【原ゆみこのマドリッド】上司が変われば気分も変わる…2016.01.09 08:00 Sat

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▽「いい時期ではあるわよね」そんな風に私が納得していたのは金曜日、いよいよジダン新監督の初戦が翌日に迫っているのに気づいた時のことでした。いやあ、今週は月曜にレアル・マドリーの指揮官交代があったため、こちらも何やらバタバタして過ごすことになったんですが、幸いだったのは彼らにはミッドウィークにコパ・デル・レイの試合がなかったこと。それも12月にカディス(2部B)との32強対決1stレグでチェリシェフのalineracion indebida(アリネラシオン・インデビダ/出場資格のない選手の起用)が発覚し、大会敗退となったせいですが、うっかり16強対決が予定されてでもいたら、新監督も落ち着いて準備を進める時間がなかったのでは?

▽おかげで日曜にバレンシア戦で引き分けた翌日夕方遅く、ベニテス監督の解任がクラブの理事会で決定。同時に後任監督としてジダンの名前が、ほんの3週間程前には「ベニテス監督はチームの問題の解決策。Zidane no sustituirá a Benítez/ジアン・ノー・ススティトゥイラ・ア・ベニテス(ジダンがベニテス監督を引く継ぐことはない)」と断言していたペレス会長により、サンティアゴ・ベルナベウで発表され、その時は当人も「タイトルと獲るために全力を尽くす」といったシンプルなコメントだけで、あとは奥さんとマドリーのカンテラ(下部組織)でプレーする4人の息子さんたちと一緒に檀上でポーズするぐらいで良かったんですけどね。

▽翌火曜にはちょうど、レジェス・マゴス(東方の三賢人の祝日、スペインでは伝統的に子供たちがプレゼントをもらえる日となっている)を控え、ファンサービスとして1年に1回の恒例となっている公開練習に挑み、駆けつけたサポーター約7000人から拍手を浴びた後、RMカスティージャ(マドリーのBチーム)監督となって1年目だった昨季は忌避しながらも、今季から行うようになった監督記者会見に初めてトップチームの指揮官として登場することに。ええ、今度はサンティアゴ・ベルナベウのプレス・コンファレンスルームで行われたこちらでは、今後のチーム運営について事細かに質問に答えていましたっけ。

▽曰く、「マドリーで大切なのは美しいサッカー。自分もそれを目指す。Fútbol ofensivo y equilibrado/フトボル・オフェンシボ・イ・エキリブラード(攻撃的でバランスの取れたサッカーをね)」から始まって、「Quiero darle mi toque personal, un toque ofensivo/キエロ・ダールレ・ミ・トケ・ペルソナル、ウン・トケ・オフェンシーボ(自分の個人的なタッチも加えたい。攻撃的なニュアンスをね)」とか、BBC(ベイル、ベンゼマ、クリスチアーノ・ロナウドの頭文字)については「la idea es clara, jugar con los tres/ラ・イデア・エス・クラーラ、フガール・コン・ロス・トレス(3人を使ってプレーするというアイデアははっきりしている)」、更には「Ganarlo todo/ガナールロ・トードー(全てを勝ち獲ること)。ウチには獲得できるタイトルが2つあるから、それにトライする」と、今季の目標なども話していましたが、何にしてもチームには才能ある選手が揃っていますからね。

▽あまり、やろうとしていることはペレス会長任期中の12年間で10番目の監督となった彼も変わらないような気はしますが、そこは実働グループのやる気次第。今季、大勢が慕っていたアンチェロッティ監督がいなくなり、実務肌のベニテス監督とはフィーリングが合わなかった彼らのハートを掴むことができれば、まだシーズンは半分残っていますし、どんなことでも可能かと。ええ、もちろん失格となったコパ・デル・レイだけは別ですけどね。

▽え、そんなお隣さんを尻目に今季も手近なタイトルとしてまず、コパ優勝を目指しているアトレティコは試合があったんだろうって? その通り、今週は月曜にクラネビテル(リーベル・プレートから移籍)、火曜にアウグスト(セルタから移籍)の入団プレゼンをひっそりビセンテ・カルデロンで行った後、水曜に彼らはコパ・ダービーとなった16強対決1stレグでまたしてもエスタディオ・デ・ラス・バジェカスに乗り込んだんですが、いえ、もちろん昨今の試合展開から楽勝なんてまったく予想はしていなかったんですけどね。昨年末最後のリーガでの対戦を思い出しても苦戦することは目に見えていたんですが、そこへ加えて、シメオネ監督が最初のレウス(2部B)戦同様、オブラク、ゴディン、ファンフラン、フィリペ・ルイス、コケ、グリースマンらにお休みを与え、コパ用イレブンを投入したから、もう大変だったの何のって。

▽実際、その日のバジェカスはスタンドも半分ぐらいしか埋まらず、ラージョの方もリーガとは違うスタメンだったんですが、アトレティコではここ2試合、大活躍をして株が上がり、クラネビテルとアウグストをダブルボランチで早速デビューさせたため、トップ下の大役を仰せつかったトマスがちょっと上づってしまったんですかね。どちらもなかなか点の取れない展開でしたが34分、自陣エリア前からクリアしたボールをナチョの正面に送ってしまい、そのミドルシュートで先制されてしまったから、まったくツイてない。ええ、これにはシメオネ監督も「es un chico joven y hay que llevarlo sin la ansiedad de estos últimos días en el entorno de él/エス・ウン・チコ・ホベン・イ・アイ・ケ・ジェバールロ・シン・ラ・アンシエダッド・デ・エストス・ウルティモス・ディアス・エン・エル・エントルノ・デ・エル(彼は若いんだから、ここ数日のように周囲が焦らせることなく、育てていかないといけない)」とフォローするしかありません。

▽それでもまあ、0-1なら来週、ホームでの2ndレグもありますし、真っ青になる程のこともなかったんですが、このところ早めの交代で味をしめたシメオネ監督は後半10分には近頃、あまりいいところを見せてくれないオリベルとアウグストを引っ込め、サウルとビエットを入れる攻撃的メンバーチェンジを実施。するとこれが見事に当たり、21分には右サイドからキニを振り切ってビエットが入れたラストパスにサウルが反応、エリア内からシュートを決めて同点にしてくれたから、何とも有難いっちゃありません。いえ、2年前、レンタルでラージョに修行に来ていた当人は遠慮して、大袈裟にゴールを祝うことはしませんでしたけどね。

