【コラム】足りなかったもの《ACL》
2015.10.26 12:00 Mon
▽G大阪は21日、ホームの万博記念競技場でAFCチャンピオンズリーグ(ACL)2015準決勝第2戦の広州恒大戦に臨み、ゴールレスドローで試合を終えた。この結果、2戦合計スコアは1-2となりG大阪の準決勝敗退が決定している。そして、Jリーグ勢で唯一生き残っていたG大阪の敗退により、7年ぶりとなるJクラブのアジア制覇という夢も潰えた。
▽アウェイでの第1戦を1-2で落としていたG大阪にとって、今回の第2戦では1-0の勝利か、2点差以上での勝利が決勝進出への条件だった。要するに、ゴールを奪わなければ決勝への道が閉ざされる状況だったが、長谷川健太監督はエースのFW宇佐美貴史をベンチに置き、ベテランのMF二川孝広を2列目の左で先発起用。1トップの位置にFWパトリックを置き、ボランチの一角にMF遠藤保仁を配する[4-2-3-1]の布陣を採用した。
▽予想外のスターティングメンバーに、不安と期待が入り混じる中でスタートした試合は、引き分けでも勝ち上がれる広州恒大がリスクを避けた戦いを選択してきたことにより、G大阪が素早い攻守の切り替えからペースを握った。二川を起用したことで、よりポゼッションで相手を圧倒できていた反面、ボックス近辺で“勝負できる”宇佐美をベンチスタートとしたことが良くも悪くも試合に影響を及ぼしたように思う。
▽長谷川監督は試合後、宇佐美をベンチスタートとした理由について、「貴史の今の状態を見て、ベンチからという決断をした」と明かしている。疲労からくるものなのか定かではないが、直近の試合で本来のパフォーマンスから程遠い内容に終始した宇佐美の状態や1点勝負になる状況を考えると、チームにとっても、宇佐美を勝負どころでジョーカーとして投入することはベターな選択だったと言えるだろう。
▽後半から途中出場した宇佐美は、得意のカットインからのシュートや、対角線への大きな展開で攻撃を活性化させていた。そして、チームの攻撃を勢いづけた。しかし、結果は0-0。ゴールを奪わなければならなかったG大阪は、最後までネットを揺らすことはできなかった。敗因について、遠藤は「経験が足りていなかった。それが力のなさかもしれないし、一概には言えないけれど、ひとつ言えることは、もっとレベルアップしないといけないということ」と分析している。
▽現在のG大阪は、長谷川監督の下で堅守速攻のスタイルを確立。J1昇格初年度の昨シーズンには、長谷川監督の志向する“組織的な守備”をチームに浸透させつつ、宇佐美とパトリックの強力2トップを中心としたカウンターを武器に、鹿島以来となる国内3冠(J1、天皇杯、ナビスコカップ)の偉業を成し遂げた。それだけに、遠藤が現在のチームへの満足感を口にするもの理解できる。
▽しかし、決定機をほとんど作れなかった今回の広州恒大戦では、試合運びの部分で大きな差があり、“押し切る力”が足りないと感じた。その差を痛感させられたのは広州恒大が見せた攻撃面。単発ながらもシュートで終わる効率のよい攻撃を展開し続けた広州恒大の方が、押し込んでいたG大阪よりも得点の匂いを感じさせたし、それを継続することで試合をコントロールする術を心得ていた。
▽スタッツを見ると、総シュート本数はG大阪の8本に対し、広州恒大が13本。約460億円ともいわれる年間予算の部分やMFパウリーニョ、FWリカルド・グラルなどの実力者を補強したことでフォーカスされがちな広州恒大だが、今回の対戦では金銭で買うことのできない“したたかさ”でG大阪を凌駕していた印象を受けた。その姿勢は、今のG大阪にはない。
▽ただ、G大阪が組織力を武器に対等な戦いを見せていたことも事実。今回のアジアでの戦いで気づいた良い点と悪い点を精査しながら、今シーズンの残るコンペティションへ全力を注ぎたい。次に目を向けるべきは、いずれもタイトル獲得の可能性を残しているリーグ戦、ナビスコカップ、天皇杯。そこでは、タイトル獲得へまい進する選手たちとともに、チームにはアジアの強豪たちとの戦いで欠落を痛感した“したたかさ”と“押し切る力”という部分での成長に期待したい。
