【原ゆみこのマドリッド】上司が変われば気分も変わる…2016.01.09 08:00 Sat

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▽「いい時期ではあるわよね」そんな風に私が納得していたのは金曜日、いよいよジダン新監督の初戦が翌日に迫っているのに気づいた時のことでした。いやあ、今週は月曜にレアル・マドリーの指揮官交代があったため、こちらも何やらバタバタして過ごすことになったんですが、幸いだったのは彼らにはミッドウィークにコパ・デル・レイの試合がなかったこと。それも12月にカディス(2部B)との32強対決1stレグでチェリシェフのalineracion indebida(アリネラシオン・インデビダ/出場資格のない選手の起用)が発覚し、大会敗退となったせいですが、うっかり16強対決が予定されてでもいたら、新監督も落ち着いて準備を進める時間がなかったのでは?

▽おかげで日曜にバレンシア戦で引き分けた翌日夕方遅く、ベニテス監督の解任がクラブの理事会で決定。同時に後任監督としてジダンの名前が、ほんの3週間程前には「ベニテス監督はチームの問題の解決策。Zidane no sustituirá a Benítez/ジアン・ノー・ススティトゥイラ・ア・ベニテス(ジダンがベニテス監督を引く継ぐことはない)」と断言していたペレス会長により、サンティアゴ・ベルナベウで発表され、その時は当人も「タイトルと獲るために全力を尽くす」といったシンプルなコメントだけで、あとは奥さんとマドリーのカンテラ(下部組織)でプレーする4人の息子さんたちと一緒に檀上でポーズするぐらいで良かったんですけどね。

▽翌火曜にはちょうど、レジェス・マゴス(東方の三賢人の祝日、スペインでは伝統的に子供たちがプレゼントをもらえる日となっている)を控え、ファンサービスとして1年に1回の恒例となっている公開練習に挑み、駆けつけたサポーター約7000人から拍手を浴びた後、RMカスティージャ(マドリーのBチーム)監督となって1年目だった昨季は忌避しながらも、今季から行うようになった監督記者会見に初めてトップチームの指揮官として登場することに。ええ、今度はサンティアゴ・ベルナベウのプレス・コンファレンスルームで行われたこちらでは、今後のチーム運営について事細かに質問に答えていましたっけ。

▽曰く、「マドリーで大切なのは美しいサッカー。自分もそれを目指す。Fútbol ofensivo y equilibrado/フトボル・オフェンシボ・イ・エキリブラード(攻撃的でバランスの取れたサッカーをね)」から始まって、「Quiero darle mi toque personal, un toque ofensivo/キエロ・ダールレ・ミ・トケ・ペルソナル、ウン・トケ・オフェンシーボ(自分の個人的なタッチも加えたい。攻撃的なニュアンスをね)」とか、BBC(ベイル、ベンゼマ、クリスチアーノ・ロナウドの頭文字)については「la idea es clara, jugar con los tres/ラ・イデア・エス・クラーラ、フガール・コン・ロス・トレス(3人を使ってプレーするというアイデアははっきりしている)」、更には「Ganarlo todo/ガナールロ・トードー(全てを勝ち獲ること)。ウチには獲得できるタイトルが2つあるから、それにトライする」と、今季の目標なども話していましたが、何にしてもチームには才能ある選手が揃っていますからね。

▽あまり、やろうとしていることはペレス会長任期中の12年間で10番目の監督となった彼も変わらないような気はしますが、そこは実働グループのやる気次第。今季、大勢が慕っていたアンチェロッティ監督がいなくなり、実務肌のベニテス監督とはフィーリングが合わなかった彼らのハートを掴むことができれば、まだシーズンは半分残っていますし、どんなことでも可能かと。ええ、もちろん失格となったコパ・デル・レイだけは別ですけどね。

▽え、そんなお隣さんを尻目に今季も手近なタイトルとしてまず、コパ優勝を目指しているアトレティコは試合があったんだろうって? その通り、今週は月曜にクラネビテル(リーベル・プレートから移籍)、火曜にアウグスト(セルタから移籍)の入団プレゼンをひっそりビセンテ・カルデロンで行った後、水曜に彼らはコパ・ダービーとなった16強対決1stレグでまたしてもエスタディオ・デ・ラス・バジェカスに乗り込んだんですが、いえ、もちろん昨今の試合展開から楽勝なんてまったく予想はしていなかったんですけどね。昨年末最後のリーガでの対戦を思い出しても苦戦することは目に見えていたんですが、そこへ加えて、シメオネ監督が最初のレウス(2部B)戦同様、オブラク、ゴディン、ファンフラン、フィリペ・ルイス、コケ、グリースマンらにお休みを与え、コパ用イレブンを投入したから、もう大変だったの何のって。

▽実際、その日のバジェカスはスタンドも半分ぐらいしか埋まらず、ラージョの方もリーガとは違うスタメンだったんですが、アトレティコではここ2試合、大活躍をして株が上がり、クラネビテルとアウグストをダブルボランチで早速デビューさせたため、トップ下の大役を仰せつかったトマスがちょっと上づってしまったんですかね。どちらもなかなか点の取れない展開でしたが34分、自陣エリア前からクリアしたボールをナチョの正面に送ってしまい、そのミドルシュートで先制されてしまったから、まったくツイてない。ええ、これにはシメオネ監督も「es un chico joven y hay que llevarlo sin la ansiedad de estos últimos días en el entorno de él/エス・ウン・チコ・ホベン・イ・アイ・ケ・ジェバールロ・シン・ラ・アンシエダッド・デ・エストス・ウルティモス・ディアス・エン・エル・エントルノ・デ・エル(彼は若いんだから、ここ数日のように周囲が焦らせることなく、育てていかないといけない)」とフォローするしかありません。

▽それでもまあ、0-1なら来週、ホームでの2ndレグもありますし、真っ青になる程のこともなかったんですが、このところ早めの交代で味をしめたシメオネ監督は後半10分には近頃、あまりいいところを見せてくれないオリベルとアウグストを引っ込め、サウルとビエットを入れる攻撃的メンバーチェンジを実施。するとこれが見事に当たり、21分には右サイドからキニを振り切ってビエットが入れたラストパスにサウルが反応、エリア内からシュートを決めて同点にしてくれたから、何とも有難いっちゃありません。いえ、2年前、レンタルでラージョに修行に来ていた当人は遠慮して、大袈裟にゴールを祝うことはしませんでしたけどね。

▽「El chico que vieron crecer en Vallecas sigue creciendo/エル・チコ・ケ・ビエロン・クレセル・エン・バジェカス・シケ・クレシエンドー(バジェカスで成長するところを見せた選手は成長し続けている)」(サウル)と後で言っていたように、こういうのこそが最高の恩返しなんでしょうが、ラージョのパコ・ヘメス監督にとってはまさに痛し痒しだったかも。それでも幸い、34分にはCKからビエットが放った至近距離のシュートはGKファン・カルロスのparadon(パラドン/スーパーセーブ)とゴールポストに阻まれて決まらず。