▽「El chico que vieron crecer en Vallecas sigue creciendo/エル・チコ・ケ・ビエロン・クレセル・エン・バジェカス・シケ・クレシエンドー(バジェカスで成長するところを見せた選手は成長し続けている)」(サウル)と後で言っていたように、こういうのこそが最高の恩返しなんでしょうが、ラージョのパコ・ヘメス監督にとってはまさに痛し痒しだったかも。それでも幸い、34分にはCKからビエットが放った至近距離のシュートはGKファン・カルロスのparadon(パラドン/スーパーセーブ)とゴールポストに阻まれて決まらず。

▽おかげでラージョは1-1のままで2ndレグを迎えられることになり、その日は2-2で引き分けたリーガ前節のレアル・ソシエダ戦の後、「ウチは1部のチームじゃない」というコメントから、「No son de Primera, sino de 'Champions'/ノー・ソン・デ・プリメーラ、シノ・デ・チャンピオンズ(1部ではなく、CLにいるチーム)」と、ヘメス監督も自軍を大幅に格上げしていたものの、点を取ることは苦手でも、基本的に守りは超一流のアトレティコが2ndレグでは0-0でもいいとなると、見通しはあまり芳しくないでしょうね。

▽ただラージョにとって、もっと重要なのは週末のリーガ戦、土曜にレバンテのホームを訪れる試合で勝つことで、何せこのところ、降格圏の19位が定位置になってしまっていますからね。相手は最下位ですが、コパにはすでに敗退していて今週ヒマだった上、前節では兄貴分のアトレティコが終盤にトマスのゴールが決まるまで勝負を決められなかったという例もあるため、心してかかる必要があるかと。実際、残留ゾーンまではたった勝ち点2差しかないので、シーズンの前半終了戦でもある、この19節では不名誉な順位から脱出できたらいいのですが。

▽そしてアトレティコは日曜午後8時半(日本時間翌午前4時半)から、やはりアウェイでセルタ戦なんですが、こちらの目標は現在、2位バルサと勝ち点差2、3位マドリーと同4ある首位の維持と極めて贅沢なもの。もちろん試合消化数が1つ少ないバルサがクラブ・ワールドカップのせいで延期したスポルティング戦を2月に済ませた後どころか、1月30日の直接対決でカンプ・ノウに乗り込めば、簡単に転落してしまうのかもしれませんが、まあ、それまではねえ。金曜からは大雨が続き、バライドス(セルタのホーム)周辺が浸水しているなんて心配な情報もあるものの、アウグストもマハダオンダ(マドリッド近郊)でのセッションでは先発組に抜擢され、忘れ物も取りに行ける早々の古巣訪問を心待ちにしているはずですし、いつものように少ない得点をガッチリ守って勝ち点3に変えられればと思います。

▽一方、そんなセルタも今週木曜はコパでカディスと当たり、リーガ5位の実力相応で0-3と快勝。マドリーが失格になった恩恵を受けているんですが、そのマドリーがこの土曜の午後8時半(日本時間翌午前4時半)に対戦するデポルティボは水曜にミランデス(2部)とのコパで1-1の引き分け。あまりないことですが、相手の方が休息期間が短いのはジダン新監督にとって、有利に働くかもしれません。加えてサンティアゴ・ベルナベウでの試合とあって、ファンに絶大な人気を誇る彼がベンチで指揮を執れば、これまでのようにpito(ピト/ブーイング)が聞こえることもなく、スタンドと一体になって勝利を目指すことができる?

▽それには現役時代はマドリーで長くプレーしたビクトル監督も、「el principal cambio será en el plus de ilusión que tiene la gente/エル・プリンシパル・カンビオ・セラ・エン・エル・プルス・デ・イルシオン・ケ・ティエネ・ラ・ヘンテ(最大の変化は人々により大きな夢を抱かせること)」と用心していましたが、新監督の幸運は他にもあって、とうとうカルバハルも回復し、この試合前にチームの負傷休場者がゼロに。いえ、バレンシア戦でレッドカードをもらって退場したコバチッチだけは処分で出られませんけどね。

▽金曜の前日練習からは、BBCにイスコ、そしてモドリッチ、クロースという、アンチェロッティ前監督が好んだ布陣、ついでに言うなら、昨年のクラシコ(伝統の一戦、マドリーvsバルサ戦のこと)で0-4と惨敗した時のスタメンからハメス・ロドリゲスを除いただけ、とはいえ、十二分に攻撃的なものが予想されていますが、当時はベンゼマとベイルが負傷明けだったのに比べ、今は2人とも好調を維持しているのは好材料になるかと。何せ、昨年12月にはカンプ・ノウでバルサから引き分けをもぎ取ったデポルティボですが、ここ2試合はリーガで白星がなく、順位も7位と少々、調子を落としていますしね。順当に行けば、マドリーが勝つんじゃないかと思いますが、注目はプレーでファンをさせることができるかどうかになりそうです。

▽そしてもう1つの弟分、コパはラージョに及ばず敗退となり、肩の荷が下りているヘタフェは日曜にセビージャとのコパ・ダービーに0-2で負けているベティスと対戦するんですが、実は彼らは月曜の前節スポルティング戦に2-1と逆転勝利を収め、現在は13位と比較的落ち着いた順位に。相手も同じ勝ち点で14位ですから、実力の拮抗した、いい試合になりそうな気配はあります。そうそう、折しも木曜には今季シーズン後半のアボノ(年間指定席)を80ユーロ(約1万円)という爆安値段で売り出したヘタフェですが、そのホーム11試合にはこのベティス戦も含まれているとか。マドリーやアトレティコ戦もこれからあることですし、ようやく今年になってブカネーロ(ラージョの過激なサポーター集団)がストを止め、応援を再開したバジェカス同様、いつもガラガラなコリセウム・アルフォンソ・ペレスもその恩恵でもう少し、賑やかになってくれるといいですよね。

【マドリッド通信員】
原ゆみこ
南米旅行に行きたくてスペイン語を始めたが、語学留学以来スペインにはまって渡西を繰り返す。遊学4回目ながらサッカーに目覚めたのは2002年のW杯からという新米ファン。ワイン、生ハム、チーズが大好きで近所のタパス・バルの常連。今はスペイン人親父とバルでレアル・マドリーを応援している

