて今週ヒマだった上、前節では兄貴分のアトレティコが終盤にトマスのゴールが決まるまで勝負を決められなかったという例もあるため、心してかかる必要があるかと。実際、残留ゾーンまではたった勝ち点2差しかないので、シーズンの前半終了戦でもある、この19節では不名誉な順位から脱出できたらいいのですが。

▽そしてアトレティコは日曜午後8時半(日本時間翌午前4時半)から、やはりアウェイでセルタ戦なんですが、こちらの目標は現在、2位バルサと勝ち点差2、3位マドリーと同4ある首位の維持と極めて贅沢なもの。もちろん試合消化数が1つ少ないバルサがクラブ・ワールドカップのせいで延期したスポルティング戦を2月に済ませた後どころか、1月30日の直接対決でカンプ・ノウに乗り込めば、簡単に転落してしまうのかもしれませんが、まあ、それまではねえ。金曜からは大雨が続き、バライドス(セルタのホーム)周辺が浸水しているなんて心配な情報もあるものの、アウグストもマハダオンダ(マドリッド近郊)でのセッションでは先発組に抜擢され、忘れ物も取りに行ける早々の古巣訪問を心待ちにしているはずですし、いつものように少ない得点をガッチリ守って勝ち点3に変えられればと思います。

▽一方、そんなセルタも今週木曜はコパでカディスと当たり、リーガ5位の実力相応で0-3と快勝。マドリーが失格になった恩恵を受けているんですが、そのマドリーがこの土曜の午後8時半(日本時間翌午前4時半)に対戦するデポルティボは水曜にミランデス(2部)とのコパで1-1の引き分け。あまりないことですが、相手の方が休息期間が短いのはジダン新監督にとって、有利に働くかもしれません。加えてサンティアゴ・ベルナベウでの試合とあって、ファンに絶大な人気を誇る彼がベンチで指揮を執れば、これまでのようにpito(ピト/ブーイング)が聞こえることもなく、スタンドと一体になって勝利を目指すことができる?

▽それには現役時代はマドリーで長くプレーしたビクトル監督も、「el principal cambio será en el plus de ilusión que tiene la gente/エル・プリンシパル・カンビオ・セラ・エン・エル・プルス・デ・イルシオン・ケ・ティエネ・ラ・ヘンテ(最大の変化は人々により大きな夢を抱かせること)」と用心していましたが、新監督の幸運は他にもあって、とうとうカルバハルも回復し、この試合前にチームの負傷休場者がゼロに。いえ、バレンシア戦でレッドカードをもらって退場したコバチッチだけは処分で出られませんけどね。

▽金曜の前日練習からは、BBCにイスコ、そしてモドリッチ、クロースという、アンチェロッティ前監督が好んだ布陣、ついでに言うなら、昨年のクラシコ(伝統の一戦、マドリーvsバルサ戦のこと)で0-4と惨敗した時のスタメンからハメス・ロドリゲスを除いただけ、とはいえ、十二分に攻撃的なものが予想されていますが、当時はベンゼマとベイルが負傷明けだったのに比べ、今は2人とも好調を維持しているのは好材料になるかと。何せ、昨年12月にはカンプ・ノウでバルサから引き分けをもぎ取ったデポルティボですが、ここ2試合はリーガで白星がなく、順位も7位と少々、調子を落としていますしね。順当に行けば、マドリーが勝つんじゃないかと思いますが、注目はプレーでファンをさせることができるかどうかになりそうです。

▽そしてもう1つの弟分、コパはラージョに及ばず敗退となり、肩の荷が下りているヘタフェは日曜にセビージャとのコパ・ダービーに0-2で負けているベティスと対戦するんですが、実は彼らは月曜の前節スポルティング戦に2-1と逆転勝利を収め、現在は13位と比較的落ち着いた順位に。相手も同じ勝ち点で14位ですから、実力の拮抗した、いい試合になりそうな気配はあります。そうそう、折しも木曜には今季シーズン後半のアボノ(年間指定席)を80ユーロ(約1万円)という爆安値段で売り出したヘタフェですが、そのホーム11試合にはこのベティス戦も含まれているとか。マドリーやアトレティコ戦もこれからあることですし、ようやく今年になってブカネーロ(ラージョの過激なサポーター集団)がストを止め、応援を再開したバジェカス同様、いつもガラガラなコリセウム・アルフォンソ・ペレスもその恩恵でもう少し、賑やかになってくれるといいですよね。

【マドリッド通信員】
原ゆみこ
南米旅行に行きたくてスペイン語を始めたが、語学留学以来スペインにはまって渡西を繰り返す。遊学4回目ながらサッカーに目覚めたのは2002年のW杯からという新米ファン。ワイン、生ハム、チーズが大好きで近所のタパス・バルの常連。今はスペイン人親父とバルでレアル・マドリーを応援している