《超ワールドサッカー編集部・玉田裕太》
▽アウェイでの第1戦を1-2で落としていたG大阪にとって、今回の第2戦では1-0の勝利か、2点差以上での勝利が決勝進出への条件だった。要するに、ゴールを奪わなければ決勝への道が閉ざされる状況だったが、長谷川健太監督はエースのFW宇佐美貴史をベンチに置き、ベテランのMF二川孝広を2列目の左で先発起用。1トップの位置にFWパトリックを置き、ボランチの一角にMF遠藤保仁を配する[4-2-3-1]の布陣を採用した。
▽長谷川監督は試合後、宇佐美をベンチスタートとした理由について、「貴史の今の状態を見て、ベンチからという決断をした」と明かしている。疲労からくるものなのか定かではないが、直近の試合で本来のパフォーマンスから程遠い内容に終始した宇佐美の状態や1点勝負になる状況を考えると、チームにとっても、宇佐美を勝負どころでジョーカーとして投入することはベターな選択だったと言えるだろう。
▽後半から途中出場した宇佐美は、得意のカットインからのシュートや、対角線への大きな展開で攻撃を活性化させていた。そして、チームの攻撃を勢いづけた。しかし、結果は0-0。ゴールを奪わなければならなかったG大阪は、最後までネットを揺らすことはできなかった。敗因について、遠藤は「経験が足りていなかった。それが力のなさかもしれないし、一概には言えないけれど、ひとつ言えることは、もっとレベルアップしないといけないということ」と分析している。
▽その一方で、G大阪で数少ないACL優勝経験者の1人である遠藤は「2008年のときよりも安定して戦うことができるチームだった」とも語り、現在のチームへの手ごたえも口にしている。優勝した当時のG大阪は、西野朗前監督が志向する“1点を取られたら、2点取ればよい”という攻撃的なスタイルでJ屈指の得点力を売りとしていた反面で、守備面の脆さを課題としていた。そのため、大味になる試合も多く、勝ち点を取りこぼすことも多々あったが、“押し切る力”も持ち合わせていた。
▽現在のG大阪は、長谷川監督の下で堅守速攻のスタイルを確立。J1昇格初年度の昨シーズンには、長谷川監督の志向する“組織的な守備”をチームに浸透させつつ、宇佐美とパトリックの強力2トップを中心としたカウンターを武器に、鹿島以来となる国内3冠(J1、天皇杯、ナビスコカップ)の偉業を成し遂げた。それだけに、遠藤が現在のチームへの満足感を口にするもの理解できる。
▽しかし、決定機をほとんど作れなかった今回の広州恒大戦では、試合運びの部分で大きな差があり、“押し切る力”が足りないと感じた。その差を痛感させられたのは広州恒大が見せた攻撃面。単発ながらもシュートで終わる効率のよい攻撃を展開し続けた広州恒大の方が、押し込んでいたG大阪よりも得点の匂いを感じさせたし、それを継続することで試合をコントロールする術を心得ていた。
▽スタッツを見ると、総シュート本数はG大阪の8本に対し、広州恒大が13本。約460億円ともいわれる年間予算の部分やMFパウリーニョ、FWリカルド・グラルなどの実力者を補強したことでフォーカスされがちな広州恒大だが、今回の対戦では金銭で買うことのできない“したたかさ”でG大阪を凌駕していた印象を受けた。その姿勢は、今のG大阪にはない。
▽ただ、G大阪が組織力を武器に対等な戦いを見せていたことも事実。今回のアジアでの戦いで気づいた良い点と悪い点を精査しながら、今シーズンの残るコンペティションへ全力を注ぎたい。次に目を向けるべきは、いずれもタイトル獲得の可能性を残しているリーグ戦、ナビスコカップ、天皇杯。そこでは、タイトル獲得へまい進する選手たちとともに、チームにはアジアの強豪たちとの戦いで欠落を痛感した“したたかさ”と“押し切る力”という部分での成長に期待したい。
《超ワールドサッカー編集部・玉田裕太》
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