【MLS特集(1)】アメリカンスタンダードなガラパゴス・スタイル!?

2015.07.24 18:30 Fri
▽2006年の元イングランド代表MFデイビッド・ベッカムのロサンゼルス・ギャラクシー加入以降、ヨーロッパや南米のビッグネームを獲得し続けているアメリカのメジャーリーグ・サッカー(MLS)。今夏の移籍市場では元イングランド代表MFスティーブン・ジェラード(ロサンゼルス・ギャラクシー)、元イングランド代表MFフランク・ランパード(ニューヨーク・シティ)に加え、イタリア代表MFアンドレア・ピルロ(ニューヨーク・シティ)という3人のスーパースターの加入が決定した。本稿では再び注目を集めるMLSの現状についてレポートしていきたい。

◆サッカー界のガラパゴス
▽まずは前編として、MLSの現状にスポットを当てる前に、同リーグの基本的な情報について紹介していきたい。翌年に行われるワールドカップに先駆けて1993年に創立されたMLSは、1996年に10クラブでスタート。アメリカの四大スポーツ(MLB[野球]、NFL[アメリカン・フットボール]、NBA[バスケットボール]、NHL[アイスホッケー])と同様に人気スポーツコンテンツとなることを目指し、創立から20年弱でエクスパンション(新規クラブの参入)を繰り返すなど着実に発展を遂げ、2015シーズンからはイーストカンファレンス(10チーム)とウェストカンファレンス(10チーム)の2ディビジョンでの合計20チーム体制(所属チームは※1参照)となった。
Getty Images
[着実に成長を遂げるMLS]

▽ヨーロッパの主要リーグとは趣きの異なるMLSは、リーグ運営の部分で独自の制度を採用している点が大きな特徴だ。日本と同様に春秋制(3月~12月)を採用しており、1シーズンはレギュラーシーズン(3月~10月)、MLSカップ・プレーオフ(11月)、MLSカップ(12月初旬)の3段階に分かれている。
▽まず、レギュラーシーズンでは、イーストカンファレンスとウェストカンファレンスの2つのディビジョンに分かれて合計34試合を戦う(同じカンファレンス所属の9チームとホーム&アウェイ方式での18試合に加えて、ホーム戦3試合、アウェイ戦3試合の計6試合、さらに別カンファレンス所属の10チームとホーム戦5試合、アウェイ戦5試合の計10試合を戦う)。

▽レギュラーシーズン終了後、各カンファレンスの上位6チーム、計12チームがMLSカップ・プレーオフに進出する。まず1回戦では、各カンファレンスごとに、3位と6位のチーム、4位と5位のチームがノックアウト方式で対戦。その勝者がそれぞれ、同一カンファレンスの1位、2位のチームとホーム&アウェイ方式の準決勝を行う。最後に、準決勝を勝ち抜いた2チームが、同じくホーム&アウェイ方式の決勝で対戦し、各カンファレンスの王者を決定するという仕組みだ。

▽そして12月初旬に、2つのカンファレンスの王者が一発勝負のMLSカップで対戦し、勝利したチームが、そのシーズンのMLSの年間王者となる。年間王者には翌シーズンのCONCACAFチャンピオンズリーグ出場権が与えられる。
Getty Images
[2014年のシーズン王者となったLAギャラクシー]

▽なお、レギュラーシーズンに最多の勝ち点を獲得したチームには、“サポーターズ・シールド”という賞が贈られ、さらに年間王者と同様に翌シーズンのCONCACAFチャンピオンズリーグ出場権が与えられる。また、ヨーロッパの主要リーグや南米リーグとは異なり、MLSでは下部カテゴリーへの降格などの入れ替えは行われない。
▽さらに前述した四大スポーツに倣うようにサラリーキャップ制度(各クラブの所属選手の総年棒の制限。および、選手1人あたりの年俸上限の設定。詳しくは※2参照)とドラフト制度(新人選手の獲得)を導入している。また、大物選手の獲得に関しては、特別指定選手制度(Designated Player)と分配金制度(Allocation money)、特殊分配金制度(Targeted allocation money)といった独自の制度を設けている。