コメント

関連ニュース

thumb

【倉井史也のJリーグ】はいはいセカンドステージ始まりますよ、知ってましたか?!の巻

▽先週の取材が終わって帰るときに知り合いのサポーターの女性から「2ステージ制終わるんですよね、今年が最後ですよね、知らないんですか、ちゃんと取材しなさいね」とたたみ込まれてしまったわけですが。だいたい2ステージ制ではこっちも困ってるわけですよ。だってステージだけで2回も優勝予想しなきゃいけないし、すぐ結果が出ちゃうから予想をみんな憶えてて非難囂々だし。1ステージ制の時はどんな予想しても結果が出るころにはみ~んな忘れてくれてたから、楽だったのにね~。自分でもどこが優勝するって書いたか忘れるくらい。いやぁ、いい時代だった。 ▽……ちゅうことで、またまた書かなきゃいけないわけですよ。もし監督が「私は予言者ではない。成績とは積み重ねで、決して前もって計算できるものではないのだ」なんて言ってると、「おー、賢者の言葉」と言われるのに、ライターが同じこと言うと「あんた、取材してないね。結局わかんないってコトでしょ? 日頃何観てんの? それで自分の書いた原稿読めってワケ?」と罵られてしまうのですよ。 ▽じゃあ行きますか! 優勝は浦和! 2位が鹿島! 3位広島! 4位川崎! でもって14位G大阪! 15位大宮! ▽根拠? 止めてください、恥ずかしい。ま、でも戦力の移動やらを踏まえつつ、もう1つは五輪で活躍した選手はそのあと燃え尽きるんじゃね? みたいな要素を入れつつ。どうです? 何となく当たる気しませんか。特にG大阪なんて、宇佐美貴史出して、そのあとどうすんの? みたいな。大宮は川崎戦観たけど、あんまりひどくてビックリ、的な。鹿島は植田直通が疲れたら大変かもしれないぞ、と。広島はここから本領発揮しそうだけど、塩谷司が五輪に行くのであと大変じゃねーかなって。川崎はせっかく五輪に行く気になってた大久保嘉人が選ばれなかったから、精神的にキツイかも、ちゅうわけで。 ▽し、しまった、こんな感じでいい加減に予想しているのがわかってしまった。だけど、その予想がことごとく悪い方に出たというのがファーストステージ。となると今回はきっと当たりますよ!! ええ。全部当たってたら、間違いなく今頃億万長者なんですけど。 ▽ということで、セカンドステージの最初の試合、注目カードは大宮vs名古屋。現在14位と残留争いに巻き込まれている名古屋が、大宮を道連れにしそうな雰囲気がプンプンと。いや、そうでなきゃ、名古屋はこの節が終わったときに、降格圏に沈むことも考えられるんですけどね……。<hr>【倉井史也】 試合当日は、はやる気持ちを抑えられずスタジアムに受け付け開始と同時に駆けつけ、選手のバスが両方行ってしまうまで名残を惜しむ。自慢は対戦カードの因縁をよく覚えていること。特にサポーター寄りのネタが得意。パッと見は若いが実は年齢不詳のライター。 2016.06.30 23:15 Thu
twitterfacebook
thumb