▽おかげでラージョは1-1のままで2ndレグを迎えられることになり、その日は2-2で引き分けたリーガ前節のレアル・ソシエダ戦の後、「ウチは1部のチームじゃない」というコメントから、「No son de Primera, sino de 'Champions'/ノー・ソン・デ・プリメーラ、シノ・デ・チャンピオンズ(1部ではなく、CLにいるチーム)」と、ヘメス監督も自軍を大幅に格上げしていたものの、点を取ることは苦手でも、基本的に守りは超一流のアトレティコが2ndレグでは0-0でもいいとなると、見通しはあまり芳しくないでしょうね。

▽ただラージョにとって、もっと重要なのは週末のリーガ戦、土曜にレバンテのホームを訪れる試合で勝つことで、何せこのところ、降格圏の19位が定位置になってしまっていますからね。相手は最下位ですが、コパにはすでに敗退していて今週ヒマだった上、前節では兄貴分のアトレティコが終盤にトマスのゴールが決まるまで勝負を決められなかったという例もあるため、心してかかる必要があるかと。実際、残留ゾーンまではたった勝ち点2差しかないので、シーズンの前半終了戦でもある、この19節では不名誉な順位から脱出できたらいいのですが。

▽そしてアトレティコは日曜午後8時半(日本時間翌午前4時半)から、やはりアウェイでセルタ戦なんですが、こちらの目標は現在、2位バルサと勝ち点差2、3位マドリーと同4ある首位の維持と極めて贅沢なもの。もちろん試合消化数が1つ少ないバルサがクラブ・ワールドカップのせいで延期したスポルティング戦を2月に済ませた後どころか、1月30日の直接対決でカンプ・ノウに乗り込めば、簡単に転落してしまうのかもしれませんが、まあ、それまではねえ。金曜からは大雨が続き、バライドス(セルタのホーム)周辺が浸水しているなんて心配な情報もあるものの、アウグストもマハダオンダ(マドリッド近郊)でのセッションでは先発組に抜擢され、忘れ物も取りに行ける早々の古巣訪問を心待ちにしているはずですし、いつものように少ない得点をガッチリ守って勝ち点3に変えられればと思います。

▽一方、そんなセルタも今週木曜はコパでカディスと当たり、リーガ5位の実力相応で0-3と快勝。マドリーが失格になった恩恵を受けているんですが、そのマドリーがこの土曜の午後8時半(日本時間翌午前4時半)に対戦するデポルティボは水曜にミランデス(2部)とのコパで1-1の引き分け。あまりないことですが、相手の方が休息期間が短いのはジダン新監督にとって、有利に働くかもしれません。加えてサンティアゴ・ベルナベウでの試合とあって、ファンに絶大な人気を誇る彼がベンチで指揮を執れば、これまでのようにpito(ピト/ブーイング)が聞こえることもなく、スタンドと一体になって勝利を目指すことができる?

▽それには現役時代はマドリーで長くプレーしたビクトル監督も、「el principal cambio será en el plus de ilusión que tiene la gente/エル・プリンシパル・カンビオ・セラ・エン・エル・プルス・デ・イルシオン・ケ・ティエネ・ラ・ヘンテ(最大の変化は人々により大きな夢を抱かせること)」と用心していましたが、新監督の幸運は他にもあって、とうとうカルバハルも回復し、この試合前にチームの負傷休場者がゼロに。いえ、バレンシア戦でレッドカードをもらって退場したコバチッチだけは処分で出られませんけどね。

▽金曜の前日練習からは、BBCにイスコ、そしてモドリッチ、クロースという、アンチェロッティ前監督が好んだ布陣、ついでに言うなら、昨年のクラシコ(伝統の一戦、マドリーvsバルサ戦のこと)で0-4と惨敗した時のスタメンからハメス・ロドリゲスを除いただけ、とはいえ、十二分に攻撃的なものが予想されていますが、当時はベンゼマとベイルが負傷明けだったのに比べ、今は2人とも好調を維持しているのは好材料になるかと。何せ、昨年12月にはカンプ・ノウでバルサから引き分けをもぎ取ったデポルティボですが、ここ2試合はリーガで白星がなく、順位も7位と少々、調子を落としていますしね。順当に行けば、マドリーが勝つんじゃないかと思いますが、注目はプレーでファンをさせることができるかどうかになりそうです。

▽そしてもう1つの弟分、コパはラージョに及ばず敗退となり、肩の荷が下りているヘタフェは日曜にセビージャとのコパ・ダービーに0-2で負けているベティスと対戦するんですが、実は彼らは月曜の前節スポルティング戦に2-1と逆転勝利を収め、現在は13位と比較的落ち着いた順位に。相手も同じ勝ち点で14位ですから、実力の拮抗した、いい試合になりそうな気配はあります。そうそう、折しも木曜には今季シーズン後半のアボノ(年間指定席)を80ユーロ(約1万円)という爆安値段で売り出したヘタフェですが、そのホーム11試合にはこのベティス戦も含まれているとか。マドリーやアトレティコ戦もこれからあることですし、ようやく今年になってブカネーロ(ラージョの過激なサポーター集団)がストを止め、応援を再開したバジェカス同様、いつもガラガラなコリセウム・アルフォンソ・ペレスもその恩恵でもう少し、賑やかになってくれるといいですよね。

【マドリッド通信員】
原ゆみこ
南米旅行に行きたくてスペイン語を始めたが、語学留学以来スペインにはまって渡西を繰り返す。遊学4回目ながらサッカーに目覚めたのは2002年のW杯からという新米ファン。ワイン、生ハム、チーズが大好きで近所のタパス・バルの常連。今はスペイン人親父とバルでレアル・マドリーを応援している