▽別稿の後編では、アメリカに新天地を求めたスター選手たちの状況や、新制度導入の影響、さらには今後のMLSが抱えるであろう問題点について、具体的に論じていく。


※1:MLS所属チーム
【ウェストカンファレンス】
コロラド・ラピッズ
FCダラス
ヒューストン・ダイナモ
ロサンゼルス・ギャラクシー
ポートランド・ティンバーズ
レアル・ソルトレイク
サンノゼ・アースクエイクス
シアトル・サウンダース
スポルティング・カンザスシティ
バンクーバー・ホワイトキャップス

【イーストカンファレンス】
シカゴ・ファイアー
コロンバス・クルー
D.C.ユナイテッド
モントリオール・インパクト
ニューイングランド・レポリューション
ニューヨーク・シティ
ニューヨーク・レッドブルズ
オーランド・シティ
フィラデルフィア・ユニオン
トロントFC

※2:2015シーズンのルールでは、1チームの登録人数が28人。そのうち、年俸額上位20選手の年俸総額の上限が349万ドル(約4億3000万円)に設定されている。また、1選手が最大で受け取れる年俸の上限額は43万6250ドルに決められている。


《超ワールドサッカー編集部・岸上敏宏》
関連ニュース

史上初! アメリカの地で日本人3人が先発出場、試合前には笑顔でハグ!

アメリカの地で日本人3人が対決した。 13日、メジャーリーグ・サッカー(MLS)第8節が行われ、バンクーバー・ホワイトキャップスとロサンゼルス・ギャラクシーが対戦した。 この試合ではバンクーバーのGK高丘陽平が先発出場。LAギャラクシーはDF吉田麻也、DF山根視来が先発出場を果たした。 上位対決となった試合。試合消化に差があるものの、勝った方が首位に立つという状況で行われた中、試合はLAギャラクシーが優位に進め、0-0で迎えた56分にデヤン・ヨヴェリッチのゴールで先制。77分にバンクーバーが追いつくも、80分にジョセフ・ペイントシル、82分にディエゴ・ファグンデスが連続ゴール。1-3でLAギャラクシーが勝利した。 そんな中、バンクーバーの公式X(旧ツイッター/@WhitecapsFC)が1本の動画をアップ。試合の入場前に整列する選手たちが移された中、日本人同士がハグする姿だった。 ホームにLAギャラクシーを迎えた高丘が、吉田とはぐ。そして、同じ神奈川県のライバルクラブでプレーしていた山根ともハグをし、笑顔を見せていた。 バンクーバーも「リスペクト。日本出身の3選手がMLSの試合で初めてスタメン出場」とし、3選手が同時にピッチに立つ記念すべき瞬間を共有した。 <span class="paragraph-title">【動画】試合前に日本人3人がハグで挨拶!3人同時先発は史上初</span> <span data-other-div="movie"></span> <blockquote class="twitter-tweet" data-media-max-width="560"><p lang="en" dir="ltr">Respect <a href="https://twitter.com/hashtag/VWFC?src=hash&amp;ref_src=twsrc%5Etfw">#VWFC</a> | <a href="https://twitter.com/yohei_takaoka41?ref_src=twsrc%5Etfw">@yohei_takaoka41</a> <a href="https://t.co/jHMKT2N0TL">pic.twitter.com/jHMKT2N0TL</a></p>&mdash; Vancouver Whitecaps FC (@WhitecapsFC) <a href="https://twitter.com/WhitecapsFC/status/1779342067023401132?ref_src=twsrc%5Etfw">April 14, 2024</a></blockquote> <script async src="https://platform.twitter.com/widgets.js" charset="utf-8"></script> 2024.04.14 20:25 Sun