【原ゆみこのマドリッド】まるで昔のようだ…

▽「やっぱり勝たないとダメよね」そんな風に私が頷いていたのは水曜日。アイスランドの監督記者会見に大勢のマスコミが詰めかけ、1時間近くも質疑応答が続いたという記事をスポーツ紙のサイトで見つけた時のことでした。いえ、ユーロ開始時には24チームもあったのに今や、残っているのは8チームだけ。スペイン同様、母国代表の追っかけ要員は敗退と同時に撤収するものの、どの国だって大会全般をカバーする取材陣がいますし、参加してない国のメディアだって、もうここまでチーム数が減れば、優勝候補以外にも人員を派遣する余裕が出てくるのは当然ですけどね。 ▽おかげでラーゲルベック共同監督が、ベスト16でイングランドを破った後、翌火曜日はオフだった選手たちの何人かが夕食の時間に20分遅れて来たことについて、「プロ意識に欠けている」と批判したといった細かいことまで報道されるようになってしまったんですが…。実はこのアイスランド代表、相棒のハルグリムソン共同監督からして開業経験もある歯科医。 ▽正GKのハルドーソン(ボーデ・グリムト)も、大会後はユーロビジョン(ヨーロッパの各国対抗歌合戦)の同国代表ビデオクリップを作成した実績のある映像プロデュースの仕事に戻りたいようですし、中にはこれまで夏季に開催される北欧のリーグでプレーしていて、冬の間は実家で農業を手伝っていたボドバルソン(カールスルーヘ)のような選手もいるため、ここへ来ていきなりサッカーのプロはと言われても、困ってしまう人たちがいるかもしれないんですが…。 ▽まあ、そんなことはともかく、2年前のW杯ブラジル大会の時より、ほんの少ししかマシな結果が出せなかったスペインの今大会最後の試合の話をしておかないと。いやあ、相手のイタリアには2008年、2012年のユーロで勝っていましたし、コンテ監督の率いるチームはカテナチオの伝統を踏襲した堅い守りがウリのチームと聞いていたため、まさか試合のスタートから、あんなに攻めてくるとは私も思っていなかったんですけどね。キックオフと同時にドシャ降りになって、気が散ってしまったのか、百戦錬磨であるはずのスペインの選手たちまでが意表を突かれているって、そんなことがあっていい? ▽実際、ボールを保持することもできず、相手のプレスにGKからはロングボールしか蹴れず、逆にイタリアがブッフォン(ユベントス)からパスを繋いでくる光景には、これまでのサッカースタイルが互いに逆転したようにしか見えなかったんですが、それでも30分ぐらいまでのスペインはペッレ(サウサンプトン)やジャッケリーニ(ボローニャ)のシュートをデ・ヘア(マンチェスター・ユナイテッド)が弾いてくれたため、スコアは動かず。すると32分、自陣エリア前でセルヒオ・ラモス(レアル・マドリー)がファールを犯し、FKを献上したところ、とんでもない悲劇が発生します。 ▽ええ、これってまさに緊張感の欠如の証明としか思えないんですが、まだデ・ヘアが壁の指示をしているうちにイタリアはエデル(インテル)がFKを蹴ります。その勢いのあるボールはデ・ヘアが弾いたんですが、何とそこへ詰め寄った選手はイタリアが3人に対してスペインはピケ(バルサ)1人だったとなれば、見ているこっちだって呆気に取られてしまいますって。 ▽結果、押し込もうとしたジャッケリーニは寸前でデ・ヘアが防いだものの、そのボールをキエッリーニ(ユベントス)がネットに収めてしまったから、さあ大変! いやあ、あとでペッレなどから、「FKの時、キエッリーニはこぼれ球を追ってゴールを入れてやるって予告していた」という証言もあったため、これは完全にイタリアの作戦勝ちだったようですけどね。とはいえ、残りはまだ1時間程もありましたし、まだその段階では私もremontada(レモンターダ/逆転)はきっとできると信じていたんですが…。 ▽どうも上手くいきません。後半は、「Hemos hecho un primer tiempo timido/エモス・エッチョー・ウン・プリメール・ティエンポ・ティミドー(ウチは前半、プレーが内向的だった)」(デル・ボスケ監督)という反省をもとに、しばしばジョルディ・アルバ(バルサ)と議論をしていたノリート(セルタ)をアドゥリス(アスレティック)に代え、モラタ(ユベントス)を左サイドに移して攻撃力増強を図った彼らだったんですが、やっぱり1点を守るイタリアは強いんですよ。元々、5人DF体制を敷かれると突くポイントがわからなくて手をこまねいてしまう傾向があるスペインな上、プレーにスピードもなかったため、15分程でモラタをルーカス・バスケス(マドリー)にしてみたものの、相変わらずチャンスはほとんど作れません。 ▽それどころか、80分にはハイボールを敵と争った時に体を激しく地面に打ちつけて負傷したアドゥリスが、交代を余儀なくされることになったから、さあ大変! え、スペインはCFを2人しか招集していないのに、それってマズくないかって? もちろん、そうなんですけどね。とりあえず、ここはペドロ(チェルシー)を入れて、falso nueve(ファルソ・ヌエベ/偽9番)で代用することにしたんですが、ブッフォンにナイスセーブを披露させる機会にしても、せいぜいCBピケの2度のシュートぐらいしかなくてはねえ。 ▽そうこうするうちに90分、前がかりになっているところを狙われてカウンターを喰らい、ダルミアン(マンチェスター・ユナイテッド)のクロスがラモスに当たってペッレの下へ。それをvolea(ボレア/ボレーシュート)で綺麗に撃ち込まれ、スペインのユーロは終わりを告げることになりました(最終結果2-0)。 ▽うーん、前回のW杯はグループリーグ敗退、今回は決勝トーナメント初戦で敗退というのは、2004年のユーロ、2006年のW杯と同じ流れで、その後からスペインはご存知の通り、国際主要大会3連覇の黄金時代に突入したんですけどね。どうも今の代表からは、これからまた昇り調子になる気配が感じられず、いえ、ラモスなどは試合後、「Con una bolsa de papas y desde el sofa es facil hablar/コン・ウナ・ボルサ・デ・パパス・イ・デスデ・エル・ソファ・エス・ファシル・アブラル(ポテチの袋を持ってソファから話すのは簡単だよ)。改革が必要なのかはわからない。だって、他の代表では35歳以上の選手だってプレーしているんだから」と、その黄金時代を担った選手たちの高齢化によるチーム力の低下を断固、否定していたんですけどね。 ▽実際、イタリアには、「彼のいるスペインには1度も勝ったことなかったから、今日はイニエスタ(バルサ)にユニ交換してもらった」と嬉しそうに言っていた38歳のブッフォンを筆頭に、ユーベのBBC(ボヌッチ、バルザーリ、キエッリーニの頭文字)ら、ベテランが多かったですし、若い方がいいってことはないかと思いますけど、「No tenemos el nivel de cuando ganamos el Mundial y la Eurocopa/ノー・テネモス・エル・ニベル・デ・クアンドー・ガナモス・エル・ムンディアル・イ・ラ・エウロココパ(今のウチはW杯とユーロに勝った時のレベルにない)」(ピケ)という事実は、火を見るより明らかかと。 ▽そういう意味ではセスク(チェルシー)やシルバ(マンチェスター・シティ)など、若いうちから何度も栄華を極めてきたせいで、実年齢はともかく、精神的に老けてしまったような気がしなくもありませんが、彼らが絶対譲れないと言っているティキタカ(短いパスをつなぐサッカースタイル)もチャビ(アル・サッド)やシャビ・アロンソ(バイエルン)がいなくなった辺りから、あまり効率的に機能していないようですしね。 ▽となれば、同日、アイスランド戦に負けて即辞任を発表したイングランドのホジソン監督と違い、まだ自身の先行きについて明言をしていないデル・ボスケ監督ですが、おそらく続投はないはずなので、バルサだってグアルディオラ監督時代からルイス・エンリケ監督時代になってバリエーションが加わったように、次期スペイン代表監督となる人が、これからの中心メンバーとなる選手たちに合ったプレースタイルを見つけてくれることを祈るしかないんじゃないでしょうか。 ▽ちなみに試合後、一旦、イル・ド・レに戻り、火曜日に揃ってマドリッドに着いたスペイン代表に関しては、いえ、選手たちがすぐさまバケーション入りしてしまったせいもあるんですけどね。もう話題的には後継監督になるのはカパロス、ミチェル、パコ・ヘメスetcといった人事系か、スタッド・ド・フランスで長年のライバル、ブッフォンと熱く抱擁を交わし、ユーベで2年間お世話になったお礼を言おうと近づいてきたモラタが割って入る余地のない親密さを披露。そのカシージャス(ポルト)が自身のツィッターに映画『ランボー2』のラストシーンをアップし、スペイン語に吹き替えられたスタローンの「No sé adónde, pero me voy/ノー・セ・ドンデ、ペロ・メ・ボイ(どこかは知らないが、自分は行く)」という台詞に、今回のユーロで1度も出場機会のなかった彼が代表引退を示唆しているのではないかという憶測が飛び交ったりといった程度で、あまり面白くないですけどね。 ▽そんな中、おやこれはと私が思ったのは、試合中のエキサイトぶりもそうなんですが、イタリアのコンテ監督の「ウチの考えと信念は才能あるチームにも勝てるということだった。戦術、戦略的にいい仕事をして、選手たちを確信させられれば、ポジティブな結果、勝利を期待できるとわかっていた」というコメント。うーん、先日はチャビが「イタリアはバルサとアトレティコをミックスしたみたいなスタイル」と言っていたんですが、これって、完全にチョリスモ(シメオネ監督のサッカー哲学)が入っていない? さらに「スペインは素晴らしく質が高く、才能のある代表だが、イタリアは代表というよりチーム」と続けられては、昨季はタレントには明らかに不足しながらも、努力と根性とチームの団結力だけで強敵を破ってCL決勝に進出したアトレティコを彷彿しても仕方ない? ▽いえ、それでも最後は運がなければ、決勝でこの3年間に2度もお隣さんに負けてしまうといった悲劇に終わるんですけどね。その辺はまあ、日曜日にはフベニル(ユースのカテゴリー)がコパ・デル・レイ決勝でレアル・マドリーを3-4と破り、女子チームもコパ・デル・レイナ決勝で2-3とバルサを退けて優勝と、少なくとも前者は数年後のアトレティコの力になってくれることがわかったため、まあ置いておいて、次は準々決勝で土曜日にクロースやエジルら、テクニシャンのいるドイツと当たるイタリアですが、2年前のW杯覇者もベスト16のスロバキア戦では3-0と快勝し、いよいよエンジンがかかってきたよう。その順番もバルサを破った後にバイエルンも倒したアトレティコみたいなんですが、どんな戦いになるのか、とても興味が持たれます。 ▽え、それで他の準々決勝はどうなっているのかって? そうですね、まずは木曜日にポルトガルがポーランドと当たるんですが、見どころはクリスチアーノ・ロナウド(マドリー)とレバンドフスキ(バイエルン)のストライカー対決。いえ、前者はグループリーグ第3戦のハンガリー戦で2点を決めただけ、予選得点王の後者に至ってはまだノーゴールと本調子には程遠いんですが、今のところ、本大会得点ランキング1位はベイル(マドリー)とモラタ、そしてグリーズマン(アトレティコ)の3ゴールとハードルはそんなに高くないですからね。ロナウドにしてみれば、来季は古巣に復帰してチームメートとなるモラタはもちろん、ベイルにもゴール数で負けたくはないんじゃないでしょうか。 ▽そして金曜日にはそのベイルとアーロン・ラムジー(アーセナル)率いるウェールズがベルギーと対戦。ベイルの呼び込んだオウンゴールでアイルランドに勝った相手に対し、ベルギーもベスト16ではハンガリーに0-4と大勝して、ついに実力発揮かと言われているんですが、その試合ではアトレティコのカラスコも大会初ゴールを挙げています。 ▽ちなみにグループリーグ初戦のルーマニア戦でパッとせず、批判を浴びたグリーズマンがその彼から、「耐えて、ピッチで自分の力をピッチで見せろ」というメッセージを贈られた後、アルバニア戦の先制ゴール、そしてベスト16の北アイルランド戦では逆転勝利を導く2ゴールと大活躍しているフランスは日曜日に、今一番注目を集めているアイスランドと戦うことに。何せ、スペイン敗退で応援するチームがなくなってしまった私ですからね。あとはまだユーロに残っているマドリッドのチームの選手たちの頑張りに期待するしかないんですよ。<hr>【マドリッド通信員】 原ゆみこ 南米旅行に行きたくてスペイン語を始めたが、語学留学以来スペインにはまって渡西を繰り返す。遊学4回目ながらサッカーに目覚めたのは2002年のW杯からという新米ファン。ワイン、生ハム、チーズが大好きで近所のタパス・バルの常連。今はスペイン人親父とバルでレアル・マドリーを応援している。 2016.06.30 12:35 Thu
twitterfacebook
thumb