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【原ゆみこのマドリッド】一応、CLの順位は上だけど…

▽「今のやつの方が好きかな」そんな風に私が感じていたのは金曜日、来季からアトレティコがホームとするペイネタ・スタジアムの正式名称がワンダ・メトロポリターノになったと発表されたプレゼンで、同時にクラブのエスクード(紋章)もリニューアルされると知った時のことでした(http://www.atleticodemadrid.com/noticias/el-escudo-evoluciona-para-la-temporada-2017-18)。いやあ、このチームカラーの赤白ストライプをメインにマドリッドの象徴であるoso(オソ/熊)がmadrono(マドローニョ/ヤマモモの木)に乗りかかっている図柄が左上に入っているデザインは、今年も回りの黄色い縁取りを取ったとかで、細々とは変わっているんですが、基本は1947年から大体同じ。 ▽それが何故か、いきなり熊の向きが反対になったかと思いきや、アクセントになっていた木の葉の緑部分まで青くなったせいで、どこか茫洋としてしまった感は否めませんが、まあ、慣れの問題でしょうかね。逆にスタジアム名は、スポンサーの中国企業の名前はお約束で仕方ありませんが、ビセンテ・カルデロンができる前、19955年から1964年まで使っていたメトロポリターノを入れたため、プレゼンに出席したフェルナンド・トーレスが契約更新の希望を込めて、「いつか祖父に『ボクもメトロポリターノでプレーした』って言えるかも」と話していたように、年期の入ったファンの心はもちろん、若いファンの耳にもそこそこ恰好良く響くのではないかと思ってしまうのは私だけ? ▽いえ、だからって、「En 24 años que tengo sólo conocí un escudo y un estadio del Atlético de Madrid/エン・ベインテクアトロ・アーニョス・ケ・テンゴオ・ソロ・コノシ・ウン・エスクード・イ・ウン・エスタディオ・デル・アトレティコ・デ・マドリッド(24歳のボクはアトレティコの紋章もスタジアムも1つしか知らない)」と言っていたコケが、「悲しいけど満足もできる。だって、ボクらがサッカーで到達したレベルと同様、他の全ての面でもクラブが世界的なレベルになってきたってことだから」という意見には、諸手を挙げて賛成する気にはなりませんけどね。 ▽というのも、今のところ、新スタジアムには最寄りにメトロ(地下鉄)の駅がなく、セルカニアス(国鉄近郊路線)の駅からかなり歩かないといけないことや、来季の開幕から2試合は準備が間に合うかどうか不明で、LEP(スペイン・プロリーガ協会)にアウェイ戦にしてくれるよう頼んだりしているのはともかく、最近の彼らはそんなにサッカーの面で成長したところを見せているとは言い難くなってきているからですが、やっぱり一番わかっているのは最後にコメントしたシメオネ監督。曰く、「新スタジアムについてはもう言い尽くした。Ahora hay que ganar el domingo/アオラ・アイ・ケ・ガナール・エル・ドミンゴ(今は日曜に勝たないといけない)」ということで、本質はその通りですから、次のビジャレアル戦は月曜なんだがというツッコミはなしにしましょうね。 ▽ちなみにどうしてまた、私がアトレティコのサッカーに疑問を抱いてしまったのかというと、もちろん今週あったCLグループリーグ最終節、バイエルン戦のせいで、いえ、前半27分にレバンドフスキにFKを決められ、そのまま1-0で負けてしまったのは、すでに首位突破は確定していましたし、6戦全勝チームはCL優勝したことがないというジンクスもあるため、別にいいんですけどね。点が取れそうなチャンスは前半15分までにカラスコがGKノイアーに弾かれた2本のシュートぐらいで、それ以降は向こうも本気でなかったにも関わらず、バイエルンの独壇場。「Todos hemos estado atras ayudando a defender/トードス・エモス・エスタードー・アトラス・アジュダンドー・ア・デフェンデール(ボクらは皆、下がって、守備に協力していた)」(グリースマン)という状態だったなれば、どんなにこちらのフラストレーションが溜まったことか。 ▽それでも終盤には少しは反撃を仕掛けたため、シメオネ監督は「Me quedo con los ultimos quince minutos, donde el Atletico volvio a ser lo que debe ser/メ・ケド・コン・ロス・ウルティモス・キンセ・ミヌートス、ドンデ・エル・アトレティコ・ボルビオ・ア・セル・ロ・ケ・デベ・セル(自分は最後の15分間が気に入った。アトレティコがそうでなければいけない姿に戻ったからね)」と満足を示していましたが、いや、ノイアーの純白のユニフォームは最後までまったく汚れてなかったですよ。おまけに先週末のエスパニョール戦同様、それどころか、マイナス4度でもっと寒かったアリアンツ・アレナでは尚一層、3本とパスが続かないのを見せられれば、たとえこのグループリーグ、6試合で32チーム随一のチーム走行距離703キロを記録したと聞いても、「そりゃあ、ミスパスであれだけボールを取り戻すのに駆け回っていればねえ」と思ってしまう私はもしや意地悪? ▽いやあ、敵方のアンチェロッティ監督など、気の毒に思ったのか、「Este Atleti tiene ahora mas calidad/エステ・アトレティ・ティエネ・アオラ・マス・カリダッド(今のアトレティコはより高い質を持っている)」と褒めてくれていましたけどね。丁度、その試合の直前には、これもアトレティコのカンテラーノ(下部組織出身の選手)故の間の悪さなのでしょうか。2012年にボルシア・メンヘングラッドバッハに移籍したCBドミンゲスが背中の負傷がずっと治らず、「A nadie le gustaría ser un inválido con 27 años/ア・ナディエ・レ・グスタリア・セル・ウン・インバリドー・コン・ベインテイシエテ・アーニョス(誰だって27歳で障がい者にはなりたくない)」と自身のSNSで引退を発表。それに選手たちもショックを受けてしまったのかもしれませんが、当のメンヘングラッドバッハも同日、カンプ・ノウでアルダ・トゥランにハットトリックを決められたりして、4-0でバルサに惨敗していましたからね。 ▽実際、この最終節で勝っても負けても火曜組のスペイン勢が来週月曜のCLベスト16組み合わせ抽選でシードチームとなるのは決まっていたため、ルイス・エンリケ監督も「seguro que nos tocara el mejor o el que mas puntos lleve/セグロ・ケ・ノス・トカラ・エル・メホール・オ・エル・ケ・マス・プントス・ジェベ(きっとウチは一番のチームが最も勝ち点の多いチームと当たるだろう)」と言っていた通り、バルサにはバイエルンやPSGといった強豪を引き当ててもらいたいものですが、何にせよ、決勝トーンメントは2月後半の話。 ▽今はむしろ、これでまたグリースマンのノーゴール時間が700分近くに伸びてしまったことや、せっかく先発に抜擢されながら、今回もガイタンは実力を見せることができなかったことなどが心配なんですが、さて。木曜にヨーロッパリーグのステアウア戦に2-1と勝って、グループ突破を決めたビジャレアルとの月曜午後8時45分(日本時間翌午前4時45分)からの試合に向けての数少ない、いいニュースは、フィリペ・ルイスは太もものケガが再発して年内はプレーできなくなってしまったものの、バイエルン戦で左SBを務めたルーカスが大いに信頼できることが再確認できたことでしょうか。 ▽そして翌水曜はサンティアゴ・ベルナベウに足を運んだ私でしたが、こちらはレアル・マドリーの1位がまだ確定していなかったせいで、fond sur/フォンド・スール(南側ゴール裏スタンド)には華々しい垂れ幕も現れ、前日よりは両チームにも緊張感があったんですが、前半28分にはカルバハル、後半8分には久々に先発に復帰したハメス・ロドリゲスからのクロスでベンゼマが2得点。もうそれでマドリーが逆転首位で終わるかと思われたんですけどね。香川真司選手は負傷で来ていなかったものの、相手が近年、マドリーと撃ち合いを演じてきたドルトムンドだったのが災いしました。 ▽そう、それまでも攻撃の回数では決して負けていなかった彼らは後半15分、シュメルツァーのパスを、「マドリーでいつかプレーすると祖父と約束した」というオーバメヤングがゴールにして、ペレス会長に猛アピール。これで1点を返すと、トゥーヘル監督は風邪気味だったロイスと若いエムレ・モレを投入して更に畳みかけることに。時間はかかりましたが、43分にはこの交代が功を奏して、今度はオーバメヤングのアシストからロイスが押し込み、とうとう同点になってしまったのですから、スタンドもガッカリしたの何のって。ええ、これでマドリーはまた2位に逆戻りです。 ▽結局、その日はロスタイムにセルヒオ・ラモスの奇跡のremontada(レモンターダ/逆転劇)弾も生まれず、試合は2-2の引き分けで終了。うーん、終盤の失点をマルセロなどは「el empate final ha sido mala suerte/エル・エンパテ・フィナル・ア・シードー・マラ・スエルテ(最後に引き分けになったのは運が悪かった)」と言っていましたが、いえいえ。それでもジダン監督は34試合連続無敗というクラブ記録に並びましたし、何せ、今季は2位終了チームに強豪が少なくないという特殊な状況にありますからね。同日、リヨンとスコアレスドローに持ち込んで、やはり2位で突破したセビージャもそうですが、アーセナルはともかく、レスター・シティやモナコ、ナポリなら十分、ベスト16で勝ち目があるかと。 ▽ちなみにジダン監督の当たりたくない相手はユベントスなんですが、ファン的にはようやくこの日の試合で今季不調の汚名を払拭したベンゼマと、かつて彼とCFの座を争ったイグアインの元同僚対決なんか興味が持てますし、ケガが治ってドルトムンド戦に途中出場したモラタも2年間、お世話になった修行先の先輩たちに自身の成長を見てもらいたいことでしょうしね。そう思えば、結構、悪くないカードでは?ただ、その対戦相手が決まる前に彼らにも、クラブW杯のために日本に発つ前日の土曜、年内最後となるリーガ戦が控えています。 ▽え、相手は16位のデポルティボなんだから、ジダン監督が連続無敗の新記録を達成するどころか、かなりの可能性でgleada(ゴレアダ/ゴールラッシュ)が期待できるんじゃないかって?いやあ、それが前節のデポルティボはレアル・ソシエダ相手に5-1と大勝をしていて、月曜のオープン放送枠だったため、TVを横目で見ていた私も呆気に取られた程の景気の良さ。それでもチーム力に自信を持つジダン監督は金曜日、クリスチアーノ・ロナウド、ベンゼマ、モドリッチに休養を与えるため、招集リストに加えないことにしたから、驚いたの何のって。 ▽いえ、確かに2位のバルサと勝ち点差6というのは余裕ですし、日本までの長距離移動をした後、来週木曜には準決勝、日曜には決勝を戦って、CL、UEFAスーパーカップに続く、今年3つ目のタイトル獲得を目指しているマドリーにしてみれば、とりわけドルトムンド戦で冴えが見えなかったロナウドとモドリッチにはエネルギー満タンでいてもらいたいところでしょうけどね。クロースが中足骨の骨折から早期回復、カセミロも徐々にリズムを取り戻してきている上、コバチッチやイスコ、ルーカス・バスケスらも出場すれば、高いレベルで仕事をするため、BBC(ベイル、ベンゼマ、ロナウドの頭文字)抜きでも不安はないんでしょうが…それにつけても世の中は不公平。 ▽だって、昇格したばかりの少ない予算で選手をかき集めながら、マドリッドの新弟分、レガネスなど、この土曜のラス・パルマス戦でも負傷欠場者が8人もいるんですよ。現在、順位は15位ですが、降格圏との差もいよいよ勝ち点2となって、お尻に火がついている状態なんですが、こればっかりはねえ。先週末のビジャレアル戦は緊急補強のGKエレリン(アスレティックからレンタル移籍)が活躍して、0-0で乗り切ったものの、果たして今度は得点の方まで手が回るかどうか。マドリーとその来年に持ち越される16節の相手のバレンシア以外、年内のリーガはあと2試合。ここで勝ち点を溜められるかどうかで、クリスマスのシャンパンの味も変わってきますから、レガネスの選手たちも頑張れるといいのですが…。<hr>【マドリッド通信員】 原ゆみこ 南米旅行に行きたくてスペイン語を始めたが、語学留学以来スペインにはまって渡西を繰り返す。遊学4回目ながらサッカーに目覚めたのは2002年のW杯からという新米ファン。ワイン、生ハム、チーズが大好きで近所のタパス・バルの常連。今はスペイン人親父とバルでレアル・マドリーを応援している。 2016.12.10 10:23 Sat
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【六川亨の日本サッカー見聞録】クラブW杯初戦のMVP永木は当然の選出だった