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【原ゆみこのマドリッド】アブ・ダビは暖かいに違いない…

▽「この寒さじゃ、早く行く気はしないわよねえ」そんな風に私が首を振っていたのは金曜日、今年最後となるワンダ・メトロポリターノのアラベス戦は土曜の午後8時45分(日本時間翌午前4時45分)からと遅いキックオフながら、いい稼ぎ収めになるとクラブも思ったんでしょうかね。午前中にはスタジアムツアーを開催、恒例のファンゾーンやフードトラックも午後6時には営業開始と、ファンに試合の数時間前から来てもらいたいようなアピールをしているのをアトレティコのオフィシャルウェブで見た時のことでした。いやあ、最近はマドリッドの冬も本格化、夜になると気温3、4度とかなり寒くなる上、ワンダ周辺は広大な更地とあって、まったくの吹きっさらしなんですけどね。 ▽いくら食べたり飲んだりはできるとはいえ、それだったらメトロ(地下鉄)7号線、エスタディオ・メトロポリターノ駅1つ手間のラス・ムサス駅下車して、途中にあるバル(スペインの喫茶店兼バー)で暖まっている方がいいと思ってしまう私は軟弱?実際、当日はお隣さんのクラブW杯決勝が午後6時(日本時間翌午前2時)からという時間にあるため、いっそそのグレミオ戦をワンダ近隣で見てしまおうかとも考えたものでしたが、うーん、アトレティコファンに囲まれてレアル・マドリーの応援をするのはかなり微妙。ビセンテ・カルデロン時代は続いて始まる試合をスタジアム併設のバルで見たりもしましたが、悪態が飛ぶ中、ゴールを大っぴらに喜べなかったという経験がありますしね。 ▽となると、ここはやっぱり自宅近くのバルで途中まで観戦して、優勝祝いのシーンなどは後日、ニュースで確認するのでもいいかなと思ったりもするんですが…え、万が一、セルヒオ・ラモスがその中心におらず、ブラジルのチームのキャプテンがトロフィーを掲げていたら、どうするんだって?うーん、その場合、運が悪かったと諦めるしかないものの、どうして火曜の準決勝で本田圭佑選手のいるパチューカ(メキシコ)と延長戦に突入、かろうじて1-0で決勝進出を決めた相手にそんな心配をしなければならないのかというと。そりゃあ、マドリーの準決勝、水曜のアル・ジャジーラ戦もかなりドキドキさせられたからなんです! ▽そう、開催国のアラブ首長国連邦リーグ優勝チームとして参加したアル・ジャジーラを率いるテン・カテ監督はかつて、ロナウジーニョ全盛期で覇権を謳歌したバルサでライカールト監督のアシスタントを務めていたせいか、マドリーのことを熟知。前日記者会見でも「Necesitamos tres autobuses/ネセシタモス・トレス・アウトブセス(ウチはバス3台が必要だ)」と宣言していた通り、守備に特化していたんですが、予想外だったのは序盤から攻め続けだったマドリーが、GKハセイフの「息子や孫たちに語り継げる歴史的な」奮闘もあって、なかなか点を取れなかったこと。いえ、30分にはイスコのクロスをカセミロがヘッドで決めて、ようやく先制点ゲットかと思われたんですけどね。 ▽ところが最初はカセミロのファールを吹いた主審が選手たちの抗議でそれを撤回して得点を認めたながら、今度はVAR(ビデオ審判)から異議が。都合3分近くのプレー中断の末、最後はベンゼマのオフサイドがあったとしてノーゴールって、あまりに間が長すぎたかと。すると今度は40分、「Sabiamos que iban a estar abiertos y por eso hemos tenido dos delanteros/アビアモス・ケ・イバン・ア・エスタル・アビエルトス・イ・ポル・エソ・エモス・テニードー・ドス・デランテーロス(オープンなゲームになるとわかっていたから、FWを2人入れた)」というテン・カテ監督の読みが的中。カウンターからブスファとロマリーニョが抜け出すと、後者がGKケイロル・ナバスをかわしてゴールって一体、何の冗談でしょう! ▽おまけに後半2分にも敵はカウンターを成功させ、今度はブスファがアル・ジャジーラの2点目を挙げたかに見えたんですが、この時はVARがマドリーに味方。オフサイドを取られて無効になったため、命拾いした彼らだったんですが、むしろ有難かったのはそれから数分もしないうちに前半から、負傷を抱えていたGKハセイフが交代してくれた方だったかと。ええ、7分にはモドリッチのスルーパスから、とうとうクリスチアーノ・ロナウドがシュートを沈めてくれましたからね。これで同点となったため、一旦はホッとできたんですが、そのから先が長かったの何のって。ええ、勝ち越し点がなかなか生まれず、ベンゼマなどGKアル・セナニとの1対1で弾かれるわ、2回もシュートを枠に当てるわって、えー、これじゃお隣さんのビエットと同じじゃない? ▽さすがにこれにはジダン監督も同じフランス出身のFWのツキのなさを確信したんでしょうか。残り10分になったところで3人目の交代選手として、ベンゼマに代えてベイルを送り出すことにしたんですが、まさか、あんなにすぐに効果が表れるとは!ええ、彼がピッチに入って最初のタッチでルーカス・バスケスから折り返しに足を出したところ、待望の勝ち越し点になってしまうって、あまりに話が出来すぎのような気がしますが、そういえば、11月末にケガが治って久々の出場で、コパ・デル・レイ32強対決フエンラブラダ戦2ndレグの後半途中に入った時も同じでしたからね。その日も2部Bのチームに意表を突かれ、リードされていた場面で登場したベイルは最初のプレーでマジョラルの同点ゴールをアシスト。同選手の2点目も助けて、チームの16強進出に貢献したんですが、問題はその後。 ▽というのも翌日には再びふくらはぎを痛め、このアル・ジャジーラ戦までお休みしていたからですが、そのまま1-2でマドリーが勝利した後、「辛抱強く自分の体の声を聞かないと。まだ100%じゃないから、ピッチに立つ時間がいる。少しずつリズムを取り戻していくよ」と言っていた当人は幸い、今回は具合の悪いところが出なかったよう。翌日のフリータイム、チームメートがモスクやルーブル美術館分館見学に精を出している際もホテルに残り、マッサージを受ける程、用心していますし、練習も普通に参加できたそうですからね。 ▽この準決勝をふくらはぎと首の痛みでベンチ観戦したラモスなども金曜には、「他の機会だったら考えるけど、決勝だから出たいし、そう努力するよ。Mañana con una ayudita médica, pues es más fácil/マニャーナ・コン・ウナ・アジュディータ・メディカ、プエス・エス・マス・ファシル(明日は薬の力も借りるから、もっと楽にやれる)」と言っていたように、いえ、彼の場合、うっかり退場して、FIFA規則で今年最後のリーガ、クラシコ(伝統の一戦、マドリーvsバルサ戦)に出られなくなるという危険もあったりするんですけどね。このグレミオ戦は曲りなりにもタイトルの懸かった大一番とあって、たとえ、先発ではなくとも、ベイルもチームの危機時には出て行く覚悟は決めているはずかと。 ▽今度は19歳のアクラフに代わって右SBにカルバハルと、守備の方も改善が期待されますし、大体、35回もシュートして2点しか取れないなんて、カセミロも「Nunca tuvimos tan mala suerte/ヌンカ・トゥビモス・タン・マラ・スエルテ(こんなに運がなかったことはない)」と言っていたように、そうそうマドリーに起こることではないですしね。クラブW杯通算得点を6にして、メッシやルイス・スアレルを超える最多記録を達成したばかりのロナウドも更に差をつけたいと張り切っているはずですし、やっぱり今年もクラブ世界王者は彼らになるんじゃないんでしょうか。 ▽え、そんなこんなでマドリーが遠い中東の地でスポットライトを浴びている間、マドリッドの他のチームは何をしていたのかって?