【原ゆみこのマドリッド】緊張感が高まってきた…

▽「やっぱり決勝トーナメントは過酷よね」そんな風に私が呟いていたのは日曜日、前日のベスト16のポルトガル戦で延長戦残り3分にゴールを決められ、敗退が決まったクロアチアのモドリッチが泣きじゃくっているシーンをニュースで見た時のことでした。いやあ、戦前にグループリーグを3分けで突破したポルトガルのフェルナンド・サントス監督が、「全部引き分けでユーロに優勝してもいい」なんて言っていたこともあって、どちらのチームも枠内シュートをまったく撃たないまま、試合が進むにつれ、この試合もスイスvsポーランド戦に倣って、とかく心臓に悪いPK戦に突入かと私も憂鬱になっていたんですけどね。 ▽それがまさか、同僚のクリスティアーノ・ロナウドのシュートはGKスバシッチ(モナコ)が弾いたものの、ちょうどいい位置に詰めていたクアレスマ(ベシクタシュ)に頭で押し込まれてしまうとは。いやあ、グループリーグではスペインを破っていた彼らが、こんなに早く帰国となってしまう辺り、さすがノックアウト方式。まあ、試合後にはペペもモドリッチを慰めに来てくれていましたし、レアル・マドリーのジダン監督としては、ウェールズも北アイルランドに勝ち、ドイツもスロバキアに勝ったため、ベイルとクロースがまだこの先、フランスに滞在しないといけないため、せめてスペイン戦は負傷欠場したモドリッチとコバチッチだけでも早く帰って来てくれるのは嬉しいかもしれません。 ▽え、それを言ったら、アトレティコのシメオネ監督も、こちらはプレシーズン開始が7月7日と妙に早いため、もちろんユーロやコパ・アメリカの決勝トーナメントまで進んだ選手たちはロス・アンヘレス・デ・サン・ラファエル(マドリッドから1時間の高原リゾート)での地獄のキャンプには参加できなくても、他のメンバーたちとあまり体力差をつけないため、いつまでの代表に拘束されているのは困るじゃないかって? ▽うーん、こちらについては先日、クロアチア代表の合宿中にメディカルチェックを済ませた右SB、ヴルサリコ(サッスオーロ)が早めの入団プレゼンとなるかもしれませんが、日曜にはアイルランド戦でグリースマンが大活躍。「アトレティコで1-0の試合は慣れているから」と、前半2分からポグバの与えたPKで敵にリードされていたのを後半13分、まずはヘッドで同点に。更にその3分後にも勝ち越しゴールを挙げて、フランスを勝利に導いてしまったから、感心したの何のって。 ▽ちょうど彼は先週、アトレティコとの契約を2021年まで延長し、破棄金額もオブラクと並んで1億ユーロ(約113億円)となって、そのお祝いもあったのかもしれませんけどね。実際、もうすでにサインしていていいフェルナンド・トーレスとの延長契約も2年目を条件付きのオプションするように内容が変わったとかで、まだ済んでないようですし、もう1人のCF獲得もジエゴ・コスタ(チェルシー)、イグアイン(ナポリ)、カバーニ(PSG)といった大物狙いのため、時間がかかる見込みだとか。だったら、せめてグリースマンだけでも来季も引き続きゴールを期待できるところを披露してくれているのは有難いんですが…いえ、もちろんフランスがイングランドもしくはアイスランドを破って、準決勝でコケとファンフランのいるスペインと当たった場合は別ですけどね。 ▽ただ、クロアチアに負けてグループ2位通過となり、決勝トーナメントではいわゆる、lado oscuro(ラードー・オスクーロ/ダークサイド)に落ちてしまったスペインにとって、準々決勝も相手はドイツとなってしまったため、準決勝云々は捕らぬ狸の皮算用もいいところで、まずは月曜のベスト16、イタリアに勝つことができるのかどうか。いやあ、グループリーグ3節が火曜だったため、体力回復には中5日と十分、時間があった彼らなんですけどね。その間、大西洋に浮かぶイル・ド・レ(レ島)でじっくり練習もできましたし、現在、チームにはケガ人もおらず。 ▽おまけにイタリアにはあとイエローカード1枚で出場停止となる選手が10人もいるのに比べ、スペインにはセルヒオ・ラモスしかいないため、厳しい接触プレーとかでは有利になるかもしれないんですが、ちょっと気になるのはサンドニのスタッド・ド・フランスで行われる試合ではアウェイチーム扱いの彼らが白い第2ユニフォームを着用するということ。