▽昨日8日に開幕したFIFAクラブW杯の準々決勝プレーオフで、開催国枠出場の鹿島は金崎の逆転ゴールでオークランド・シティを2-1で下し、初戦を突破した。試合のMVPに選ばれたのは金崎ではなく、同点弾をアシストした永木だったが、納得できる選出だった。 ▽というのも、試合は立ち上がりから鹿島ペースで、ボールポゼッション率でもオークランドを圧倒したものの、言葉は悪いが「ボールを回しているだけ」の攻撃だった。石井監督が「なかなかギアが上がらない展開。CSの疲れからか、前半は全体的に身体が重かった」と言えば、永木も「立ち上がり、フワッと入ってしまった。過密日程と優勝した余韻に浸った気分があったのかな」と振り返っていたが、苦戦した原因は引いた相手に対し、足元から足元へとつなぐパスが多かったことだ。 ▽トラップしてからのパスは相手も予測しやすい。逆説的に言うと、ワンタッチ(ダイレクト)のパスでの突破がなかったのは、スペースへ走り込む選手がいなかったということにつながる。ここらあたりの動き出しの少なさを、石井監督は「身体重かった」と指摘したのかもしれない。 ▽引いて守りを固めるオークランドを攻めあぐねた小笠原は、何度もサイドチェンジを繰り返しては“幅”のある攻撃で揺さぶろうとした。しかし、最後の突破となるタテへの仕掛けではスペースがないため、遠藤や西、山本へのパスはゴールラインを割ることが多かった。 ▽流れが変わったのは、63分に小笠原に代わって金崎が投入されてからだった。この交代で、それまで左サイドハーフだった柴崎がボランチに入り、2トップだった土居を左サイドハーフにコンバートして、金崎と赤崎の2トップにした。すると柴崎は、サイドチェンジという“幅”を使った攻撃に加え、バイタルエリアの2トップへタテパスを入れる“深さ”を使った攻撃でオークランドDF陣をおびき出した。 ▽そしてもう一つの変化は、小笠原が司令塔の役を務める時はアンカーとして守備に回る永木が、柴崎がボランチに入ると果敢に前線へと飛び出したことだ。67分の赤崎の同点ゴールは、右サイドで永木が遠藤とのパス交換からスペースへ抜け出し、絶妙のクロスを送ったことで生まれた。突進すると見せて後方に戻りながら、自身の前にシュートスペースを作った赤崎のプレーも秀逸だったことも付け加えておこう。 ▽そして思ったのは、やはり柴崎はサイドに置くよりもボランチの方が生きるということ。小笠原とのコンビで攻撃力は確実に増す。しかし永木の攻守における貢献度も捨てがたい。ここらあたりが石井監督も頭を悩ますところだろう。 ▽最後に、CS第2戦の2ゴールに続き、この日も決勝点を決めて“神ってる”金崎を、ハリルホジッチ監督はどう評価するのだろうか。次の代表招集はまだ先のことなので、それまで金崎が好調を持続しているかどうか分からないが、ちょっと気になるところでもある。<hr>【六川亨】1957年9月25日生まれ。当時、月刊だった「サッカーダイジェスト」の編集者としてこの世界に入り、隔週、週刊サッカーダイジェストの編集長や、「CALCIO2002」、「プレミアシップマガジン」、「サッカーズ」の編集長を歴任。現在はフリーランスとして、Jリーグや日本代表をはじめ、W杯やユーロ、コパ・アメリカなど精力的に取材活動を行っている。日本サッカー暗黒の時代からJリーグ誕生、日本代表のW杯初出場などを見続けた、博識ジャーナリストである。 2016.12.09 15:56 Fri
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【倉井史也のJリーグ】おーい、日本国民のみなさん、まだサッカーシーズンなんですけど?!の巻

