【日本代表コラム】選手の意識を高めた初陣
2015.03.28 12:00 Sat
▽「明日は、これまでプレー機会が少なかった選手たちを起用したいと思っている」。前日会見でそう語った新指揮官の言葉どおり、大分スポーツ公園総合競技場のピッチには新鮮な顔ぶれが並んだ。結局、最後は後半途中から出場した“先輩方”がご活躍。岡崎と本田という役者のゴールにより、ヴァイッド・ハリルホジッチ監督の初陣を白星で飾ることに成功した。
▽いくら「たくさんの映像を見てきた」と言っても、監督就任から3週間ほどで、本格的な練習は3回だけ。すべてはこれからだ。今回の試合で注目していたのは、指揮官が前日会見で語っていた“球際の激しさ”と“プレースピード”の2点。数多くのミーティングや面談を経て、どれだけ意識付けされているのかを注視した。
▽前者に関しては、キックオフ直後から川又や永井がアグレッシブにプレスをかけていき、その姿からは“何が何でも代表に残ってやる”といった気概を感じとることができた。最初は多少の“気負い”も感じられ、守から攻への切り替えがスムーズではなかったように思う。その点に関しては監督も認めており、改善の必要性を口にしていたが、その一方で「ピッチが滑りやすかった部分もある」と述べ、選手たちが見せた姿勢に満足感を示していた。
▽一方、プレースピードに関しては課題が残った。ボールを奪ってシンプルに裏を狙うという場面は少なかったように思う。実際、監督は試合後の会見で「奪ったあとに短いパスを使いすぎている。もっと長いパスを狙ってもいい」との考えを示した。もちろん、何がなんでも縦や裏を狙う必要はないが、出せたはずの最初のタイミングで迷ってつなぎなおし、その結果、相手のプレスを受けるという場面が何度かあった。
▽これに関しては、ミスを犯したくないという心理的な要素に加え、起用した選手の特徴や相性も関係していたと思う。前線には、永井、川又、武藤と、縦の意識が高く、裏を狙える選手が揃っていた。彼らに関しては実際にプレーを見ており、その特徴を理解したうえで起用していたはずだ。しかし、パスの出し手となる中盤の選手に関しては異なる。
▽これまでの言動から察するに、今回の選手起用には2つの意味合いがあったと思っている。1つは、前述したような戦術的な側面。前線に裏を狙えるタイプの選手を並べ、ボールを奪ってから素早くゴールに迫ろうとしたのだろう。もう1つは、前回のコラムでも語ったように「開かれた代表」であり、「ファミリー」であるということを発信したかったのではないか。
▽試合後の会見でも、次のJALチャレンジカップ(ウズベキスタン代表戦)には「違うメンバーで臨もうと思っている」と語り、多くの選手に出場機会を与えていくことを明言した。選手の特徴はこれから把握していけばいいし、戦術面のディティールも徐々につめていければいい。いま大事なのは、各選手のモチベーションを高く保ち、自分も一員であり、チャンスがあると感じさせること。うまくいけば自ずと競争力は高まってくる。信頼関係の構築という意味でも、公平に見ているというアクションは大事だ。
▽もちろん、選手たちが高いモチベーションを持ってプレーし、自らをアピールするのは当然のことではある。それでも、見ていてもらえていると感じられることは選手にとって大きい。そういった土壌を整えておくことは無駄ではないだろう。チュニジア戦では、球際で戦えたことも、勝利を手にできたことも良かったが、すべての選手たちが“俺も使ってもらえる”と感じられた(であろう)ことが、“新陳代謝”も図っていきたい代表の今後に向け、何よりも意味のあることだったのではないか、と思っている。
《超ワールドサッカー編集部・平野由倫》
▽いくら「たくさんの映像を見てきた」と言っても、監督就任から3週間ほどで、本格的な練習は3回だけ。すべてはこれからだ。今回の試合で注目していたのは、指揮官が前日会見で語っていた“球際の激しさ”と“プレースピード”の2点。数多くのミーティングや面談を経て、どれだけ意識付けされているのかを注視した。
▽一方、プレースピードに関しては課題が残った。ボールを奪ってシンプルに裏を狙うという場面は少なかったように思う。実際、監督は試合後の会見で「奪ったあとに短いパスを使いすぎている。もっと長いパスを狙ってもいい」との考えを示した。もちろん、何がなんでも縦や裏を狙う必要はないが、出せたはずの最初のタイミングで迷ってつなぎなおし、その結果、相手のプレスを受けるという場面が何度かあった。
▽これに関しては、ミスを犯したくないという心理的な要素に加え、起用した選手の特徴や相性も関係していたと思う。前線には、永井、川又、武藤と、縦の意識が高く、裏を狙える選手が揃っていた。彼らに関しては実際にプレーを見ており、その特徴を理解したうえで起用していたはずだ。しかし、パスの出し手となる中盤の選手に関しては異なる。
▽山口も長谷部も正確な長いボールを前線に送るというより、ボールを運びながら前に関わっていくタイプだ。どちらかと言えば、青山や柴崎の方が今日の3トップとの親和性はあるだろう。ただ、守備の強度に関しては山口や長谷部の方があるため、そのあたりの兼ね合いは難しいところではある。とはいえ、これから選手の特徴をより明確に把握し始めれば、自然と状況に応じた選手起用がなされるだろう。
▽これまでの言動から察するに、今回の選手起用には2つの意味合いがあったと思っている。1つは、前述したような戦術的な側面。前線に裏を狙えるタイプの選手を並べ、ボールを奪ってから素早くゴールに迫ろうとしたのだろう。もう1つは、前回のコラムでも語ったように「開かれた代表」であり、「ファミリー」であるということを発信したかったのではないか。
▽試合後の会見でも、次のJALチャレンジカップ(ウズベキスタン代表戦)には「違うメンバーで臨もうと思っている」と語り、多くの選手に出場機会を与えていくことを明言した。選手の特徴はこれから把握していけばいいし、戦術面のディティールも徐々につめていければいい。いま大事なのは、各選手のモチベーションを高く保ち、自分も一員であり、チャンスがあると感じさせること。うまくいけば自ずと競争力は高まってくる。信頼関係の構築という意味でも、公平に見ているというアクションは大事だ。
▽もちろん、選手たちが高いモチベーションを持ってプレーし、自らをアピールするのは当然のことではある。それでも、見ていてもらえていると感じられることは選手にとって大きい。そういった土壌を整えておくことは無駄ではないだろう。チュニジア戦では、球際で戦えたことも、勝利を手にできたことも良かったが、すべての選手たちが“俺も使ってもらえる”と感じられた(であろう)ことが、“新陳代謝”も図っていきたい代表の今後に向け、何よりも意味のあることだったのではないか、と思っている。
《超ワールドサッカー編集部・平野由倫》
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