というのもどうやら、この色、スペインにとってはあまりゲンが良くないようで、1994年のW杯では準々決勝のイタリア戦で敗退、2994年ユーロでもグループリーグ最終戦でポルトガルに負けて敗退、2014年のW杯に至っては初戦のオランダ戦で1-5と大敗を喫しているという、いわくつきだったから。 ▽まあ、色に関しては縁起が悪いぐらいで気にしなければいいんですが、それだけで済ませられない事実もあって、何とそのオランダ戦、次のチリ戦とW杯のグループリーグで2連敗した試合ではどちらのチームも5人DF制を敷いていたのだとか。そう、このユーロのコンテ監督率いるイタリアと同じです。しかもその核となる3人のCBボヌッチ、バルザーリ、キエッリーニ、いわゆるBBCとGKブッフォンはユベントスでずっと一緒にプレーしている仲に加えて、スペインのここまで3試合、ずっとCFを務めているモラタはこの2年間、彼らのお世話になっていたとなれば、もう欠点とか、バレバレじゃない? ▽おかげでここ数日、インタビューの受けまくりだったモラタも「Me han dicho que me ponga un casco para jugar contra ellos/メ・アン・ディッチョー・ケ・メ・ポンガ・ウン・カスコ・パラ・フガール・コントラ・エジョス(彼らと試合する時はヘルメットをかぶるようにって言われたよ)」なんて、冗談めかして話していた程なんですが、実際、別に彼がレアル・マドリーに戻ることが決まったからではないでしょうけど、バルザーリも「ピッチに友だちはいない」と断言していましたししね。ちなみにモラタによると、「3人のボスはボヌッチで、バルザーリは質の高さ、キエッリーニは強さが美点」なんだそうですが、ついでに彼らの弱点も見つけていることを祈るばかりです。 ▽え、そう言ったって、イタリアにもスペインに苦手意識があるんじゃないかって?そうですね、最近のことを考えると、2008年ユーロの準々決勝でのPK戦に始まり、2013年のコンフェデ杯準決勝でもPK戦で勝利、それどころか、2012年ユーロ決勝などでは4-0で圧勝していますからね。そう思うと相手もそれ程、強気にはなれないかと思いますが、こればっかりは何とも。 ▽そんなスペインにとって朗報なのはイタリアのcarrilero(カリレーロ/ウィングを兼ねたSB)の1人であるカンドレーバ(ラツィオ)のケガが治らず、相手のDF陣がベストメンバーを組めないことぐらいですが、クロアチア戦で負けたにも関わらず、当面のところ、デル・ボスケ監督にはスタメンをいじる予定はないよう。ええ、ペリシッチ(インテル)に決められた2点目のゴール時に自身のニアポストを守れなかったことに対し、批判を浴びたGKデ・ヘア(マンチェスター・ユナイテッド)もそのまま続投するようです。 ▽ちなみにここ数日、スポーツ紙のコラムなどを読んでいると、イタリアは闘争心の強いチームだから、アトレティコでそういう試合に慣れているコケを入れたいいのではなんていう意見もチラホラ。うーん、でも当人は「ボクはユース代表とアトレティコで育ってきたから、tengo esas dos filosofías asimiladas/テンゴ・エサス・ドス・フィロソフィアス・アシミラーダス(2つのサッカー哲学を習得しているよ)」とは言っているものの、大人の代表のティキタカ(短いパスを繋ぐバルサ風サッカーのこと)に合わせるのはかなり難易度が高いですからね。 ▽とりあえず、月曜午後6時(日本時間翌午前1時)からの試合では、グループリーグのトルコ戦では相手を圧倒した選手たちを信頼しかありませんが…何となく、またゴールがあまり入らないゲームになりそうな。そうそう、元々、成功率の低いスペインですから、普通のPKでの得点はあまり期待していないんですが、きっとPK戦になったら、CLバイエルン戦で天高く撃ち上げた後、夏のユーロではパネンカ風のキックを決めたセルヒオ・ラモスは、きっと名誉挽回してくれると思いますよ。 <hr>【マドリッド通信員】 原ゆみこ 南米旅行に行きたくてスペイン語を始めたが、語学留学以来スペインにはまって渡西を繰り返す。遊学4回目ながらサッカーに目覚めたのは2002年のW杯からという新米ファン。ワイン、生ハム、チーズが大好きで近所のタパス・バルの常連。今はスペイン人親父とバルでレアル・マドリーを応援している。 2016.06.27 22:28 Mon
twitterfacebook
thumb