▽ええっと、なんか自分で「鹿島来るかも!」とか書いといてなんですけど、ちょっと浦和かわいそうだったかなって。だって11月3日にリーグ戦終了! ってやって、29日と12月3日に試合でしょ? そりゃシーズン終盤の上り調子を維持できませんよ。ちゅうか、サッカーに関心低い人って、「あれ? 浦和優勝したじゃん。そのあと代表戦ですっごいイイもの見たんだけど、まだ何かあんの?」みたいな状態だったんじゃないの? ▽で、そのままの勢いで鹿島がクラブワールドカップ(FCWC)に参戦してんだけど、こういう感じでチャンピオンシップやらせてあげたかったかなって。 ▽んでもって、さらに不幸な扱いになったのが20日に開催される「Jリーグアウォーズ」。FCWC挟んだ後に開催されるから、またまた余計にわかんない催しになってないッスか? しかも今年も受賞者しか呼んでません! 賞に関係ない人は来なくてよし!! ▽今年のプレスカンファレンスでは会見なんかに関係ない監督は「行けたら行くわ」的な話で、おかげですんごく寂しい感じになったのに、終わりもそんなん? せっかく横浜アリーナでやるのに? ▽ちょっと前って全チームのサポーター招待してませんでしたっけ? それってたとえ自分のチームの選手が表彰されなくても、せめて勇姿だけは見に行こうって気持になれただろうに、ますます興味引きませんって。 ▽まぁ日程が悪いのはわかってますよ。ワールドカップ予選もあったし、チャンピオンシップもぶっ込まなきゃいけなかったし、FCWCもあったし。だけど、今回のアウォーズで紹介される選手って、もしかしたら11月3日以降、ずっとお休みでもよかったかもしれないわけでしょ? 1カ月半経ってやってきて「あぁどうも」って。 ▽せめて式典終わった後のパーティーはスポンサーだけじゃなくて、ファンや関係者やみんなで楽しくやったほうがいいんじゃないですか? 今のままだとどっちに向いてるか、全然わかんないんですけど。 ▽……いえいえ、応援してた川崎が負けたからって荒れてるわけじゃないですし、浦和の敗退にキレてるわけでもないんですよ。ただアジアチャンピオンではない開催国チームに負けたチームが、世界7位になる大会って、やっぱちょっとおかしいっしょって、フンマンやるかたないわけです。ま、それでも鹿島にゃがんばってほしいんですよ。鹿島が勝ち進むことが、「薄い」人の関心をサッカーに繋いでおいてくれるたった一つの手段な気がしてますんでね。ええ。<hr>【倉井史也】 試合当日は、はやる気持ちを抑えられずスタジアムに受け付け開始と同時に駆けつけ、選手のバスが両方行ってしまうまで名残を惜しむ。自慢は対戦カードの因縁をよく覚えていること。特にサポーター寄りのネタが得意。パッと見は若いが実は年齢不詳のライター。 2016.12.09 11:00 Fri
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【東本貢司のFCUK!】熱血コンテがプレミアを撃つ