いやあ、丁度この週末、その兄貴分とのミニダービーの節に当たっていたレガネスはその試合が来年まで行われないため、来週火曜の年内最終戦、レバンテとのアウェイ戦を目指して、ひたすら練習していますが、最初にお話しした通り、土曜にアラベス戦を迎えるアトレティコには前節をケガでお休みしたグリーズマンが復帰という朗報が。そのベティス戦で決勝点を挙げたサウールも週前半は筋肉痛でジムにこもっていたりしたものの、金曜に発表された招集リストに間に合うように回復。今回、負傷欠場するのはヒメネスのみですが、いくらシメオネ監督でもホームで4人もCBを投入して、守り抜く采配はしないでしょうからねえ。 ▽相手もアベラルド新監督の元で再生、ここリーガ2試合に連勝して順位を18位へと上げ、ヘタフェを32強敗退させたコパ・デル・レイの試合も含めると3連勝と乗っているアラベスとはいえ、極寒の中、応援に駆けつけるファンを失望させることはないのでは?ちなみに金曜の記者会見でシメオネ監督は最近、レキップ(フランスのスポーツ紙)へのインタビューで移籍の噂が絶えないグリーズマンに関して、「彼のような選手が出て行きたいと言うなら、邪魔はできない」と発言したことを肯定。これはもう、ファルカオ(現モナコ)、ジエゴ・コスタ(2014年リーガ優勝後にチェルシーへ移籍)、ラウール・ガルシア(現アスレティック)らで経験した道で、「No puedo cerrar la puerta a alguien que nos dio la vida/ノー・プエド・セラール・ラ・プエルタ・ア・アルギエン・ケ・ノス・ディオ・ラ・ビダ(ウチに命を懸けてくれた選手の扉を閉ざすことはできない)」からだそうですが、でもそれって、来年の夏以降の話ですよね。 ▽だってえ、今はようやく引き分け地獄を脱して、リーガ順位もお隣さんに勝ち点2差で単独3位。鬼の居ぬ間の洗濯で今節は更にリードを広げてやろうという野望のみならず、クラシコのおかげで首位バルサとの差を6から3に縮められれば、3年ぶりの優勝の可能性も出てくるアトレティコですからね。ファンも年が明ければ、グリーズマンとFIFA処分明けで出場できるようになるジエゴ・コスタの2人でコパ快進撃、決勝開催スタジアムに選ばれる予定のワンダでの戴冠や、2月から始まるヨーロッパリーグ決勝トーナメントでもあわよくばと期待に満ちているんですよ。大体、グリーズマンはチームを後にした偉大な先人たちと違って、まだタイトル獲得に貢献していないのですから、やっぱりこの冬の移籍は時期尚早かと。 ▽まあ、その辺はリーガがクリスマスのparon(パロン/停止期間)に入ってからでもあれこれ出て来るでしょうが、とりあえず今は日曜正午(日本時間午後8時)にジローナ戦を控えるもう1つの弟分、ヘタフェの様子もお伝えしておかないと。実は今週は木曜に彼らを偵察に行った私ですが、クラブのオフィシャルページの練習予定(http://www.getafecf.com/PrimerEquipo/Entrenamientos.aspx)に当日朝には書いてなかったにも関わらず、非公開セッションとのことで練習場の入り口で追い返されてしまうことに。 ▽いやあ、そうは言ってもグラウンドの向こうの丘にはいつも散歩している近所の住人がいるし、私も探せばたどり着けたはずですけど、その日はあいにく天気も冴えませんでしたしね。すごすご引き返すことにしたんですが、先週のエイバル戦でとうとう途中出場。ケガが完治した柴崎岳選手に会いたくて日本から来て、日を改めて出直すことができないファンがこのような目に遭った場合は練習場ゲート、あるいはコリセウム・アルフォンソ・ペレスの右側にある出入り口で待機するのがお勧め。選手たちは歩いてスタジアムのロッカールームとグラウンドを行き来するため、見逃すことはありませんし、ここでダメでも正面ゲート右手の関係者用駐車場出口という最終チャンスがありますからね。 <div style="text-align:center;"><img src="http://image.ultra-soccer.jp/800/image/get20171216_13_tw3.jpg" style="max-width: 100%;"></div>▽ちなみにヘタフェの練習時間が長すぎて、すっかり体が冷えてしまったという人に教えてあげたいのは最近、マドリッドにも流行が訪れたらしいラーメン屋さんで、メトロのオペラ駅近くにあるRamen Kagura(calle de las Fuentes 1/ フエンテス通り1)と、同じ道をもう少し上がったところにあるKurayaは兄弟店のようで、ツケ麺が売りの後者では1度、私も柴崎選手と遭遇してビックリしたことが。メニュー・デル・ディア(本日の定食)は9.8ユーロ(約1300円)、トンコツ系で麺増量とかも頼めるため、どちらかというと男性向きでしょうか。 <div style="text-align:center;"><img src="http://image.ultra-soccer.jp/800/image/get20171216_13_tw1.jpg" style="max-width: 100%;"></div>▽もう1つはサンティアゴ・ベルナベウに隣接したショッピングモールに入っている爛々亭(Ranrantei)で、いやあ、ここは営業時間が午後1時から3時と妙に短いのが欠点なんですが、スタジアムツアーの後に寄ったりするには便利かと。定食は12.50ユーロ(約1600円)、本格的な家系ラーメンですが、お店はフードコートにあるような感じで1人でも入りやすいかも。あと、私が気に入っているのはビルバオ駅近くにオープンしたてのKonnichiwa(Calle de Fuencarral, 98/フエンカラル通り98)で、ここは中国人経営なんですが、コンセプトが居酒屋。「鳥焼いた丼」には笑わせられましたが、メニューだと11.50ユーロ(約1500円)で食べられる、あっさり系スープのラーメンはスペイン料理でこってりしすぎた胃にはありがたいんです。 <div style="text-align:center;"><img src="http://image.ultra-soccer.jp/800/image/get20171216_13_tw2.jpg" style="max-width: 100%;"></div>▽あ、そんなことを話しているうちにヘタフェの情報がどっかに行ってしまったんですが、このジローナ戦は同じ勝ち点20で並んでいる者同士の対決で、ボルダラス監督のチームにとってはやはり同じ位置にいて、今節試合のないお隣さん、レガネスに差をつける絶好のチャンス。EL出場圏6位のビジャレアルともたった勝ち点1差ですしね。ただ、ここに来るまで、ホルヘ・モリーナとアンヘル、FW2人の起用で成功してきただけに、柴崎選手が元気になったとはいえ、今回、先発に喰い込めるかはまだ不明。いやあ、ベイルみたいに途中出場でおいしいところをさらっていくのも悪くはないと思いますが、丁度、パチェコも復帰したため、アタッカーは激戦区になっちゃいましたからね。何はともあれ、マドリッド勢の試合が2つしかない今週末、どちらも白星を飾ってくれるといいのですが。<hr>【マドリッド通信員】 原ゆみこ 南米旅行に行きたくてスペイン語を始めたが、語学留学以来スペインにはまって渡西を繰り返す。遊学4回目ながらサッカーに目覚めたのは2002年のW杯からという新米ファン。ワイン、生ハム、チーズが大好きで近所のタパス・バルの常連。今はスペイン人親父とバルでレアル・マドリーを応援している。 2017.12.16 12:30 Sat
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【倉井史也のJリーグ】逆境のまっただ中にいるんだぜ日本代表は?! の巻