久保裕也がMLSで2試合連続ゴール! 今季はウイングでもプレーし、絶妙すぎる技ありラインブレイク

FCシンシナティのFW久保裕也が2試合連続ゴールを記録した。 13日、メジャーリーグ・サッカー(MLS)第8節でシンシナティはアウェイでCFモントリオールと対戦した。 ボランチやウイングなど今季は様々なポジションで起用されている久保は、右ウイングで先発出場を果たす。 試合はCFモントリオールが前半終了間際に先制。1点ビハインドで後半を迎えたシンシナティだったが、58分に久保が魅せた。 スローインから再開すると、バイタルエリアでパスを受けたルシアーノ・アコスタが反転しスルーパス。見事にラインを突破した久保が、前に出てきたGKをよく見て浮かせたボールでしっかりとネットを揺らした。 一瞬の隙を突いてラインブレイクした久保。2試合連続、今シーズン3点目のゴールとなった。 これで勢いに乗りたいシンシナティだったが、すぐに失点。2-1で敗戦となった。 <span class="paragraph-title">【動画】見事なラインブレイクで久保裕也が2試合連続ゴール!</span> <span data-other-div="movie"></span> <script>var video_id ="8dcFBeqEKL4";var video_start = 249;</script><div style="text-align:center;"><div id="player"></div></div><script src="https://web.ultra-soccer.jp/js/youtube_autoplay.js"></script> 2024.04.14 14:20 Sun

故郷バルセロナから米国へ“学業”で進学…4年後に憧れのメッシ擁するマイアミからドラフト指名「体調と睡眠に影響が(笑)」

故郷バルセロナからアメリカの大学で学ぼうと海を渡ったスペイン人MFペップ・カサス(23)。彼には予想だにしない展開が異国の地で待っていた。スペイン『Relevo』が伝えている。 ペップ・カサスはバルセロナ出身。少年時代(2009〜12年)は、時代を謳歌するペップ・バルサに憧れを抱くラ・マシアの1人だったが、12歳で退団となり、その後は地元の街クラブで18歳まで在籍。しかしここでもトップ昇格を果たせず、アメリカの大学へ進学することを決断する。 アメリカでは2019〜23年までにインディアナ工科大学、ノースカロライナ大学ウィルミントン校に在籍し、学業の傍ら、両大学サッカーチームの主軸としてもプレーする文武両道の日々。インディアナ工科大学の公式サイトに残るペップ・カサスのプロフィールを覗くと、“好きな選手”の欄には「リオネル・メッシ」と記載されている。 そんなペップ・カサスに、予想だにしない展開が待ち受けていた。 2023年12月19日、メジャーリーグサッカー(MLS)の2024シーズン入団選手を決める2024MLSスーパードラフトが開催され、プロ選手を意識してアメリカへ渡ったわけではないペップ・カサスは、なんとメッシにルイス・スアレス、セルヒオ・ブスケツ、ジョルティ・アルバまで待つインテル・マイアミに3巡目(全体61位)で指名されてしまったのだ。 これに慌てふためいたペップ・カサス。この度『Relevo』のインタビューに応じ、まず指名を受けた昨年12月〜今年1月ごろを振り返った。 「ドラフトで指名され、マイアミへ行く準備期間は2週間だったよ(笑) まだ大学に通っていたし、トレーニングもあったのに(笑) この2週間の間に体調を崩してしまってね。夜も眠れなくなってしまったんだ」 突然のドラフト指名により、一時期は肉体的にも精神的にも疲弊しきっていたというペップ・カサス。何せインテル・マイアミで待つのは、幼少期からの憧れ、リオネル・メッシだ。 「体調が悪いままマイアミへ行くと、今度はトップチーム初練習で『なんでメッシがいるんだろう…』ってね。メッシはせいぜい2〜3日目の合流だろうと思っていたら、何故か振り返ると僕の隣にいるんだ。想像できますか? ほんのちょっと前まで、僕は大学のキャンパスにいたんだ」 チーム合流初日から緊張感に包まれたペップ・カサスだが、メッシを筆頭とする“バルサ組”も“年下のペップ”に興味津々だったようだ。 「ブスケツとアルバは僕の名前(ペップ)を、僕のラ・マシア時代からなんとなく知ってくれていたようだ。スアレスは最初の顔合わせで、何故かいきなり僕のことを「レオ」と呼んだ(笑) 今度は“本物のレオ(メッシ)”から電話が来て会いに行ったり…。全て感動的だし、素晴らしい思い出だよ」 このように、故郷バルセロナから学業でやって来たアメリカにて、必ずしも意図せずプロサッカーの世界へ入り、しかもそこはメッシら“バルサ組”がいるマイアミだったというペップ・カサス。 自らを「少しネガティブ」と語り、「大学にいた頃からプロの世界へ行くなんて現実的じゃないと思っていた」と言う。実はマイアミとはドラフト指名こそ応じるも、まだこの道に確信を持っておらず、今季限りのセミプロ1年契約しか結んでいないのだ。 そのため、米国3部のBチームを主体に戦うこととなったが、トップチームでの練習は継続。3月下旬にはMLS第5節ニューヨーク・レッドブルズ戦で後半途中からプロデビューを果たし、続くニューヨーク・シティ戦でも途中出場している。 現在はBチームで公式戦に出場中。“またトップで、今度はメッシとも共演したいですか?”とインタビュアーに問われると、もうこれ以上高望みはしないとも話している。 「僕の立ち位置はラスト2分で出られるトップチームじゃなくて、90分間プレーできるこっち(Bチーム)だよ。あれこれ考えても仕方ないしね。残りのシーズンで僕を頼りにしてくれたら素晴らしいことだ」 2024.04.12 19:40 Fri

