【日本サッカー見聞録】五輪追加招集選手の不思議
2015.12.31 18:05 Thu
▽早いもので、2015年も今日で終わった。この1年間、当コラムを読んでいただいた読者の皆さんには大変お世話になり、ありがとうございました。
▽12月31日の全国高校サッカー選手権大会1回戦では、青森山田(青森)が大社(島根)に0-2から3点を奪い逆転勝ちしたものの、優勝経験のある四日市中央工(三重)は先制しながら明秀日立(茨城)に1-2で敗れ、初戦で姿を消した。明日は天皇杯決勝、そして2日からは高校選手権の2回戦と、サッカーファンの楽しみはエンドレスだ(取材する方もエンドレス)。
▽さて2016年と言えばオリンピック・イヤーでもある。1月13日からドーハでアジア最終予選が始まるが、U-23日本代表の追加メンバー2名が12月30日に発表された。一人は東京Vのボランチ三竿、そしてもう一人は鹿島MFの豊川だった。また福岡のGK中村が負傷のため磐田の牲川に変更された。この2人の名前を聞いて意外に思ったのは私だけではないだろう。
▽なぜなら浦和を天皇杯決勝に導いた、キレ味鋭い突破が武器の関根や、松本で成長したレフティ・ドリブラーの前田、さらには鳥栖の鎌田らが選出されると予想していたからだ。
▽手倉森監督は記者会見で「三竿はセンターバックの可能性もあるが、高さや身体能力のある選手がボランチとして成長する期待を込めて」と説明し、「関根、鎌田は(前線の他の選手と)似たような持ち味になるが、飛び出しなど違った特徴を豊川に見いだした」と話したらしい。
▽豊川にしても、3月のアジア1次予選で呼ばれた以降、ケガなどもあり11月下旬の神奈川キャンプ、12月上旬のカタール・UAE遠征の招集メンバーからも漏れている。ようやく12月下旬の沖縄キャンプで復帰を果たした選手だ。
▽個人的な意見として、鎌田は湘南とのテストマッチでスピーディーなドリブル突破だけでなく、正確なクロスを供給してトップ下でもプレーできることを証明した。ただ、天皇杯準々決勝では交代出場だったため、故障を抱えている可能性はある。
▽関根と前田が選ばれなかった本当の理由は、チームが招集を拒んだからではないだろうか。浦和は今年2月25日のACL第1節でシーズンをスタート。天皇杯で決勝に進出したため、もしも関根が五輪の最終予選に参加して勝ち進んだら1月下旬まで試合が続く。そして2016年のJ1リーグは2月27日に開幕と例年より早まったため、キャンプは1月下旬にスタートするチームが多い。まるまる1年間稼働する、超ハードスケジュールだ。
▽いくら関根が若いからといって、五輪最終予選に参加したらオフなしで新シーズンを迎えることになる。チームがオーバーユース症候群を危惧するのは当然だろう。
▽一方の前田は、レンタル先の松本(保有元は東京V)から新シーズンは横浜FMへ完全移籍したため、チームはキャンプへの合流を優先して招集を拒んだのではないだろうか。それだけ前田に対しての期待が大きいということでもある。
▽海外組・国内組を問わず、日本代表なら選手自身が拒否しない限り選手の招集に強制力はあるが、五輪代表となると各チームの“協力”がないとキャンプにも呼べないのが実情だ。ただ、そうしたハンデがあっても手倉森ジャパンには何とか結果を出して欲しいと願わずにはいられない。
▽これまでアンダー世代が何度も痛い目に遭ってきたポゼッション・サッカーは捨て、初戦の北朝鮮戦や第3戦のサウジアラビア戦は守備重視で手堅く勝点を拾うスタイルで“結果”を残して欲しい。
【六川亨】1957年9月25日生まれ。当時、月刊だった「サッカーダイジェスト」の編集者としてこの世界に入り、隔週、週刊サッカーダイジェストの編集長や、「CALCIO2002」、「プレミアシップマガジン」、「サッカーズ」の編集長を歴任。現在はフリーランスとして、Jリーグや日本代表をはじめ、W杯やユーロ、コパ・アメリカなど精力的に取材活動を行っている。日本サッカー暗黒の時代からJリーグ誕生、日本代表のW杯初出場などを見続けた、博識ジャーナリストである。