【東本貢司のFCUK!】歴史的事件、また歴史的事件

▽ユーロ2016本大会・グループリーグでどこかまどろっこしい印象を残した優勝候補トップ3が、この日曜日に揃って貫禄の快勝。特にフランスとベルギーは、それぞれ要の小兵スーパーエース、グリーズマンとアザールが目の覚めるような本領発揮で、地元ファンの枠を超えて大いにその存在を示した。締めくくりのマルセイユでは、敗れたハンガリーのサポーターまでアザールに盛大な喝采を送っていたほどだ。FCUKの管理人としても、プレミア所属のスターが大半を占めるベルギーの覚醒は小躍りするほど嬉しい。あゝ、でも次はウェールズと当たるのか。なんたる皮肉なめぐり合わせ。そしてイングランドは明日のアイスランド戦に勝てば、雨降って(アイルランドに早々の失点を許した)地固まったフランスと。詮無いことだが、この4チームのラスト4が見たかったところだが・・・・。 ▽アイルランドも健闘した。もうダメかと肩を落としかけたグループリーグ最終戦で起死回生のイタリア撃破(1994年W杯グループリーグの興奮をつい思い出す)。そして今、タレント有り余るホスト国をも立派に苦しめた。Hail to the Irish spirit! そう、北アイルランドだってウェールズとほぼ互角に渡り合った。コールマン(ウェールズ監督)が「内容ではうちが負けていた」とお世辞抜きに認めたほどに。さて、お気づきだったろうか。ウェールズ-北アイルランド戦を仕切った審判団が「イングランドのセット」だったことを。たまたまだったのか? いや、あえて粋な計らいだったと決めつけさせてもらおう。なぜなら、もしグループBの一位が入れ替わっていたら、北アイルランドの相手はイングランドになっていたはずなのだから。かくてあの日、パルク・デ・プランスがほぼ何から何までが「UKカラー」で染められていたという、歴史的事件が紡がれたのである。 ▽それはもう、いとおしくも、身を切られるような2時間余だった。文句なしに今大会有数のハイライトマッチ。明日のイタリア-スペイン戦なんて目じゃないぜ! しかも、あゝなんという劇的でほろ苦い幕切れの余韻。だからこそ、「北」の大黒柱、ギャレス・マコーリーを責める人などどこにもいない。なんとなれば、彼は敵方の大黒柱、もうひとりのギャレスの、渾身のクロスに真っ向から立ち向かった結果だったのだ。カスカートでもジョニー・エヴァンズでもなく、そこにいたのがマコーリーだったことをむしろ誇りに思うべきなのだ。負けては何もならない、などと今更言うなかれ。そう、多分人生最高のスーパーバイシクルゴールを決めながら、よりにもよって“理不尽”極まりないPK戦に屈してフランスを後にするシャチリの胸の内を思うべし。シャチリもプレミアなら、唯一PKを外す不運に身を焦がしたのも、アーセナル入りが決まっているジャカだったのだから。 ▽FCUK流の想いはさらに天を駆ける。ウェールズ-北アイルランド戦と相前後して、あの歴史的国民投票の一部始終がニュースソースを席捲していた。思い出していただきたい。「残留か離脱か」を問う国民投票の帰趨を示したブリテン島/アイルランド島の、あまりにもシンボリックな地図を。あくまでも“大勢”としての色分けだとしても、そこにはくっきりと、今回のユーロにつながる不思議な縁故が映し出されていたではないか。すなわち、英国圏勢で唯一ユーロ本大会出場を逃したスコットランドと、敢然とEU離脱にほぼ心を一つにしたスコットランド。実際の関連など何もない。ただの偶然。それでも、筆者の埒もない夢想は直ちに明快な形をとってしまっていた。さて、果たして「どちらが勝ち」なのか。いや「何が勝ち」なのか。どうです、皆さん。いずれ、このEU脱退はUK、特にイングランドのフットボール界にも余波が及んでくるはず。だとすれば、もしもスコットランド独立(=単独EU加盟)が成った日には、外国人流入の潮目が変わるのかも? ▽すると、例えば、「今の内に」の機運が一気に燃え上がるかもしれない。「2年」が過ぎるまでに、プレミアのクラブ、プレミア昇格を目指すクラブは、先を争って、即戦力か否かを問わず、これまで以上に異邦の助っ人獲得の拍車をかけるかもしれない。一方で、高騰必至の“資金”調達を旨に、海外からのミリオネア・オーナーシップが、これから激増するかもしれない。いや、それとも・・・・イングランドはこの“孤立”を時代の運命と見切り、国産の才能発掘・開発に向かっていくかもしれない。ならば、ひょっとしたら、今大会のイングランド代表の成果、成績が、その追い風になる、はたまた「しばらくの様子見」に腰を落とす・・・・いずれかの道を占う歴史的な「事実」として刻まれていく可能性なきにしもあらず。さあて、大会終了後に一体何が起きて何が起きないのか。個人的“妄想”の中に浮かび上がる名前は・・・・ミリク、ペリシッチ、ゾマー、コノプリャンカ、ナジ、コマン、バチュアイ、それにもちろんグリーズマン・・・・。この中に「当たり」はあるだろうか。 <hr>【東本 貢司(ひがしもと こうじ)】 1953年大阪府生まれ 青春期をイングランド、バースのパブリックスクールで送る。作家、翻訳家、コメンテイター。勝ち負け度外視、ひたすらフットボール(と音楽とミステリー)への熱いハートにこだわる。 2016.06.27 22:00 Mon
twitterfacebook
thumb

【編集部コラム】英国のEU離脱が生み出すプレミアリーグへの影響は?