▽12月3日のマンチェスター・シティーvsチェルシーは、事件満載、スペクタクルだった以上に、両軍のキャラと現状を如実に見て取れた感が強く、実に興味深かった。勝負のアヤは、ファーストハーフ終了間際のギャリー・ケイヒルによるオウンゴール。これが格好の“ビンタ”となって、アウェイのチェルシーイレヴンのスピリットに火が付いたという印象だったが、逆に後半のシティー・ディフェンスに時間が経つほど目に見える生ぬるさと小さな判断ミスの連鎖をもたらしたような気がする。得点経過を見ればそれがよくわかるだろう。60分、70分、そしてオフィシャルタイム末の90分。そこに、絵に描いたようなアグエロ(ダヴィド・シルヴァ)、フェルナンジーニョ(ファブレガス)のレッドカード退場劇が続いた。コンスタントでおよそブレの見えないチェルシー、とらえどころがもう一つで、ときにストレスが負の方向に働いて自滅したような、ちぐはぐそのもののシティー。 ▽そんな印象を振り返りながら、ふと、思い当ったことがある。他でもない、両指揮官のいつになく顕著だったお馴染みの風情だ。子供じみたという形容詞すら思い起こさせる、アントニオ・コンテの派手で感情むき出しのオーバーアクションと、舞台俳優も顔負けの露骨な表情。一方のペップ・グアルディオラは思索家然として洗練された物腰こそ変わらないが、画面に抜かれるたびに物憂い表情をにじませ、振る舞いも消極的だ。泡立つような熱血を全身で表すイタリアンと、何事にも動じないフリを肝に銘じようと自制する哲学者スパニッシュ。ふと「ローマは一日にしてならず」の諺を生み出したセルバンテスの古典的大ベストセラーを思い出す。ドン・キホーテは何やら屈託を抱えながらもひたすら我が道を突き進むが、内に秘めた狂熱の理想はいつ噴出して手も付けられない事態を呼び起こすがわからない。変な理屈だが、ペップとコンテはそれぞれ、ドン・キホーテの二面性を明確に分離したキャラに見えてくる。あるいは(舞台設定から)ジキルとハイドのように。 ▽そんな“妄想”を頭の隅に残したままでゲームの振り返りに戻ろう。つまり、ピッチの上ではベンチの指揮官とは真逆のキャラが、それぞれのプレーヤーたちによって演じられていた。末尾のアグエロとフェルナンジーニョによる激した粗相が象徴するシティーイレヴンの、的を外した大立ち回りと、終始クールで敵の心の隙をあざ笑うように落ち着き払ったビジタープレーヤーたち。あの“問題児”ディエゴ・コスタが人が変わったように“大人っぽく”見え、実際に大人びたプレーで脇役を務めてみせたほどに。コンテに周到な演技プランがあるとは思えない。あのホッドブラッド・アクションは彼の紛れもない“素”だ。それがむしろ、ピッチ上の戦士たちをクールに躍らせる。そんな気がしてきたのだ。多分、それで当たらずとも遠からず。ジョゼ・モウリーニョ時代の9試合に迫る、8試合連続勝利という事実もそれを裏付けする。なにしろこの間、コンテはほとんどチームをいじっていない。無論、ヨーロッパの試合がないというプラスハンディの恩恵もあるが。 ▽このコンテ流・チーム再生術の開花には、イメージ作戦(?)のみならず、実際的根拠も散見する。一に、最近のプレミアではとんと珍しい3バックで固定し、そのあおりで(不振模様の)イヴァノヴィッチはベンチが指定席になった。卵が先か鶏が先かの論議になるが、そこで注目すべきは実力者ファブレガスも控えに回されている事実だ。そして、8月の移籍締め切りぎりぎりに獲得にこぎ着けたダヴィド・ルイスとマルコス・アロンソ。ルイスは3バックの中央にどんと居座り、アロンソは左サイドで絶妙なバランスメーキングを披露して、ヴィクター・モーゼズの左サイドコンヴァートをここまで見事に支えている。コスタの“変貌”やアザールの復調、あるいは新加入カンテとマティッチのダブルアンカーシステムがどうしても目立つのは致し方ないが、チェルシーの“クール・レヴェレーション”に欠かせない肝のキーマンは、ルイスとアロンソだと見てほぼ間違いない。ということは、コンテはオフに「3バックの補強の目玉」のプランを温めていったはずである。 ▽対リヴァプール、アーセナルの連敗は、確かにちょっとした危機感を周囲に与えたかもしれない。が、今となってはむしろ願ってもない教訓、もしくは良き反動の種になったと考えられる。そして、この迅速な立ち直りにも、コンテの本能的なオーバーアクションが必ずや寄与しているはず。勝手も負けても、勝ちゲームを引き分けに持ち込まれても、慌てず騒がずのペップ・キャラではこうはいかない・・・・のかどうかは何とも言えないが、少なくともプレーヤーに苦笑いをさせ、ファンを楽しませ、全体として微笑ましい印象すらもたらす効果は、個人的に認めたくなる。もっとも、ペップやモウリーニョが同じキャラに転じても滑稽なだけだろう。コンテならではである。うん、そういえば、リヴァプールのクロップにも通じるものがある。あの、不敵そのもののニヤニヤ笑いは、実に人なつっこく、かつ頼もしく見える。アクションも結構派手だ。これはどうやら、コンテとクロップのアクションバトルがタイトルレースを占う、番外的目安(?)になりそうな気配で。<hr>【東本 貢司(ひがしもと こうじ)】 1953年大阪府生まれ 青春期をイングランド、バースのパブリックスクールで送る。作家、翻訳家、コメンテイター。勝ち負け度外視、ひたすらフットボール(と音楽とミステリー)への熱いハートにこだわる。 2016.12.07 11:15 Wed
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【原ゆみこのマドリッド】引き分けにもイロイロある…