▽CWC終わって寂しいぜ! いや、終わってないけど、浦和が負けて寂しいぜ! まぁ、去年も地元リーグ優勝チームが準優勝まで行ってるわけですから、どこぞのチャンピオンズリーグの意義とか価値とかいろいろぶっ飛ばしてしまう要素はたっぷりあるわけですしね。本田圭佑も決勝行けなかったし、あーなんか、年末の楽しみがちょっと早めに終わっちゃった……って、E-1選手権、ごめんね。 ▽か、考えようによっちゃですよ、いつもは入手の難しい日本代表戦が、当日券でも手に入っちゃうわけですよ。急いで行って席取りしなくてもいいし。特に第一試合やってるときなんて、売店もトイレも悠々なわけです。……ここまでは。16日はどうかな? きっと違うよね。だって優勝を賭けて宿敵韓国との大一番ですよ。しかもここまで北朝鮮戦では90+3分に決勝ゴール、中国戦では84分に小林悠、88分に昌子源がともに劇的なゴールを奪って、90+3分に失点したけど勝利したって、すごいドラマあるじゃないですか。 ▽何? なぜみんなそんなに冷めてるの? 寒いから? 海外組がいないから? Jリーグが終わっても燃え尽きた後だから? ▽かつては東アジアサッカー選手権、2013年以降は東アジアカップ、そして今回はE-1選手権と、いずれ分裂するかもしれないACLの東半分の結束を図ってる感じのするこの大会でも、日本と韓国は激闘を演じてきたのですよ。 2003年:0-0の引き分け 2005年:1-0で日本の勝ち [得点者:中澤佑二] 2008年:1-1の引き分け [得点者は山瀬功治] 2010年:1-3とぼろ負け [得点者:遠藤保仁] 2013年:2-1と雪辱 [得点者は柿谷曜一朗の2ゴール] 2015年:1-1の引き分け [得点者は山口蛍] ▽とE-1選手権での韓国との勝敗は2勝1敗3引き分けと日本のリード。ところが6得点6失点と、得失点はプラスマイナスゼロなのでした。 ▽今回の対戦は、韓国が勝点4なのに対して日本は勝点6。引き分けでもこの大会のチャンピオンになるっつー条件なので、日本が有利。でもね、たくさんの韓国メディアも詰めかけてますし、記者室もなかなかの緊張感があるんですよね。すごいライバル心剥き出しだろうし、そうでなくっちゃ韓国人選手もワールドカップメンバーには入れないだろうし、これに負けちゃう日本人選手もワールドカップには行けないだろうし。 ▽で、韓国人の記者に聞いたんです。ワールドカップの組み合わせは大変だねって。そうすると「お互い様だよね」「うちは逆境に強いからね」というお返事でした。確かに今、日本代表は逆境のまっただ中。16日は2万人は超えてほしいなぁ。あ、逆境ってそこじゃない?<hr>【倉井史也】 試合当日は、はやる気持ちを抑えられずスタジアムに受け付け開始と同時に駆けつけ、選手のバスが両方行ってしまうまで名残を惜しむ。自慢は対戦カードの因縁をよく覚えていること。特にサポーター寄りのネタが得意。パッと見は若いが実は年齢不詳のライター。 2017.12.15 12:00 Fri
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【六川亨の日本サッカー見聞録】Jの秋春制移行は凍結されたが、十分な議論が尽くされたのか