主将セルジ・ロベルトは契約更新?退団? 魅力的な選択肢はMLSか

元スペイン代表MFセルジ・ロベルト(32)はバルセロナ退団も選択肢だ。スペイン『Relevo』が伝えている。 バルセロナ一筋18年、クラブ通算366試合出場を誇るキャプテン、セルジ・ロベルト。複数のポジションをこなせる利便性が売りだが、近年はケガも多く、常に控えに甘んじる。 契約は今季限りとなっており、当初のバルセロナはキャプテンとの契約非更新をスタンスとしていたとのこと。しかし、今では減俸を伴う契約更新を準備しているという。 ただ、セルジ・ロベルト側はバルセロナ退団も頭の片隅に。米国メジャーリーグ・サッカー(MLS)から好条件のオファーが届いているようで、バルセロナの行く末にも疑問を抱いているそうだ。 したがって、代理人とバルセロナの協議は長引く見込み。人望が厚く、コーチ陣も全幅の信頼をおくセルジ・ロベルトだが、現時点で契約更新と退団は50-50といったところか。 2024.04.09 14:00 Tue

久保裕也が頭で今季2点目!シンシナティで開始早々の先制点奪取

FCシンシナティのFW久保裕也がノッているようだ。 久保は現地時間6日に行われたメジャーリーグ・サッカー(MLS)第7節のニューヨーク・レッドブルズ戦、[3-4-1-2]の2トップの一角で起用され、試合開始早々の3分に先制点をマークした。 長いボールを使ってディアンドレ・イェドリンが右ポケットから強烈な一撃を見舞うと、GKが弾いたこぼれ球を拾ったルチアーノ・アコスタが柔らかいクロスを供給。ファーの久保が頭で押し込んだ。 昨季はリーグ戦でのゴールがなかった久保だが、今季はこれが3試合ぶり2得点目。前回同様ヘディングでの得点となった。 なお、先手を取ったシンシナティだが、19分、60分と失点し、1-2と逆転負け。今季初黒星を喫している。 <span class="paragraph-title">【動画】FCシンシナティ久保裕也の今季2ゴール目</span> <span data-other-div="movie"></span> <blockquote class="twitter-tweet"><p lang="en" dir="ltr">Served by Lucho, finished by Kubo! <a href="https://twitter.com/fccincinnati?ref_src=twsrc%5Etfw">@fccincinnati</a> start things off hot with a goal under 4 minutes. <a href="https://t.co/MMZxoEe2VK">pic.twitter.com/MMZxoEe2VK</a></p>&mdash; Major League Soccer (@MLS) <a href="https://twitter.com/MLS/status/1776758724373201044?ref_src=twsrc%5Etfw">April 6, 2024</a></blockquote> <script async src="https://platform.twitter.com/widgets.js" charset="utf-8"></script> 2024.04.07 20:55 Sun
NEWS RANKING
Daily
Weekly
Monthly