▽「だから、勝たなくていいって!」そんな風に私が反応してしまったのは月曜日。ミュンヘンのアリアンツ・アレナで行われたアトレティコのCLグループリーグ最終節前記者会見の様子を知った時のことでした。いやあ、このところ、ベテランのチアゴに先発の座を取って代わられ、出番の減っているサウールですし、昨季の準決勝バイエルン戦1stレグの決勝点、FIFAのプスカシュ賞にもノミネートされたgolazo(ゴラソ/スーパーゴール)を挙げている身とあって、「Saldremos a ganar en un partido muy complicado/サルドレモス・ア・ガナール・エン・ウン・パルティードー・ムイ・コンプリカードー(とても困難な試合に勝つつもりでピッチに出る)」と、やる気になっているのはわかるんですけどね。 ▽せっかくここまでグループで5連勝しているんだから、泣く子も黙るドイツの強豪を最後に倒して全勝したら、カッコいいだろうと選手たちが思ってしまうのも人情と言えば、それまでですが…。もしや彼ら、CLのグループステージで6勝を挙げている6チームが、そのシーズンに優勝していないことを知らない? ええ、身近な例ではモウリーニョ監督時代の2011-12シーズンや、アンチェロッティ監督時代の2014-15シーズンのお隣さんですが、どちらも準決勝で敗退の憂き目に。そう思うと、もちろんUEFAからの勝利報酬もありますから、負けて一銭ももらえないのは勧められないにしても、せいぜい引き分けに留めておくのがまずは無難かと。 ▽え、シメオネ監督が「Hay veces que el orgullo cuenta mucho más que los puntos/アイ・ベセス・ケ・エル・オルグージョ・クエンタ・ムーチョ・マス・ケ・ロス・プントス(時に勝ち点より誇りが頼りになることもある)」と言っていたのは、2014年にマドリー悲願のデシマ(10度目のCL優勝)をプレゼントしてしまった選手たちが、その時の悔しさをバネに頑張ってくれるだろうと当てにしてのことじゃないのかって? うーん、土曜日のクラシコ以来、TVでは一生悔いても悔やみきれない、あのシーンの映像が何度も流れていますからね。すでに頭の中は今年5月の悲劇(ミラノ編)に上書きされていた選手たちだったとて、やっぱりアンチェロッティ監督のチームには意地を見せたいのかも。 ▽そんなことはともかく、まずはそのクラシコがどうだったのかを語っていかないと。いやあ、予定通り、キックオフの1時間前には近所のバル(スペインの喫茶店兼バー)に行って、ガッチリ席を確保。ランチを食べながら始まるのを待った私でしたが、スタメン発表で意外だったのは、どちらのチームも負傷上がりのイニエスタ、カゼミロをベンチスタートにしたことでしょうか。とりわけバルサの方はチームのゲームメーカーがいないのが響いたか、序盤はセルヒオ・ラモスがルイス・スアレスに乗りかかってしまうなど、相手の体を張った守備に正面からぶつかって、なかなかチャンスが作れない結果に。 ▽かといって、マドリーが得点できた訳でもなく…。何せ、どういうタイミングか、その日に2009年から、1億5000万ユーロ(約185億円)にもなる肖像権収入をタックスヘイブンの会社に迂回させ、本来の4%程度の税金しか払っていないと、エル・ムンド(スペインの一般紙)で暴露されたクリスチアーノ・ロナウドが、カンプ・ノウのスタンドから「Hacienda somos todos, Crisiano paga ya/アシエンダ・ソモス・トードス、クリスティアーノ・パガ・ジャー(オレたち皆が税務署だ。クリスチアーノ、さっさと払え)」と歌われたことも影響したんですかね。前半の終盤に撃ったシュート、2本ともGKテア・シュテーゲンに止められていましたが、元々、この歌は名前の部分をメッシにして、スペインの様々なスタジアムで歌われていたもの。だとしたら、オリジナルの方もいい気はせず、前半中の枠内シュートがGKケイロル・ナバスにキャッチされたFK1本のみで終わってしまったのも無理はなかった? ▽それでも後半にはスコアが動き、52分には右サイドからネイマールが蹴ったFKを、ヴァランを出し抜いたルイス・スアレスがヘッドで決めてバルサが先制点をゲット。そこからルイス・エンリケ監督がイニエスタを投入し、ゲームの主導権も奪われてしまったため、ジダン監督は対抗策にイスコを引っ込め、カゼミロを入れたんですが、「Ser mas ofensivos/セル・マス・オフェンシボス(もっと攻撃的にしたかった)。少しリフレッシュして、コバチッチとモドリッチを前に出してね」という指揮官の意図に納得できなかったのは、ベンチで八つ当たりしていたイスコだけではなかったかと。ええ、結局、これだけでは足らず、マドリーは76分にはベンゼマをアセンシオに、80分には何と、先日のコパ・デル・レイ32強対戦2ndレグでハットトリックを挙げたマリアーノまでピッチに入れ、藁にもすがる気持ちで同点を目指したんですが…。 ▽いよいよアディショナルタイム入りが近いという90分、またしてもお馴染みの救世主が登場したんですよ! それはもちろん、2年前のダ・ルス(ベンフィカのホーム)で、そして今年の夏、セビージャと対戦したUEFAスーパーカップでも延長3分に起死回生の同点ゴールを挙げたラモスで、いえ、ルイス・エンリケ監督は事前に「Habia indicacion de no hacer falta si un jugagor del Madrid esta de espaldas a la porteria/アビア・インディカシオン・デ・ノー・アセール・ファルタ・シー・ウン・フガドール・デル・マドリッド・エスタ・デ・エスパルダ・ア・ラ・ポルテリア(マドリーの選手がゴールに背を向けていたら、ファールはするなという指示はしていた)」ものの、血気にはやって、ついマルセロを自陣エリア近くで倒してしまったのが、元アトレティコのアルダ・トゥランというのも何かの前兆だったのかもしれませんけどね。 ▽そのFKのキッカーに立ったのはモドリッチ。これもリスボン決勝でのCKと同じですが、そのボールを見事に頭で押し込んで、土壇場で同点ゴールをもぎ取ってしまったとなれば、ただただ感服するしかないじゃないですか。いえ、後でモドリッチは「Ha venido Sergio a vacilarme y me ha dicho: !menos mal que me has puesto una bien eh!/ア・ベニードー・セルヒオ・ア・バシラールメ:メノス・マル・ケ・メ・アス・プエストー・ウナ・ビエン・エー(セルヒオがボクをからかいに来たんだ。幸いにもいいボールを蹴ってくれたねって)」と話していましたけどね。加えて、このセットプレーは「Sale natural, no lo ensayamos/サレ・ナトゥラル、ノー・ロ・エンサジャモス(自然に生まれるんだ。練習はしていない)」そうですが、いやいや、それもチームメートの尽力があってこそ。 ▽というのも、そのシーンの映像を見てみると、ルーカス・バスケスがピケをラモスに近づけないようにこの手あの手でマーク。おかげでラモスはマスチェラーノを振り切って、フリーでヘッドすることができたんですが、ピケ自身も「ルーカスはボクを邪魔することに専念していて、行きたかったところに行かせなかった。Supongo que saben que soy el mas alto del equipo e importante en esas jugadas/スポンゴ・ケ・サベン・ケ・ソイ・エル・マス・アルト・デル・エキポ・エ・インポルタンテ・エン・エサス・フガダス(自分がチームで一番、背が高くて、こういうプレーで重要な役目があるのを知っていたのだと思う)」と証言していて、いえ、身長云々は誰だって見ただけでわかりますけどね。 ▽何も選りに選って、173センチと小柄なルーカス・バルケスがピケにつかなくてもいいんじゃないかという意見もあるでしょうが、バルサが攻撃のセットプレーではロナウドがメッシをマークしていたりとか、どうやらジダン監督はその辺はあまり気にしていないよう。