▽12月9日から始まった東アジアE-1選手権も、男子は明後日が最終日。日本は12日の中国戦を2-1で勝利して2連勝を飾り、首位に立っている。最終戦の相手である韓国は1勝1分けのため、日本は勝てばもちろん引き分けでも2大会ぶり2度目の優勝が決まる。この東アジアE-1選手権については来週のコラムに譲るとして、今週は12日に行われたJリーグの理事会で、秋春制へのシーズン移行を実施しないことを正式に決めたことを取り上げたい。 ▽もともとJリーグのシーズン移行は、2000年代後半に実施するプランは古くからあった。しかし歴代のチェアマンは誰も手をつけることなく現行の方式で大会を重ねてきた。秋春制への移行を強く訴えたのはJFA(日本サッカー協会)の田嶋会長で、一昨年の会長選挙の公約の1つでもあった。 ▽しかしながら現実には降雪地域のチームの練習や試合をどうするか、年度がまたがることによる試合会場確保の難しさ、親会社の決算期とのズレ、高校や大学生らの卒業後のブランクなど問題点は多々あった。 ▽田嶋会長は降雪地域の冬季の試合は温暖な地域でアウェイゲームを組むことで解消できるし、公共施設の場合のスタジアム確保も、現在行われているプロバスケットボールのBリーグがクリアしているので、そちらを参考にしてはどうかと提案した。 ▽むしろ田嶋会長は、そうした現場での問題以前に、ヨーロッパとシーズンを合わせることで、W杯など国際大会で国内のリーグ戦を中断せずにすむこと、W杯やアジアカップの予選をFIFA国際Aマッチデーのカレンダーに合わせやすいこと、選手や監督の行き来にタイムラグが生じないことなど、どちらかというと日本代表の活動がストレスなく行えることを主眼に置いていた。JFAの会長だけに、当然と言えば当然だ。 ▽そして移行は12月にW杯が開催される2022年をテスト的なシーズンとし、2023年からの実施を訴えた。というのも2023年は6月に中国でアジアカップが開催される可能性が高いからだ。さらにFIFAは、コンフェデレーションズカップを2021年で終了し、代わりにクラブW杯を4年に1回、24チームによる大会へ衣替えするプランを持っている。 ▽各大陸王者6チームに開催国と招待国の8チームでは、試合数も限られ、収益にも限界がある。それならクラブW杯を拡大して24チームにした方が、入場料収入もテレビ放映権も倍増が見込めるからだ。 ▽それに対してJリーグ側は、先にあげた現実的にクリアしなければならない問題に加え、豪雪地域の設備投資には500億円もかかるという試算を出した。これらの費用をどこが負担するのかという、ものすごく高いハードルもある。こうした事情を踏まえ、実行委員の8割の反対により、Jリーグは秋春制へのシーズン移行を却下した。村井チェアマンは「サッカーの出来る期間が(中断期間が2回あり)1か月ほど短くなる。全体の強化や、ファンとの関係性を考えても大事なこと」などと見送りの理由を説明した。 ▽過去、JSL(日本サッカーリーグ)は、秋春制を採用していた時期があった。1985年から最後のリーグ戦となった90―91シーズンの6年間だ。きっかけは85年に日本がメキシコW杯のアジア予選を勝ち抜き、最終予選に進出したことだった。翌86-87年は6月にメキシコW杯があり(日本に関係はないが)、9月にはソウルでアジア大会があった。そこでJSLは日本代表の強化のため自ら秋春制を採用した。 ▽87-88年は日本がソウル五輪の最終予選に勝ち進んだため、リーグ戦は10月17日に開幕と、当時はリーグ側が代表強化のためにスケジュールを変更した。その理由としては、これまで“夢”でしかなかったW杯が現実的になり、五輪出場の可能性も高まったため、代表優先の機運が生まれたこと。当時のJSLで一番北にあったのは茨城県の住友金属で、雪の影響はさほど受けなかったこと。決算も親会社任せのアマチュアだったため融通が利いたことなどが考えられる。加えてプロ化への動きが本格化したことも――JSLは発展的解消の運命にあった――日程を変更しやすかった一因かもしれない。 ▽ともあれ、Jリーグの春秋制継続は正式に決まった。田嶋会長も、「あくまで提案であって、Jリーグの決定を尊重する」と常々言っていた。そして秋春制へのシーズン移行は当分の間、凍結される。何か大きな問題でも生じない限り、再燃することはないだろう。 ▽ただ、果たして十分に議論を尽くしての決定かどうかには、かすかな疑問が残る。それは、決定を下した実行委員(つまりは代表取締役社長)のうち何人が本気でクラブの将来を考えたのかということだ。 ▽例えば札幌の野々村芳和氏や湘南の水谷尚人氏のように、背水の陣でクラブ運営に携わっている方々がいる。その一方で、親会社からの出向で、数年後には親会社に戻るか子会社へ転出する実行委員もいるだろう。彼らの間には、クラブに対する温度差は必然的に生じているはずだ。その温度差を踏まえての今回の決定かどうかに疑問を感じざるをえなのいだ。<hr>【六川亨】1957年9月25日生まれ。当時、月刊だった「サッカーダイジェスト」の編集者としてこの世界に入り、隔週、週刊サッカーダイジェストの編集長や、「CALCIO2002」、「プレミアシップマガジン」、「サッカーズ」の編集長を歴任。現在はフリーランスとして、Jリーグや日本代表をはじめ、W杯やユーロ、コパ・アメリカなど精力的に取材活動を行っている。日本サッカー暗黒の時代からJリーグ誕生、日本代表のW杯初出場などを見続けた、博識ジャーナリストである。 2017.12.14 18:00 Thu
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【日本代表コラム】デビュー組が見せた可能性、意識が変化も違いを生む“判断力”