▽12月31日の全国高校サッカー選手権大会1回戦では、青森山田(青森)が大社(島根)に0-2から3点を奪い逆転勝ちしたものの、優勝経験のある四日市中央工(三重)は先制しながら明秀日立(茨城)に1-2で敗れ、初戦で姿を消した。明日は天皇杯決勝、そして2日からは高校選手権の2回戦と、サッカーファンの楽しみはエンドレスだ(取材する方もエンドレス)。
▽なぜなら浦和を天皇杯決勝に導いた、キレ味鋭い突破が武器の関根や、松本で成長したレフティ・ドリブラーの前田、さらには鳥栖の鎌田らが選出されると予想していたからだ。
▽手倉森監督は記者会見で「三竿はセンターバックの可能性もあるが、高さや身体能力のある選手がボランチとして成長する期待を込めて」と説明し、「関根、鎌田は(前線の他の選手と)似たような持ち味になるが、飛び出しなど違った特徴を豊川に見いだした」と話したらしい。
▽ボランチには遠藤と大島という不動の2人がいるし、井手口も控えている。センターバックにも奈良、岩波、植田らがいる。例えその3人に不安があったとしても、東京Vではボランチでプレーする三竿(シーズン中に何度かセンターバックでもプレー)をこの後に及んでコンバートする理由が不明だ。何より最終予選で「成長する期待を込めて」選手を招集できる余裕が現チームにあるとはとても思えない。
▽豊川にしても、3月のアジア1次予選で呼ばれた以降、ケガなどもあり11月下旬の神奈川キャンプ、12月上旬のカタール・UAE遠征の招集メンバーからも漏れている。ようやく12月下旬の沖縄キャンプで復帰を果たした選手だ。
▽個人的な意見として、鎌田は湘南とのテストマッチでスピーディーなドリブル突破だけでなく、正確なクロスを供給してトップ下でもプレーできることを証明した。ただ、天皇杯準々決勝では交代出場だったため、故障を抱えている可能性はある。
▽関根と前田が選ばれなかった本当の理由は、チームが招集を拒んだからではないだろうか。浦和は今年2月25日のACL第1節でシーズンをスタート。天皇杯で決勝に進出したため、もしも関根が五輪の最終予選に参加して勝ち進んだら1月下旬まで試合が続く。そして2016年のJ1リーグは2月27日に開幕と例年より早まったため、キャンプは1月下旬にスタートするチームが多い。まるまる1年間稼働する、超ハードスケジュールだ。
▽いくら関根が若いからといって、五輪最終予選に参加したらオフなしで新シーズンを迎えることになる。チームがオーバーユース症候群を危惧するのは当然だろう。
▽一方の前田は、レンタル先の松本(保有元は東京V)から新シーズンは横浜FMへ完全移籍したため、チームはキャンプへの合流を優先して招集を拒んだのではないだろうか。それだけ前田に対しての期待が大きいということでもある。
▽海外組・国内組を問わず、日本代表なら選手自身が拒否しない限り選手の招集に強制力はあるが、五輪代表となると各チームの“協力”がないとキャンプにも呼べないのが実情だ。ただ、そうしたハンデがあっても手倉森ジャパンには何とか結果を出して欲しいと願わずにはいられない。
▽これまでアンダー世代が何度も痛い目に遭ってきたポゼッション・サッカーは捨て、初戦の北朝鮮戦や第3戦のサウジアラビア戦は守備重視で手堅く勝点を拾うスタイルで“結果”を残して欲しい。
【六川亨】1957年9月25日生まれ。当時、月刊だった「サッカーダイジェスト」の編集者としてこの世界に入り、隔週、週刊サッカーダイジェストの編集長や、「CALCIO2002」、「プレミアシップマガジン」、「サッカーズ」の編集長を歴任。現在はフリーランスとして、Jリーグや日本代表をはじめ、W杯やユーロ、コパ・アメリカなど精力的に取材活動を行っている。日本サッカー暗黒の時代からJリーグ誕生、日本代表のW杯初出場などを見続けた、博識ジャーナリストである。
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