ええ、「全員の働きが際立っていたが、luego Sergio esta ahi para meter el gol.../ルエゴ・セルヒオ・エスタ・アイー・パラ・メテール・エル・ゴル(それでセルヒオがゴールを決めるためにそこにいる…)」(ジダン監督)のなら、全然、問題はありませんって。おまけにアディショナルタイムにはカゼミロがセルジ・ロベルトのヘッドをゴールライン上でクリアして、同点死守の立役者になったとなれば、もう誰も彼の選手起用策に文句はつけたりしませんよ。 ▽結局、「Creimos hasta el final/クレイモス・アスタ・エル・フィナル(ウチは最後まで信じた)」という、マドリーの特性がモノを言って、そのまま1-1の引き分けでクラシコは終わったんですが、おかげで両チームの勝ち点差は6で変わらず。つまり次節のデポルティボ戦でマドリーが負けなければ、年内最終節のバレンシア戦を延期してクラブW杯に出かけても、バルサは絶対に彼らに追いつけないのですから、こんなに安心なことはないじゃないですか。いえ、細事を言えば、ラモスのゴール祝いの時にカルバハルがスタンドに向かってpeineta(ペイネタ/中指を立てるヒワイなポーズ)をしたり、まったく冴えのなかったベンゼマや出番すらもらえなかったハメス・ロドリゲスが更に株を下げるなんてこともあったんですけどね。とりあえず、マドリーファンにとってはいい結果だったかと思います。 ▽そして次の時間帯でビジャレアルをブタルケに迎えたマドリッドの新弟分、レガネスがGKエレリン(アスレティックから移籍)を緊急補強した甲斐があって、相手を無失点に抑えたものの、攻撃陣の重傷者の穴埋めがまだなせいですかね。ゴールを挙げることはできずにスコアレスドローに終わったと私が知ったのは、ビセンテ・カルデロンのスタンドで寒さに耐えながら、アトレティコvsエスパニョール戦が始まるのを待っていた時だったんですが、その日はキックオフ前に飛行機事故の犠牲になったブラジルのシャペコエンセに黙とうを捧げました。シャペコエンセにはアトレティコでプレーしたこともあるクレベル・サンタナがいたのもあり、他のスタジアムより黙とうがしんみりしていたり、それこそその彼が在籍時の指揮官だったキケ・サンチェス・フローレス監督がエスパニョールを率いて古巣を再訪。 ▽2010年には長年の間、タイトル日照りに苦しんでいたチームをヨーロッパリーグ優勝に導いてくれたこともあって、fondo sur/フォンド・スール(南側ゴール裏)に「eternamente agradecido Quique/エテルナメンテ・アグラデシードー・キケ(キケ、永遠に感謝しています)」という横断幕がかかったりと、どこかセンチメンタルな雰囲気で始まったせいもあったんでしょうか。グリーズマン、ガメイロ、カラスコを先頭に攻めていたアトレティコでしたが、ほとんどシュートを撃てず。それどころか、41分にはモレノが、59分にはレオ・バチストンがカウンターから1人抜け出して、GKオブラクが必死で弾いてくれなければ、相手に先制されていてもおかしくありませんでしたっけ。 ▽え、それでもアトレティコにだって、ガビやグリーズマンのチャンスがあったものの、ディエゴ・ロペスにparadon(パラドン/スーパーセーブ)されてしまったんだろうって? そうですね、キケ監督も「Estaban los dos porteros mejores de Europa y era dificil hacer un gol/エスタバン・ロス・ドス・ポルテーロス・メホーレス・デ・エウロッパ・イ・エラ・デフィシル・アセール・ウン・ゴル(ヨーロッパ最高の2人のGKがいて、ゴールを入れるのが難しかった)」と言っていたのはその通りだったんですが、いくら敵が守備に特化していたとしても、あのアトレティコのパスの繋がらなさは異常。それこそ、フォルラン(現ムンバイ・シティ)やアグエロ(マンチェスター・シティ)のゴールでタイトルは獲ったものの、キケ監督が率いた2シーズン、リーガをそれぞれ、9位、7位で終えた、時としてファンを絶望させるチームのデジャブだったかと。 ▽おかげで私など、その夜はやたら冷えるので、選手たちの足がかじかんでいるんじゃないかと疑った程ですが、ガイタンやコレアをピッチに投入してもその流れは変わらず。マドリー育ちのファンフランなど、後で「ウチは最後まで勝利を手に入れられると信じていた」と主張はしていましたが、残念ながら、アトレティコのDNAには土壇場の奇跡は刷り込まれてないんですよ。結局、最後まで0-0のまま、クラシコ引き分けだけでなく、お昼の試合でセビージャもグラナダに負けという、上位との差を詰める絶好のチャンスを掴めず、「Es un punto muy bueno/エス・ウンプント・ムイ・ブエノ(とてもいい勝ち点1だ)。ビセンテ・カルデロンでポイントを取るのは難しいから、チームは満足しているよ」(ディエゴ・ロペス)というお土産をエスパニョールに持たせて、バルセロナに帰ってもらうことになりました。 ▽いえ、それでもレガネスが健闘してくれたのと、幸い月曜日の試合でもデポルティボがレアル・ソシエダに5-1と勝ってくれたため、アトレティコの4位は変わらなかったんですけどね。試合後の会見で、「El objetivo es ser tercero, tranquilidad/エル・オブヘティボ・エス・セル・テルセーロ、トランキリダッド(目標は3位になることだから、落ち着いている)」とシメオネ監督が言っているのを聞いた時には思わず、それだって危ないじゃないと抗議したくなったもんですが、彼らだって、好きで下手なプレーをしている訳じゃありませんからねえ。ここは気を取り直して、すでに首位通過が決まっている火曜日午後8時45分(日本時間翌午前4時45分)からのCLバイエルン戦では、マドリッドで留守番することになったチアゴ、フェリペ・ルイスだけでなく、コパのギフエロ戦並にスタメンを落としてもいいので、リーガの次節、来週月曜日のビジャレアル戦に集中して欲しいかと。 ▽その一方で、同日にはクラシコでの悪いイメージだけでなく、国内戦ここ4試合引き分けというスランプに陥っているバルサは、やはり1位は確定しているものの、「mañana jugará Messi de inicio/マニャーナ・フガラ・メッシ・デ・イニシオ(明日はメッシが先発する)」(ルイス・エンリケ監督)と、ボルシアMG戦に心血を注いでいるようですが、本当の意味で一生懸命やならいといけないのはマドリー。というのも、彼らの場合、決勝トーナメント進出は決まっているものの、現在は勝ち点2差の2位と、この水曜日の試合でドルトムントを倒さない限り、首位通過ができないから。 ▽まあ、別に2位でもいいという考え方はできますけどね。ただこの試合には、クラブ記録となる34試合連続無敗も懸かっているため、ジダン監督はオールスターメンバーで迎え撃つはず。ちなみに月曜日には11月のスペイン代表戦でケガをしたモラタが全体練習に復帰、ベンチに入る可能性もありとされていますが、こちらもクロースと共にクラブW杯に万全で挑むため、まだ実戦は控えるかも。先週末のブンデスリーガでドルトムントはメボルシアMGを4-1と一蹴してしますし、彼らとの近年の試合はドキドキする撃ち合いが多いので、香川真司選手が出る出ないに関わらず、見応えのある一戦になるんじゃないでしょうか。<hr>【マドリッド通信員】 原ゆみこ 南米旅行に行きたくてスペイン語を始めたが、語学留学以来スペインにはまって渡西を繰り返す。遊学4回目ながらサッカーに目覚めたのは2002年のW杯からという新米ファン。ワイン、生ハム、チーズが大好きで近所のタパス・バルの常連。今はスペイン人親父とバルでレアル・マドリーを応援している。 2016.12.06 12:30 Tue
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