▽北朝鮮戦に続いて、我慢の展開が続いた中国戦。終盤の2ゴールで2-1と勝利し、連勝を飾った。中2日での試合となったが、北朝鮮戦と比べると、選手の意識が格段に向上した一戦だったように思う。 ▽北朝鮮戦では、前線こそ最終ラインの裏を狙う動きを繰り返したが、後方からの縦パス、裏を狙ったパスがほとんど見られることはなかった。しかし、この試合では前線の動きに対し、後方からの積極的なパスが見られた。選手構成を代えたことも、大きく影響したように思う。 <span style="font-weight:700;">◆代表デビュー組が見せた新たな可能性</span><div style="text-align:center;"><img src="http://image.ultra-soccer.jp/800/image/get20171212_1000_tw2.jpg" style="max-width: 100%;" class="yui-img"></div><div style="text-align:right;font-size:x-small;">Getty Images<hr></div>▽北朝鮮戦から7選手を入れ替えた日本代表。DF植田直通(鹿島アントラーズ)が右サイドバック起用されるというサプライズに加え、DF三浦弦太(ガンバ大阪)、DF山本脩斗(鹿島アントラーズ)と、最終ラインはDF昌子源(鹿島アントラーズ)以外は代表デビュー戦となった。さらに、左サイドに緊急招集を受けていたMF土居聖真(鹿島アントラーズ)を起用。5名が日本代表デビューを果たした。 ▽この試合で最も驚きだったのは植田だ。鹿島では昌子とセンターバックでコンビを組み、U-23日本代表でもセンターバックでプレー。日本代表合宿では右サイドバックに入ることもあったが、あくまでもトレーニングだと思われていた。しかし、この日は右サイドバックで先発。中国の左サイドの攻撃に対する守備と高さへの対応かと思われたが、植田は攻撃面で力を発揮した。 ▽右サイドからのアーリークロスや、縦パスを意識的に狙うシーンが目立ち、22分には意表をついたクロスからFW小林悠(川崎フロンターレ)が合わせるもゴールならず。65分にはFW伊東純也(柏レイソル)とのワンツーから絶妙な抜け出しを見せ、あわやというクロスを送った。守備面では何度か攻め込まれるシーンはあったが、代表デビュー、右サイドバックということを考えれば及第点以上の活躍だった。 <div style="text-align:center;"><img src="http://image.ultra-soccer.jp/800/image/get20171212_1000_tw3.jpg" style="max-width: 100%;" class="yui-img"></div><div style="text-align:right;font-size:x-small;">Getty Images<hr></div>▽そして、センターバックとしてプレーした三浦もまずまずの出来だった。G大阪で見せるフィードは味方につながるシーンは少なかったが、狙いとチャレンジは評価できる。守備面でも冷静な対応や、高さの勝負でも問題ない部分を見せた。繋ごうとしすぎるあまり、終了間際のPK献上のきっかけを作ってしまったが、経験を積めば解消されるだろう。大崩れしなかった点は、プラス材料だ。 ▽左サイドバックの山本は、持ち前の対人守備の強さを披露。最後のPK献上は残念だったが、後半は積極的にボックス付近まで上がってプレー。32歳での代表デビューとなったが、これまでの経験をしっかりと日本代表のピッチで披露した。そして、同サイドでプレーした土居もサイドからカットインするプレーなど、攻撃面で違いを見せた。デビュー戦としては上出来だといえる。 <span style="font-weight:700;">◆意識が変わった攻撃</span><div style="text-align:center;"><img src="http://image.ultra-soccer.jp/800/image/get20171212_1000_tw4.jpg" style="max-width: 100%;" class="yui-img"></div><div style="text-align:right;font-size:x-small;">Getty Images<hr></div>▽前述の通り、初戦の北朝鮮戦に比べて、ハリルホジッチ監督が求める裏への動き、スペースを使った動き、縦に早い攻撃を仕掛けるシーンは増えていた。 ▽インサイドハーフに入ったMF大島僚太(川崎フロンターレ)は、相手ディフェンスの間に顔を出し続け、ポジショニングの良さを見せた。ボールに絡む回数を増やし、1トップに入った小林とのコンビも見せていた。大島が入ったことで、攻撃面の前への意識は上がり、縦や裏を狙うシーンは増えた。27分にミドルシュートを放った時に左ハムストリングを負傷し、MF井手口陽介(ガンバ大阪)と交代。残念な交代となったが、自身の持ち味は出せていた。 <div style="text-align:center;"><img src="http://image.ultra-soccer.jp/800/image/get20171212_1000_tw5.jpg" style="max-width: 100%;" class="yui-img"></div><div style="text-align:right;font-size:x-small;">Getty Images<hr></div>▽また、大島に代わって入った井手口も、北朝鮮戦以上に攻撃面での持ち味を出せていた。高い位置を取ったこともあり、前からの守備、そして前線に上がっていくシーンが増えた。また、高いシュート意識を見せ、ミドルシュートを連発。相手ディフェンスの意識を自分に向けることができ、周りの攻撃陣は試合が進むごとに動きやすくなった印象を受けた。攻撃面に関しては、最終戦の韓国戦で更なる進化に期待したい。 <span style="font-weight:700;">◆気になる試合運び</span><div style="text-align:center;"><img src="http://image.ultra-soccer.jp/800/image/get20171212_1000_tw6.jpg" style="max-width: 100%;" class="yui-img"></div><div style="text-align:right;font-size:x-small;">Getty Images<hr></div>▽攻撃の意識が変わり、終盤まで粘った展開からの勝利。プラス材料は多いといえる。ヴァイッド・ハリルホジッチ監督は「すごく美しい勝利だった。しっかり良いプレーができたと思う」と試合後に語っていた。確かに、連勝を飾れたこと、そしてプレーが改善されたことはプラスだ。 ▽一方で、気になる部分も北朝鮮戦に続いて見えてきた。それは、「プレーの判断」だ。これもJリーグでプレーしていることが多少影響しているといえる。最後のPKを与える前のプレーもその1つだ。特に守備面では、ライン外に蹴りだすのか、繋ぐのか、ロングボールを蹴るのか、ハッキリしなければいけないシーンでの判断が気になるシーンもあった。Jリーグに比べ、国際舞台では相手のプレスのスピードや強度が変わってくる。そういった場面での判断力のスピードに関しては、さらにレベルアップする必要があるだろう。 ▽そして、攻撃面ではペースを変えられず一辺倒になってしまうことだ。裏を狙う、縦パスを入れるというプランを遂行するために、意識の変化は見られた。しかし、そのために何度も同じ形で攻撃を仕掛けるあまり、相手の守備も対応ができ、前半の30分過ぎからは中国の押し込まれる時間帯が続いてしまった。 ▽また、狙い過ぎるためにセカンドボールへの反応や、プレスの強度が下がる傾向も見られた。試合の流れをスムーズにすることができたものの、まだまだ課題は残されている。何れにしても、ピッチに立っている選手の“判断”が重要となる。 ▽得点シーンは、その“判断”が上手くいった例だろう。1点目は、ルーズボールを拾ったMF倉田秋(ガンバ大阪)がパスを狙う前に、ターンして前を向いた。これにより、FW川又堅碁(ジュビロ磐田)への縦パスが入り、最終的には小林がネットを揺らした。小林も、川又の衛星的な役割を意識していたために、あのゴールが生まれた。 <div style="text-align:center;"><img src="http://image.ultra-soccer.jp/800/image/get20171212_1000_tw7.jpg" style="max-width: 100%;" class="yui-img"></div><div style="text-align:right;font-size:x-small;">Getty Images<hr></div>▽2点目も同様だ。昌子の鮮やかなロングシュートはお見事だったが、その前のボール処理が素晴らしかった。胸トラップし、相手が近くにいたにもかかわらず、1つ前に持ち出した。そのおかげでシュートチャンスが生まれ、右足を一閃。スーパーゴールが誕生した。個々人の良い判断は見えてきたが、チームとして出せるようになるまでは時間がかかるだろう。試合運びでも巧者ぶりを見せることができなければ、最終節の韓国代表戦は、これまで以上の厳しい戦いとなるに違いない。 ▽ワールドカップで戦うということを考えても、判断の選択、判断をするスピードというのは必須の能力となる。Jリーグでは、全体的に判断のスピードが高くなく、多少遅くても対応できてしまう場面が多い。しかし、その能力を身につけることができれば、より自身の特徴をだすことができ、ワンランク上の選手になれるはずだ。韓国戦に勝利すれば、2大会ぶりの優勝となる。2年前は惨敗に終わっているだけに、最後もしっかりと勝利し、タイトルを獲得したいところだ。 《超ワールドサッカー編集部・菅野剛史》 2017.12.13 07:30 Wed
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【六川亨の日本サッカー見聞録】古豪復活を予感させる北朝鮮のパスサッカー