▽23日、英国で行われた国民投票の結果、EU(欧州連合)からの離脱派が残留派を上回る結果となった。今後、英国はEU離脱への動きを見せることになる。欧州のみならず世界経済に大きな影響を及ぼす大きな決定となった今回の英国国民投票の結果だが、EU離脱となればサッカー界にとっても他人事ではなく、大きな影響を受けることになるだろう。 <B>◆世界最大のマーケットとなっているプレミアリーグ</B> <div style="text-align:center;"><img src="http://ultra-soccer.jp/division_image/TOP/get20160626_29_1.jpg" style="max-width: 100%;"></div><div style="text-align:right;font-size:x-small;">Getty Images<hr></div>▽御存知の通り、英国はイングランド、スコットランド、北アイルランド、ウェールズで成り立っている。イングランド、ウェールズのクラブで構成されているプレミアリーグは、欧州各国リーグの中でも、大きなマーケットとなっている。 ▽選手の移籍金の高騰、放映権の高騰は近年の動きを見ても明らかであり、リーグ全体として見れば、リーガエスパニョーラ(スペイン)、ブンデスリーガ(ドイツ)、セリエA(イタリア)などとも、ビジネス面では一線を画している。さらに、アジアやアメリカの投資家がクラブのオーナーになったり、または買収に動いていることからも、経済的な側面で大きな注目を集めている。 <B>◆厳しいビザの条件がネックに?</B> <div style="text-align:center;"><img src="http://ultra-soccer.jp/division_image/TOP/get20160626_30_1.jpg" style="max-width: 100%;"></div><div style="text-align:right;font-size:x-small;">Getty Images<hr></div>▽EU離脱となった場合、最も影響を受けるのは選手となるだろう。プレミアリーグでは、EU加盟国の選手は外国人選手とみなしていない。一方で、レスター・シティの日本代表FW岡崎慎司やサウサンプトンのDF吉田麻也などのアジア人やEUのパスポートを持たないアフリカ人など、EU圏外の選手がプレーするには大きな障壁がある。 ▽外国人選手は労働ビザが求められ、その条件として「直近2年間の国際Aマッチに75%以上出場」というものがある。さらに、自国がFIFAランキング70位以内の国でなければならないという条件がついている。 <B>◆外国人だらけのプレミアリーグ</B> <div style="text-align:center;"><img src="http://ultra-soccer.jp/division_image/TOP/get20160626_31_1.jpg" style="max-width: 100%;"></div><div style="text-align:right;font-size:x-small;">Getty Images<hr></div>▽また、現在のプレミアリーグは外国人選手で溢れている。イングランド、スコットランド、ウェールズ、北アイルランドと英国の選手を除いた場合、2015-16シーズンのプレミアリーグには595人の選手が登録されていたが、そのうちの384名が英国以外の選手となっている。実に65.2%を占めることとなる。 ▽今回のEU離脱により、これらの選手が全て外国人選手となるのであれば、現状の規則では上記のビザの条件をクリアしなければならなくなる。各国の代表選手として活躍している選手であれば問題ないが、代表招集経験がない若手の有望株や、代表歴が浅い外国人選手は、プレミアリーグでのプレーが難しくなる。 <B>◆移籍市場でも苦しむ可能性が</B> <div style="text-align:center;"><img src="http://ultra-soccer.jp/division_image/TOP/get20160626_32_1.jpg" style="max-width: 100%;"></div><div style="text-align:right;font-size:x-small;">Getty Images<hr></div>▽もう1つの懸念は、移籍市場でのお金の動きだ。EUに加盟していながら、英国ではポンド通貨を使用し、その他のEU加盟国はユーロ通貨を使用している。6月26日時点で、1ユーロをポンドに換算すると0.81ポンドとなる。ちなみに、1年前であれば1ユーロは0.71ポンドであったため、0.1ポンドあがったことになる。 ▽つまり、1000万ユーロの移籍金が必要な選手を獲得する場合、昨夏の移籍市場であれば、710万ポンドの支払いだったが、現時点では810万ポンドが必要となり、100万ポンドの差が生まれている。EU離脱となれば、今後はこの動きが加速する可能性があるため、選手獲得の動きが鈍る可能性も出てくるだろう。また、これまでは少なかった英国人の海外流出も増えるかもしれない。 <B>◆デメリットだけではない?</B> <div style="text-align:center;"><img src="http://ultra-soccer.jp/division_image/TOP/get20160626_33_1.jpg" style="max-width: 100%;"></div><div style="text-align:right;font-size:x-small;">Getty Images<hr></div>▽ここまでは、EU離脱に対するデメリットを挙げてきた。サッカー界に限らず、今回の意思決定は大きなデメリットを生むことは間違いないだろう。ただし、考え方を変えれば、プラスに転じる可能性もある。 ▽例えば、ビザの条件が厳しいということは、獲得する選手は各国の代表チームでの主力選手となる。現在のプレミアリーグに外国人枠は存在していないため、この先はより実力のある選手だけが集まるリーグになる可能性がある。 ▽また、英国選手の底上げも期待できるだろう。有望な若手選手が、英国以外の選手にポジションを奪われ、出場機会が減っている現状を嘆く声は数年前から聞こえている。しかし、英国以外の選手が淘汰されていけば、若手にもチャンスが生まれ、ホームグロウン制度を満たすための飼い殺し状態も減るだろう。 ▽今回のユーロでも出場した英国の3チームが全てベスト16に進出している。出場枠が拡大された影響もあるが、それでもオランダは出場していない。つまり、英国人のレベルが上がりつつある傾向と捉えても良いだろう。彼らが今以上にプレミアリーグで活躍する可能性も考えられる。 <B>◆協会やリーグの対応が待たれる</B> ▽今回の国民投票の結果を受け、プレミアリーグやサッカー協会は特別な動きを見せていない。しかし、数年後にEU離脱が実現するとなれば、現行のレギュレーションが変更される可能性は高い。 ▽国民が選択した結果に対し、時間が経つにつれて新たな考えが生まれ、他国にも影響がではじめようとしている。いみじくも、EU離脱派が多かったウェールズと、残留派が多かった北アイルランドがユーロ2016の決勝トーナメント1回戦で相見え、国民投票と同様に離脱派のウェールズが1-0で北アイルランドを下した。今後のリーグや協会、さらにはUEFA(欧州サッカー連盟)がどのような動きを見せるのか、見守る必要がありそうだ。 《超ワールドサッカー編集部・菅野剛史》 2016.06.26 20:30 Sun
twitterfacebook

アクセスランキング

新着ニュース