▽12月9日に開幕した東アジアE-1選手権の男子サッカーで、日本は初戦の北朝鮮戦を1-0で下して白星発進をした。しかし試合内容は北朝鮮の猛攻に防戦一方。GK中村(柏)の再三にわたるファインセーブがなければ大敗してもおかしくない試合だった。 ▽日本は中村を始め、DF室屋(FC東京)やFW伊東(柏)、阿部(川崎F)ら4人が代表デビューを果たすなど、国内組の急造チーム。このためチームとしての完成度は低い。それは試合後のハリルホジッチ監督も認めていた。 ▽その一方で、北朝鮮は、かつてないほど洗練されたチームだったことも日本が苦戦した一因だ。2年前の大会では長身FWにロングボールを集めるスタイルに敗れたが、アンデルセン監督はていねいにパスをつなぐサッカーで北朝鮮を再生。プレスを受けても苦し紛れのクリアではなく、確実に味方につないでいた。 ▽FWキム・ユソンはスピードを生かした突破で何度も昌子(鹿島)と谷口(川崎F)のCBを脅かしたし、MFリ・ヨンジ(讃岐)はボランチとしてゲームを組み立てながら、2列目からの飛び出しで日本ゴールを脅かした。かつて川崎Fでプレーした東京朝鮮高校出身のアン・ビョンジュン(熊本)が「内容的にはよかったけど、勝ちにつながらなかったのは悔しい」と話したように、日本は井手口(G大阪)の一発に救われた試合でもあった。 ▽日本対北朝鮮戦の前には韓国対中国戦が行われた(2-2)が、4チームの初戦を見る限り、チームとしての完成度は北朝鮮が一番高いだろう。「平日は代表チームで練習し、週末は各クラブの試合がある」とアンデルセン監督が話したように、共産圏ならではの強化方法だ。 ▽そんな北朝鮮は、かつてはアジアの盟主だった時代もある。W杯の初出場こそ韓国(1954年)に譲ったものの、1966年のイングランドW杯ではアジア勢として初のベスト8に進出(当時は16か国で開催)。グループリーグではイタリアを1-0で破ってグループリーグ敗退に追い込んだ。ベスト8という記録は2002年の日韓W杯で韓国ばベスト4に進出するまで、長らくアジアの記録となっていた。 ▽当時の北朝鮮のスタイルは、ショートパスをつなぐ当時としてはモダンなサッカーだった。それは東京朝鮮高校にも受け継がれ、1960~1970年代のチーム最強を誇り、「幻の高校チャンピオン」と呼ばれていた。というのも当時は高校選手権やインターハイに出場することが認められていなかったからだ。 ▽これは余談だが、当時の主力選手で構成されたシニアチーム、高麗FCは東京都リーグでも抜群の強さを誇っていた。ショートパスをていねいにつないで崩してくるスタイルは伝統とも言える。そんな彼らのスタイルを「シニアのサッカーは蹴って走るのではなく、パスをつないで楽しく、強いチームを目指そう」とした。 ▽帝京高校や本郷高校のOBチームを始め、中央大学のOBチームで結成され、金田さんや菅又さん、早野さんらのいるチームは高麗FCと善戦したものの、なかなか彼らの牙城を崩すことはできない。その結果、たどりついた結論は「同じサッカースタイルでは勝てない」ということだった。 ▽高麗FCと戦うには、中盤を省略してロングボールでカウンターを狙う――いわゆるキック&ラッシュの古典的なスタイルだった。ここらあたり、ハリルホジッチ監督の思想と近いものがあるのかもしれない。初戦は不運な一発に沈んだものの、古豪復活を予感させる「レッド・デビル」だった。 ▽ちなみにサッカーダイジェスト時代、メキシコW杯1次予選(ホームは原博実のゴールで1-0の勝利)で北朝鮮に「レッド・デビル」とタイトルをつけたら、在日本朝鮮人総練合会(朝鮮総連)からクレームが来た。彼らいわく「我々を悪魔扱いするのか」と言われたので、マンチェスター・Uなどの強豪と同様に敬意を込めたニックネームであることを説明したら納得してくれた。 ▽代表チームの来日の際には、東京の北区にある東京朝鮮高校で親睦のサッカーと、試合後は校庭で焼き肉パーティーを催してくれた。核実験や弾道ミサイルの発射で国際的に緊張が高まっているものの、ハリルホジッチ監督が試合後「サッカーの世界で、友情や信頼、そして喜びといったものを伝えたい」と述べたように、政治的な話は抜きにして北朝鮮のサッカーを楽しみたいと思う。<hr>【六川亨】1957年9月25日生まれ。当時、月刊だった「サッカーダイジェスト」の編集者としてこの世界に入り、隔週、週刊サッカーダイジェストの編集長や、「CALCIO2002」、「プレミアシップマガジン」、「サッカーズ」の編集長を歴任。現在はフリーランスとして、Jリーグや日本代表をはじめ、W杯やユーロ、コパ・アメリカなど精力的に取材活動を行っている。日本サッカー暗黒の時代からJリーグ誕生、日本代表のW杯初出場などを見続けた、博識ジャーナリストである。 2017.12.12 13:01 Tue
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